新車試乗レポート
更新日:2021.03.24 / 掲載日:2021.03.22
NISSAN 新型ノート公道試乗インプレッション
コンパクトクラスには新世代モデルがズラリと並ぶが、全面刷新された新型ノートは、その中でもトップを狙える有力モデルであることは間違いない。ここではその全貌に迫ってみたい。
やっぱり走りは凄かった!
ノート X 2WD ●車両価格:218万6800円 ※試乗車はインテリジェントアラウンドビューモニター、16インチアルミ、LEDヘッドライト、NISSANコネクトナビゲーション、プロパイロットなどのOP装着車。
■主要諸元(X 2WD) ●全長×全幅×全高(mm):4045×1695×1520 ●ホイールベース(mm):2580 ●車両重量(kg):1220 ●パワーユニット:1198cc直3DOHC(82PS/10.5kg・m)+フロントモーター(85kW/280Nm) ●WLTCモード燃料消費率 (総合モード):28.4km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)リーディングトレーリング(R) ●サスペンション:ストラット式(F)トーションビーム式(R)●タイヤ:185/60R16
力強さと即応性が向上、一皮むけたe-POWER
小さな高級車と言ってはちょっと大袈裟だが、新型ノートは従来の2BOX車のコンセプトとは一線を画したモデルだ。それはe-POWER、いわゆるシリーズ式ハイブリッドを採用しているからというわけではない。そもそもシリーズ式はハイブリッドとしてはシンプルなタイプで、ブレーキシステムも先代同様の油圧式を採用。走行メカニズムは最先端とも言い難い。むしろ一線を画していると感じるのは、e-POWERの使い方である。
シリーズ式はEVと同じく駆動力のすべてを電動で賄う。電動の利点のひとつにタイムラグのほとんどない即応性と高精度のトルク制御がある。言い方を換えればアクセルペダルに対する反応は、味付けでいかようにも演出できる。
踏み込み直後の力強さとスムーズな加速の繋がりは、新型ノートのドライバビリティの見所のひとつ。先代でも駆動系の捻れによる加速度の微小な揺らぎを打ち消すような制御を採用していたが、新型はさらに洗練された印象を受ける。踏み込み直後の瞬発力を誇張した先代に対して、新型は初期トルクの立ち上げよりも加速感の連続性を重視した特性。ペダル踏み込み速度への対応強化など種々の制御を加えたことで、ドライバーの運転意思を汲み取ったかのような、心地よく違和感のない加減速反応を生み出していた。
またワンペダル感覚で操作できるeペダルのコントロール性も大きく改善された。停車機能はなくなったが、緩やかにペダルを戻した時の空走から緩めのエンジンブレーキの減速制御が改善され、中高速域での速度コントロール性もかなり高まっている。加えて、走行モードとD/Bレンジの組み合わせで状況に応じたブレーキ回生を選べることも、扱いやすさ向上のポイントである。
程よい塩梅のサスチューン。高速安定性も大きく向上
洗練された動力性能に加えて、プレミアムな走行感覚をもたらす、もうひとつの要点が静粛性である。フロントフェンダー内の発泡スチロールブロックやロードノイズが大きい時にエンジンを稼働させるなど、車体&パワートレーン制御から静粛性向上の設計が施されているが、そもそもエンジン騒音が低い。実際の加減速と、エンジン音や回転数の乖離は従来型よりも拡大気味なのだが、静かな発電機が適宜稼働しているような感じで、エンジン稼働による静粛性の変化が少ない。エンジンの存在感のなさは、レンジエクステンダー的とも感じる。
硬めのフットワークは高速でも腰の据わった操縦性。クイックなステアリングギヤ比を採用しているが神経質な反応ではなく、素直なラインコントロール性を示す。抑えられたサスストロークの中に適度に重質な味わいを持たせた乗り心地も、走りの車格感を高めていた。パワーフィールや静粛性に似合いのフットワークである。
スモール2BOXを意識させないプレミアム感も楽しめるのが、新型ノートなのである。
足回りはやや硬めだが、突き上げ感は皆無。コーナーでは穏やかな動きでボディをコントロールしてくれる。スポーティというよりも上質さを強く実感する乗り心地だ。
1.2L直3DOHCユニットは発電専用。発電した電気でモーターを駆動する。モーター出力は85kW/280Nmと出力も十分。2.5L級ガソリン車に匹敵する力強さも楽しめる。
新型ノートに搭載されるプロパイロットは最新仕様にアップデート済み。ライントレース性能や加減速制御がさらに巧みになっただけにOP装備となるのは残念。
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之