新車試乗レポート
更新日:2021.08.21 / 掲載日:2021.08.13
フィット e:HEV モデューロX 公道&サーキット試乗
ベースモデルの良さを生かしつつ、走りのクオリティを中心に内外装の質感もランクアップさせるホンダ純正コンプリートカー、それがモデューロXシリーズだ。今回、新たにラインナップに加わったのがフィット e:HEV モデューロX。その魅力を東京~群馬ロングドライブとサーキット走行の両面から確かめてみた。
走りの良さが際立つ! ホンダ純正最新コンプリートの魅力に迫る!

Honda FIT e:HEV Modulo X

フィット e:HEV モデューロX●発売:2021年6月4日●価格:286万6600円(※本車両は持ち込み検査が必要です)●問い合わせ先:0120-112010

ノーマルとは意匠の異なるフロントグリルや前後エアロバンパーなどでグンと引き締まった印象に。走りの良さを感じさせる。●主要諸元(フィット e:HEV モデューロX)■全長×全幅×全高(mm):4000×1695×1540■ホイールベース(mm):2530■トレッド(mm):前1485/後1475■最低地上高(mm):135■車両重量(kg):1190■サスペンション:前/マクファーソン式、後/車軸式■最小回転半径:5.2m■タイヤサイズ:185/55R16■パワートレーン:1.5L直4DOHC(98PS/13.0kg・m)+モーター(80kW/253Nm)■トランスミッション:電気式無段変速機■タンク容量(L):40(レギュラー)
良質なツアラーとしてとても魅力的な存在だ
モデューロXのWEBサイトには大きく「今、クルマにドキドキしていますか。」と掲げられている。無味な移動手段とは違った心躍らせる存在と言いたいのだろう。それはとてもよく理解できるが、私がこれまでに試乗したモデューロX各車から受けた印象は、むしろ安心や信頼感である。 もちろん、走行性能向上等々への期待感という意味ではとても高揚するのだが、乗るほどに募るのは信頼感であり、安心感なのだ。ゆえに「ドキドキ」はしない。 モデューロXのラインナップに新たに加わったフィットe:HEVも期待に違わないモデルである。室内の機能装備はライン装着のナビ/オーディオが選択できない以外はネスとリュクスの中間設定。要するに上級グレード相応、内外装はモデューロX専用だ。レーサーもどきに飾らないで、品良くプレミアムツアラー志向でまとめているのがポイントだ。 外観のカスタマイズはモデューロXの性能面の特徴でもある。圧力分布の最適化により安定性を重視した空力設計が施されている。以前、ノーマルサスとの組み合わせで空力効果を試したことがあるが、60km/hくらいから効果を発揮。まるでサスにファインチューニングを加えたような挙動の落ち着きにちょっと驚かされた。 もちろん、足回りはその空力チューンに最適化されたダンパーとホイールを採用。ホイールも見所のひとつで、デザインだけでなく、軽量やリムの弾性を用いた衝撃吸収性など機能的な特徴も備える。 試乗のファーストステージはホンダ青山本社から高坂SA。乗り心地はモデューロX車でもダンパーの利きを意識する引き締まった印象。開発陣によればフィットということで、ちょっとホットハッチ的な味わいも加えているとのことだが、角のある突き上げもなく、スポーツ系としては穏やかな乗り心地であり、ノーマル車と比較して車軸周りの揺動感も激減している。ホットハッチというより大人っぽく洗練された乗り味である。 高速ツーリングではホンダセンシングを積極的に活用。制御機能は共通しているのだが、LKAを使用している時の走行ラインの安定性や保舵感がノーマル車よりさらに良くなっている。直進の据わりがいい、微小舵角の追従が的確等々のモデューロXの操縦性を考えれば納得できるのだが、実際に体験するとLKA自体の制御機能が改良されたと感じるほどだ。 目的地となっている群馬CSCに到着。小雨混じりに薄霧という状況。道幅が狭く路側に苔が乗っているコーナーもある。かなり危険度の高い状況。ここでe:HEVリュクスとの比較試乗を行ったが、装着タイヤサイズもパワートレーンも同じならば絶対値としての速さに大差がつくはずもない。しかし、心の萎縮度合いは違った。 路面のうねりや段差付き上げでも接地感が安定している。4輪の接地バランスが大きく揺らぐことがなく、揺れ返しも少なく挙動が滑らかに収束する。ライン乱れや修正操作も減少している。リュクスより明らかに高い速度で走ってみても速度感は一割くらい低い。状況を考えればリュクスも大したものなのだが、扱いやすさと安心感のレベルが違っている。 技を楽しむタイプのスポーツモデルではないが、車格を超えた良質なロングツアラーであり、モデューロXに馴染むほどにリュクスの約44万円高の投資にそれ以上の価値を見出せるはずである。
ロングドライブ IMPRESSION

