新車試乗レポート
更新日:2021.08.21 / 掲載日:2021.08.10

新型GR86/BRZプロトタイプ試乗!

今年4月に世界初披露されたトヨタ/スバル共同開発の2代目「86/BRZ」。
中でも86はGRブランド扱いとなり「GR86」を名乗ることになった。
正式発表・発売を前に、両車のプロトタイプに試乗する機会に恵まれた。
排気量アップされたパワートレーンの実力や両車の走りの違いを中心にインプレッションをお届けしよう。

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深化した共同開発により、 さらに個性が明確になった、選ぶ醍醐味がある2台の走り

今まで以上にワンチームで開発が進められた

 2代目となるGR86/スバルBRZの開発コンセプトはズバリ「正常進化」である。言葉で言うのは非常に簡単だが、2012年の登場から9年に渡って進化・熟成が行なわれ、ある意味“完成形”となった初代を超える事は、開発陣にとって至難の業だったと聞く。

 ちなみに初代は絶対的な速さよりも楽しさ……数値に表れにくいがドライバーが感じる・響く部分に徹底してこだわったモデルだったが、その部分はシッカリと継承しつつも、スポーツカーとして「もう少し○○だったら」と言う部分を着実に進化させている。ただ、一般的に「ネガつぶし」はクルマのコンセプトを曖昧にしてしまう危険性も否めないが、2代目はそんな懸念を跳ね除けるべく全方位でのアップデートを実施。その結果、一見変わっていないように思える部位に至るまで、大きく手が入っている。

 開発形態は企画・デザインはトヨタ、開発・生産はスバルと言う役割は初代と変わらないが、「2回目のタッグ」、「お互い気心が知れている仲」、「目的がハッキリしている」などの観点から、構想段階からその枠を超えるやり取り……つまり、今まで以上に強力な“ワンチーム”で開発が進められたそうだ。

 そんなGR86/BRZのプロトタイプ(ほぼ量産仕様)に、袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗。今回は新型の進化に加えて、2台の走りの違いを紹介したいと思う。

 エンジンは高回転型NAを継承しつつも排気量は2.0→2.4Lにアップ。排気量アップで実用域~中回転域のトルクが増し、ドライバーが要求した駆動がシッカリ掛かるようになり、結果としてドライバビリティは向上。いっぽう、高回転域はパンチ力が増したのとレッドゾーン(7450rpm)まで無理なくスッキリと回るように。つまり、排気量アップはメリットばかりで正直言うとデメリットはほとんど感じなかった。

 トランスミッションは先代と同じく6MT/6ATが選択可能。6MTは軽いタッチで決まるシフトフィールと正確性の向上、ノイズ低減などを実感。ATはアダプティブ制御の採用でDレンジのままでもドライバーの意志に忠実なアップ/ダウンシフトが可能だ。

 パワートレーンの進化に合わせてシャシー側も大きく手が入る。基本構造は初代を踏襲しながら、「インナーフレーム構造」と「構造用接着剤」とスバルの次世代プラットフォーム「SGP」の技術を水平展開。具体的に言うと、車体は固さだけでなくしなやかさを持つ事、フロントからリヤへの力の伝達に遅れがない(=応答性の高さ)、その伝わり方が非常に滑らかな事(=力の連続性がある)などが挙げられる。

 衝突対応など重量増の要素は多いが、アルミ素材の使用やスチール部品の薄板化、細かい部品の見直しなどで、初代と同等の車両重量を実現。サスペンションはフロント:ストラット/リヤ:ダブルウィッシュボーンと変更はないが、ボディ剛性アップやタイヤ変更に合わせてセットは刷新されている。

icon TOYOTA GR86

GRのデザインテーマであるファンクショナルマトリックスグリルを採用。ハニカムに見える形状はGRの「G」がモチーフ。バンパー左右のブラックアウトされた空力パーツのシボはGR86専用デザインで水平に入っている。

icon SUBARU BRZ

GR86との違いは主にフロント。BRZはヘキサゴングリルを低く配置。ボクサーエンジンらしい低重心を表現。リヤまわりの形状は両車共通で、ハイマウントストップランプ内蔵のダックテールスポイラーを新採用。

