新車試乗レポート
更新日:2022.03.23 / 掲載日:2022.03.21
【試乗レポート スバル ソルテラ】電気自動車となっても輝くスバルらしさ

文●大音安弘 写真●スバル
トヨタとスバルの共同開発車の第一弾となるトヨタ86(GR86)とスバルBRZに続く、共同開発車第2弾は、その対照的存在といえる電動SUVだ。その名をトヨタ版がbZ4X(ビーズィーフォーエックス)、スバル版がSOLTERRA(ソルテラ)という。今回は、スバル ソルテラを紹介する。その車名の由来は、ラテン語のSOL(太陽)とTERRA(地球/大地)を組み合わせた造語だという。
初の電気自動車はトヨタと共同開発
bZ4Xとソルテラは、EV生産拠点を持つトヨタにスバルの技術者を派遣し、共同開発したもので、スバルの開発生産拠点を活用する86/BRZとは真逆の開発環境はトヨタが主となっている。なので、基本を共有する姉妹車だ。
しかし、第一弾と異なるのは、開発費だけでなく、人材も折半としているところ。つまり、トヨタとスバルが一緒に同じ現場で作り上げたクルマなのだ。意外にも生産にも、スバルのスタッフが関わるという。これはソルテラだけでなく、次なるEVへの布石でもあるのだろう。新型EVの成果物は、共有財産とし、それぞれが将来的に他モデルで利用できるのはもちろんのこと、それぞれのサプライヤーを使った自社生産が行えることも考慮して開発されているのだ。対応するセグメントは、C及びDだから、スバルのSUVをカバーできる。驚くべきは、異なる車幅にも対応できるということ。ソルテラは、ナローボディ仕様となり、より幅の広いワイドボディ仕様も用意されているという。トヨタは、更なる上級SUVのEV化を視野に入れたものだろうが、スバルでも将来的なSUVの成長に貢献するかもしれない。



兄弟モデルのトヨタ bZ4Xとの違い
さて、多くの人が注目すべきは、やはり、トヨタbZ4Xとスバルソルテラの違いだろう。最も分かりやすいのは、前後マスクのデザインだ。特にフロントマスクは、近未来のロボット顔のbZ4Xに対して、ヘキサゴンデザインのパネル型グリル、コの字のシグネチャーランプ入りのヘッドライトで構成され、今のスバル顔に近いもの。そのため、表情も穏やかで親しみやすい雰囲気だ。リヤテールも差別化され、コの字デザインをテールランプに取り入れ、bZ4Xは、最新トヨタで使われる水平基調デザインとしている。またお洒落の基本となる足元(アルミホイールデザイン)も異なるものを履く。


全体的なイメージは、スポーティなクロスオーバー仕立て。フロントノーズも抑え、ガラスエリアの高さも抑えられているので、SUVながら、伸びやかなフォルムを持つ。空力特性を高めるリヤテールには個性的な2分割式スポイラーもスポーティさとユニークなキャラクターの引き立てに一役買っている。ボディサイズは、全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mmとフォレスターよりは少しワイドだが、実は新アウトバックよりはコンパクト。しかも全高はフォレスターよりも低くいのに、210mmの最低地上高を確保しているので、ボディの肉厚感も抑えられているのも、スタイリングの工夫だ。
インパネを薄型化して広々とした視界を確保