操縦性の良さが安心感につながる! 乗れば乗るほど良さを実感

普通のドライブでも、安心と扱いやすさを実感できるのがモデューロXの大きなアピールポイント。ちょっと硬めの乗り心地ながら高速の出口やJCTでのしっかりとした操安性。据わり良く微小舵角から穏やかに追従する操縦特性は直進とコーナリングでの信頼感を高める。そういった操縦性の副次要素としてLKAによる走行ライン維持支援の制御や保舵感も向上。距離を延ばすほどに魅力に感じるはずだ。
サーキットテスト IMPRESSION
攻め込んでも終始安定した走りが見所。空力の良さも感じさせる仕上がりだ

シチュエーションに左右されないスタビリティの高さが魅力だ!
方向安定性が非常に高い。大体のコーナーはやや深めの舵を入れれば操舵に素直にラインへ乗っていく。しかも、加減速やうねり、段差跳ね上げなど接地バランスが崩れやすい状況での方向安定がすこぶる良好。空力による安定性もかなり利いているのだが、状況に対する操舵特性の変化の少なさはモデューロXの美点。クセや破綻のないタイプなので乗りこなす手応えは少ないが、それも大人味だ。
走りの躍動感が凝縮。秘めたパワーを感じる佇まい


パワートレーン自体はベースのフィットe:HEVと同じ。1.5L直4DOHCにモーターを組み合わせるシリーズハイブリッドだ。高速巡行時などにはエンジン直動機構が働くことで燃費向上にも貢献。
純正クオリティの上質な内外装! 所有する悦びも十分味わえる

シートは分かりやすいモデューロXのアピール点だが、スポーツ性よりも落ち着きのあるカジュアル感が強調されている。外装面も同様でかなり追い込んだ空力設計を施しているにもかかわらず「いじりモノ」感がせず好印象。エアロを自慢したいなら地味すぎだが、モデューロXにとってエアロは実用機能なのである。外装パーツで見逃せないのは専用ホイールだ。スーパーGTマシンのノウハウを活かし、リュクス比で1本当たり約2.9kgの軽量化。また、リムの内側をしなるように設計して、ホイールをサスペンションの一部として活用している。
ブラック(コンビシート)
フロントシートのメイン表皮には滑りにくいラックス スェード、サイドサポートには本革を使用し、肌に馴染む高い質感を実現している。
ブラック×ボルドーレッド(コンビシート)


華やかなボルドーレッドの差し色がスポーティなシートカラーも選択可能。「S660 モデューロX」をモチーフにしたものだという。
広くてフラットな荷室は実用性高し。ベース車の長所はそのまま受け継いでいる。
フロントバンパーと同じく、実効空力特性にこだわった形状のリヤエアロバンパー。
ベース車比で約-30%という軽量化を達成したホイール。剛性バランスにも配慮されている
空力を意識した立体的な造形を行うことで「X」のイメージを表現したフロントまわり。
リヤゲートに輝くModulo X専用エンブレム。当別なモデルであることを主張する。
触感にこだわることで操作感を高めた本革巻きステアリング。ブラックタイプもある。
レッドステッチが映える本革巻きのシフトレバー。レーシーなムードを高めてくれる。
専用ダンパーを装備。空力デバイスや専用ホイール等とのマッチングも考えられた逸品だ。
ボディカラーバリエーション
フィット20周年記念特別仕様車も魅力たっぷり!
フィット e:HEV カーサ
フィット e:HEV メゾン
フィット誕生20周年を記念した特別仕様車が登場。シティライフの華やかさをイメージした「メゾン」とスタイリッシュなデザインが魅力の「カーサ」。(共に価格226万7100~246万5100円)。生活の伴侶として長く付き合っていける魅力が満載だ。
●文/川島茂夫 ●写真/澤田和久