ザ・FRスポーツな86に対し、AWDスポーツ的なBRZ

 ボディ・シャシーの進化はハンドリングにも大きく影響している。具体的には粘りを増したリヤのスタビリティの高さとノーズがシッカリとが入るフロントの応答性の良さから、まるでトレッドが拡大されたかのような安定したコーナリングだ。また、予期せぬアンダー、予期せぬオーバーが出にくいのでドキッとする事もない。

 ただ、これだけ言うと「安定方向に振ったんでしょ?」と思われがちだが、初代の旨みの1つであった「自在性」や「コントロールする楽しさ」は不変……いやむしろ純度は増しており、クルマの挙動が安定している上にクルマの動きも解りやすいのでグリップもドリフトもドライバーの操作次第で自由自在だ。要するにスバルの言葉を借りると「安心」と「楽しさ」を両立させた懐の深い走りに仕上がっている。あまりにドリフトが綺麗に決まるので、「運転上手くなった?」と思ったが、実際はクルマの基本素性の良さに助けられていたようだ……。

 多くの人が気になるGR86/BRZの違いは、バネ/ダンパー/スタビライザー/EPS制御に加えて、フロント・ナックル(GR86:スチール、BRZ:アルミ)、リヤ・スタビライザー取り付け方法(GR86:サブフレーム、BRZ:ボディ)、リヤ・トレーリングアームブッシュなど多岐に渡る。

 一般的には「GR86はドリフトしやすい」、「BRZは安定志向」と言われる事が多いが、実はそれは大きな間違いである。どちらもグリップ/ドリフト共に自由自在だが、実はそこに至るまでの過程に違いがあるのだ。「明確な差」だと感じたのは、操舵してからの一連のクルマの動きと荷重コントロールのしやすさで、GR86は打てば響くメリハリのある動き、BRZは過度を抑えた連続性のある動きが印象的。更にドリフトをする際にもGR86はアクセルOFFでも姿勢が作れるくらい荷重移動がしやすい、BRZはドライバーが積極的な荷重移動をした時に姿勢が作れると言う違いも感じられた。

 ちなみにパワートレーンはスペックこそ同じだが6MT車はECUのマッピングが異なり、GR86は実用域でトルク感を演出、BRZはアクセル操作にリニアな特性に。更に6速AT車もスポーツモード時にGR86はシフトスピード重視、BRZは滑らかさ重視の制御と、各々ハンドリングに見合った味付けになっている。

 これらから解るように、GR86は明確に「FRのスポーツカー」を意識した味付け、BRZは「GT性能も加味した0:100のAWDスポーツカー」の味付けである。それは各ブランドが目指す方向性に準じているので、どちらの味付けも間違っていない。

 ちなみに先代も似たような議論が起きたが、当時は「わかる人にはわかる」レベルだったのに対して新型は「誰でもすぐにわかる」レベルである。そのため、新型を購入する際には、単純に見た目やブランドで選ぶのではなく、乗り比べた上で選んで欲しいと思う。まさに「似ているようで似ていない」、「似ていないようで似ている」2台だ。

icon TOYOTA GR86

今回クローズドコースを試乗したのはGR86/BRZともに18インチタイヤを履く上級仕様。6速MT/ATをそれぞれ試乗できた。

icon SUBARU BRZ

2代目となる本モデルで目新しいのはフロントフェンダーに配されたフロントエアアウトレット。他にもフロントマスク形状の細かな差で異なる走りの質を表現。

従来型の2.0Lから2.4Lへ排気量アップした水平対向4気筒エンジン。0-100km/h加速が7.4秒から6.3秒に短縮している。

  • 【1】

  • 【2】

  • 【3】

【1】BRZのRグレードは215/45R17タイヤでスーパーブラックハイラスターのアルミを採用。タイヤの銘柄はミシュランプライマシーHP。【2】【3】BRZのSグレードとGR86の上級グレードは215/40R18。タイヤ銘柄はミシュランパイロットスポーツ4。カラーはGR86がブラックでBRZがマットダークグレー。