インテリアは、基本的にはbZ4Xと共通だが、スバル仕様として、ブラウンレザー内装を設定するなど細やかな差別化が図られる。さらに細かいところでは、同じ車室空間ながら、プレミアムオーディオシステムも差別化されていること。スバルがハーマンカードン、トヨタはJBLとなる。それ以外にも、ターン音やシートベルト警告音など、車内で馴染みのある音たちも、各社仕様となる。小さなことだが、そういうところもキャラクターの差を表すポイントといえるだろう。
車内の特徴だとインパネの薄さが挙げられる。これにより視界の向上に加え、ガラスを寝かせていながらも、車内が広く感じられる。その犠牲となったのが、なんとグローブボックス。お馴染みの助手席側の収納が失われている。しかし、その分以上の収納スペースをセンターコンソールボックスに確保しており、その内部には車検証もしっかりと収まる仕掛けだ。さらにダッシュボードで特筆すべきは、メータパネルとシフトセレクター。トップマウントメーターと呼びデジタルメーターは、ステアリングよりも上に配置されるので、視認性に優れるというわけだ。このため、ヘッドアップディスプレイは採用されていない。シフトセレクターは、ダイヤル式とボタン式を組み合わせたもの。「P」と「N」がプッシュボタン式で、「D」と「R」がダイヤル式となる。右回しが「D」で左回しが「R」だが、ダイヤル位置が固定ではなく、フリーとなるので、操作には少し慣れが必要そうだ。




走りの面でもキャラクターは異なるという。意外にもシャープマスクのbZ4Xの方が、乗り心地重視の味付けで、優しい顔つきのソルテラの方が、ハードセッティングだという。これはスバルらしい走りの楽しさの表現でもある。ただ乗り心地の悪化に繋がらぬように、強固なボディで路面からの入力しっかり受け止められるように設計されている。その指標のひとつとなるねじれ剛性は、フォレスターの約1.3倍を確保している。また前後のサスペンションフレームを、フロア下のバッテリーフレームと結ぶことで、強固なバッテリー保護機能を走りの良さにも活かしている。駆動方式は、エントリー的な役目も担う1モーターの前輪駆動車(FWD)と2モーターの四輪駆動車(4WD)の2タイプが選べる。さらに4WDには、悪路走破性を高めるスバルの「X-MODE」も搭載されている。これはbZ4Xも同様だ。
雪道でのコントロールしやすさを確認

今回は、雪上試乗ということもあり、4WD車のみ。当日の天候は、雪が深々と降り続く、雪国らしいもので、山間部のコースは、道幅が1台分しかない。ファーストコンタクトとしては、やや厳しめの条件ともいえるだろう。運転席からの視界は良好で、スクエアなフロントデザインもあり、比較的車両感覚も掴みやすい。エンジン車のSUVから乗り換えても違和感ない走りを目指したというだけに、スムーズな走りを見せる。アクセルペダルも軽すぎず、アクセル開度がコントロールしやすいので、雪道でも不安はなかった。これはギアによる出力の段付きが起きないEVの強みでもある。もちろん、急激なアクセルOFFを行うと、駆動トルクが急激に弱まるので、雪道のようなトランクションの変化にシビアな路面だと、電動4WDでも、駆動抜けのような現象は起きないわけではない。そこで活用したいのが、ワンペダル機能だ。アクセルオフで強めに回生ブレーキが働くので、常に安定した駆動力が伝わるようになるので、路面変化の影響を抑えることができる。これによりクルマの動きは、より安定し、ドライバー自らクルマの姿勢をコントロールし易くなるので、雪道での不安感も抑制できる。路面状況が許せば、適度なスピードによる気持ちよいコーナリングも楽しめるほど。その動きの良さには、フォレスターよりも90mmも重心が低いという構造的なメリットも大きいはずだ。そのワンペダル機能だが、ソルテラの場合、敢えてワンペダルでの完全停止は出来ないようにしている。これも運転はドライバーが主役。人とクルマのフュージョンを大切にするスバルの設計思想の表れでもある。非常に雪道でも運転し易く、コントロールする愉しさがあるクルマというのが、現段階のソルテラへの評価だ。
まだ市販前の仕様で、試乗も雪上のみと限定的な領域ではあるが、扱いやすく走りの良いEVが目指されたことはしっかりと感じられた。走りではなく、使い勝手などで注視している点もあるが、それは改めて市販仕様が登場した際に評価を行いたいと思う。