新車試乗レポート
更新日:2022.04.06 / 掲載日:2022.04.02
新型ノア・ロングドライブリポート
華やかさは控えめながらも、
実のある進化を果たした新型ノア&ヴォクシー。
最新パワートレーンや運転支援機能が投入されたことで、
走りに関しても大きくジャンプアップしたのは間違いない。
今回はリアルワールドでそのあたりの実力を確認してみたい。
●文:川島茂夫 ●写真:月刊自家用車編集部
TOYOTA ノア ハイブリッドS-Z E-Four

TOYOTA ノア ハイブリッドS-Z E-Four
■主要諸元 ●全長×全幅×全高(㎜):4695×1730×1925 ホ●イールベース(㎜):2850 ●車両重量(kg):1710 ●パワーユニット:1797cc直4気筒DOHC(98PS/14.5kg・m)+ツインモーター(フロント:70kW/185N・m、リヤ:30kW/84N・m) ●WLTCモード総合燃費:22.0km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン・ストラット式(F)トーションビーム式(R) ●タイヤ:205/60R16
走りは? 燃費は? 乗り心地は? 期待の新型ミニバン、その実力に迫る!

乗れば乗るほど良さが分かる
味のある新世代ミニバン
月刊自家用車が行うロングラン試乗では、同時に燃費の計測も行うことが多い。ことさらエコ運転を意識するわけではないが、それでも全開加速は控え気味になりがちで、高速道路では窮屈さを感じることもある。ところが新型ノア(ヴォクシー)は、そんな状況でもしっかりと良さが伝わってきた。
試乗したモデルはノア・ハイブリッド車の4WD。装備強化の影響もあって、もはや手頃とは言い難い価格だが、新型の特徴を最も備えたグレードだ。車格ではなく機能でプレミアムを語るモデルと言い換えてもいい。
意のままに操れる
巧みな制御がありがたい
エンジン本体の熱効率向上もあって、最近のトヨタ・ハイブリッド(スプリット式)は以前よりも電動感が強めに出る傾向があり、アクセルを踏み増した時の初期加速や、巡航時の速度コントロール性が向上している。さらに高速域の性能低下も少なめ。タウンユースから高速、山岳路まで安定したドライバビリティを発揮してくれる。
ノアのような車両重量が重く、空気抵抗も大きな1BOX型でもその恩恵は明らかで、実用性能が高まった印象だ。
今回は千葉・木更津を起点に南房総に向かった。高低差が大きい山岳路こそないものの、登降坂とタイトなワインディングも含まれるため、速度コントロール性の良さが求められる。1BOX型にとってはやや意地悪な状況が多かったのだが、ノアはどこでも余裕を感じさせてくれた。
穏やかな特性もあって、普通に操っていれば自然と省燃費運転になる印象。計測した燃費でも感じたとおりの結果となった。さすがに登坂が多い場面では燃費は落ち込むが、全体的な振れ幅は小さく、燃費に関しても得手不得手の少ないタイプ。
フットワークは良質なウェルバランス型。操舵に穏やかに追従する回頭感覚を持ち、前後輪の荷重変動も少なめ。コーナリング中の加減速も安定している。低速ではやや車軸周りの揺動も感じるが、サスストロークは動き出しが滑らかで、揺れ返しも少ない。悪く言えばファミリーカーらしい無個性なフットワークとも言えるのだが、運転ストレスが少ないため、同乗者との会話や風景を楽しむ余裕を生み出してくれる。
運転支援機能も最先端
安心ドライブに大きく貢献
この「余裕」で大活躍するのが、新たに装着された運転支援システムだ。
運転支援と言えば高速道路でのACCやLKAを思い浮かべるユーザーも多いだろう。もちろんそれらの機能もノアの長所になっているが、感心させられるのは車線逸脱や追突の危険回避支援機能だ。車線を踏み越えそうになると補正自動操舵がさりげなく介入。それも一気に引き戻すのではなく二度切り的な補正をしたりして芸が細かい。前走車が停車する状況でも、いきなりブレーキがかかるわけでなく、じわっとエンブレを効かせてくる。制御と操舵も極めて自然で、ブレーキペダル操作を行えばすぐに解除される。
介入のタイミングも絶妙。運転スタイルにもよるだろうが、気心の知れた相棒と二人三脚のような運転感覚が心地いい。日常用途からサポートしてくれるので、走行全般での頼もしい機能と再確認することができた。
運転支援機能はカタログの文字面だけでは、本当の良さは分からない。だが、過ごす時間が長くなるほどその価値が分かる。新型ノアはスペックより実践力を重視した力作といえるだろう。





【燃費】新型ノア ハイブリッド南房総ロングドライブ詳細

一般路は上手く運転して20㎞/ℓと考えていたが、加速時の負荷が高い高速道でも20㎞/ℓに迫る数値を記録。今回の試乗では一般路、高速道を含めて180㎞ほど走ったが、全区間の平均燃費でも19㎞/ℓを超えている。WLTCモード燃費には及ばないが、その数値から約15%減の実燃費ならば十分に納得できる。走行状況による燃費の振れ幅が少ないことも美点。ことさら燃費を意識した運転ではなくても、遠出も街乗りもトップレベルの燃費が稼げるのは、ユーザーにとっては嬉しい魅力になるだろう。