  • リヤスタビライザーの取付け構造が異なる両車。スタビライザー径やブッシュの硬度まで異なり、明確なハンドリングの違いを実現。

  • フロントハウジングの素材がGR86は鋳鉄。BRZはアルミを使用。走りへの考え方の違いが素材の選択まで及んでいる。

icon TOYOTA GR86

写真はGR86のエモーショナル・コーディネーションと呼ばれる仕様。ドアトリムやフロアカーペットも赤があしらわれている。

  • 6速MTは高触感革を採用した本革巻きブーツを採用。ステッチはBRZがレッドのみ。GR86はシルバーとレッドを用意する。

  • アルミパッド付きのスポーツペダルはGR86/BRZともに、6MT/6AT関係なく全グレードに標準装備される。

  • 7インチTFT液晶とカラーLCDを組み合わせた専用メーター。GR86とBRZそれぞれオリジナルのオープニング画面を用意。

  • 十分な広さを持つトランクスペース。後席は一体で前倒し格納可能。スポーツ走行用のタイヤ4本を積み込めるように配慮されている。

  • ●GR86

  • ●BRZ

エンジンプッシュスタートボタンも両車それぞれオリジナル。GR86は「GR」のロゴが入りリング部がシルバー塗装に。BRZはリング部がメッキ加工になる。

icon SUBARU BRZ

BRZ・Rグレードのインパネまわり。普及グレードになるが上級のSグレードとの差は少ない。BRZのインナードアハンドルはメッキ。

Rグレードのシート表皮はレッドステッチ入りのファブリック。GR86の普及グレードも同様の仕様になる可能性が高い。

  • AT車にはスバルの先進安全装備「アイサイト」が標準装備されるのが画期的。MT車は定速クルコンだが、AT車は全車速追従だ。

  • 従来型と同様6速ATを設定。マニュアル操作が可能なパドルシフトを標準装備。上級グレードはシフトパネルがハイグロスブラックに。

車両(プロトタイプ)データ

●BRZプロトタイプSグレード主要諸元(開発目標値)
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●ホイールベース:2575mm●トレッド前/後:1520/1550mm●車両重量:1270kg(6MT)/1290kg(6AT)●乗車定員:4名●WLTCモード燃費:11.9km/L(6MT)/11.7km/L(6AT)●パワートレーン:2387cc水平対向4気筒DOHC(235PS/25.5kg・m)●燃料タンク容量:50L【プレミアム】●サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク●タイヤサイズ:215/40R18
●BRZプロトタイプSグレード主要諸元(開発目標値)
18インチアルミホイール、アクティブサウンドコントロール、フルLEDヘッドランプ、ヒーテッドドアミラー、本革巻きステアリング&シフトノブ、アルミパッド付スポーツペダル、フルオートエアコン、8スピーカー、ルーフアンテナ、ウルトラスエード/本革シート、フロントシートヒーター、ステンレス製サイドシルプレート、ドアカーテシランプ、アルミ製フロントフード&ルーフパネル&フロントフェンダー、アイサイトコアテクノロジー(6AT車のみ)、ハイビームアシスト(6AT車のみ)ほか

●GR86【日本仕様】主要諸元(開発目標値)
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●ホイールベース:2575mm●車両重量:1270kg●エンジン:水平対向4気筒 筒内直接+ポート燃料噴射装置<TOYOTA D4-S>●最高出力/最大トルク:235PS/25.5kg・m●駆動方式:FR●トランスミッション:6速MTまたは6AT

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●文:山本シンヤ ●写真:澤田和久

提供元:月刊自家用車

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ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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