新車試乗レポート
更新日:2021.01.29 / 掲載日:2021.01.28

NISSAN 新型ノートのすべて

技術の日産、その本格復活の狼煙となる、ニューモデルがこの新型ノートだ。変わったのはその見た目だけではない。e-POWERに磨きをかけ、プロパイロットも最新版を搭載。同社の「本気」を、詳しくチェックしていこう。

4WD車も価格判明!

※後モーター搭載は4WD車のみ。

クローズドにて先行試乗

試乗したのは追浜のグランドライブ。クローズドコースでも、十二分にその進化度合いはわかった。公道での試乗が楽しみだ。

新日産ロゴを身に付け登場 “これから”の象徴という責務を担う

大幅進化でe-POWER新時代の幕開けを感じられた

 e-POWERの皮切りモデルだったせいか、先代は「電動感を誇張しすぎ」のように思えた。駆動力100%電動のシリーズ式ハイブリッドならではの特徴だが、先進感ばかりの印象も強かった。しかし、新型は違う。e-POWERの能力を、洗練と質感へ振り向けているのだ。

 踏み込み直後のダッシュ力よりも繋がりのいい加速感を重視し、速度変化にも安定したドライバビリティを実現している。急激なスロットルオフでもスムーズに掛かるエンブレならぬ回生ブレーキ。多少荒っぽいアクセルコントロールでも、システム側が程よく均してくれるので、ペダルワークに神経質にならないで済む。電動ならではの即応性と力感を、品よくまとめたドライバビリティだ。

 また、e-POWERの特徴的な制御、強化された回生ブレーキによる「ワンペダル感覚」の制御も改善され、低中速域での巡航や緩減速のコントロールがしやすくなっている。従来車では停止までカバーしていたが、新型では極低速でクリープ制御に移行するようになった。機能的にはBレンジ走行と大きく変わらないのだが、ドライブフィールはかなり洗練されていた。なお、強化回生ブレーキはノーマルモードDレンジ以外で作用し、各モードとD/Bレンジの組み合わせによって回生の利き具合を任意で選択できる。

 パワートレーン周りでは静粛性も印象深い。ロードノイズが大きくなりやすい状況で積極的に充電するなどの気の利いた制御もあるが、エンジン騒音そのものがまず低い。ロードノイズもコンパクトクラスでは最小水準にあり、かつその音でエンジンの存在を隠してしまうのだ。静粛性でも「電気自動車」に一歩近付いたわけだ。

 路面からの細かな振動を抑え、従来車からクラスアップしたような重質な乗り心地。グリップバランスもよく落ち着きのある操縦感覚。高速から減速しながら回り込ませるような状況でも、ラインや姿勢の乱れはほぼない。フットワークの質感も大幅向上していた。

 性能や走りの味わいからプレミアムを実感できる。一新されたプラットフォームの効果も小さくないだろうが、e-POWERの精密制御と制御自由度の高さを、走りの質感向上に活かした結果。e-POWER新時代の幕開けを予感した。

走りをCHECK

100km/hからでも加速が鈍らない!

■主要諸元 (X) ●全長×全幅×全高:4045×1695×1520mm ●ホイールベース:2580mm ●車両重量:1220kg ●駆動方式:FF ●パワートレーン:1.2L直3DOHC(82PS/10.5kg・m)+モーター(85kW/280N・m) ●トランスミッション:一段固定式 ●WLTCモード燃費:28.4km/L ●最小回転半径:4.9m ●タイヤサイズ:185/60R16

全グレードがe-POWERを搭載

エンジンは出力を向上。モーターはトルクをアップ、インバーターは40%小型化し33%軽量化。マウントも最適化し高剛性構造に。

走行モードはノーマル、エコ、スポーツ

ステアリングはスポーティなD字型。パドルシフトはない。走行モードは3つ設定されており、スイッチはシフトノブ右側に配置。

  • Xにメーカーオプション設定される16インチアルミホイール

  • Xの16インチホイールカバー

  • F/Sの15インチホイールカバー

新旧比較 ~走り~

icon 【先代】

フレンドリーな乗り味の先代。登場時は1.2Lと1.2L+スーパーチャージャー。途中でe-POWER車が追加設定された。

e-POWERが新型では「第2世代」にレベルアップ!

 先代よりも発進・加速性能が向上し、滑らかに。アクセルを緩めた時の減速度合いがより自然に感じられるようチューニング。ロードノイズが大きいと判断すると早めに発電を開始し、滑らかな路面での発電頻度を下げることで、より快適に走れる世界初の新機能も。

全車がe-POWER化/本格電動式採用で4WDも新世代へ

新4WDには加速性能や高速性能の向上も期待

ニッサンでは新型ノート搭載のe-POWERを第2世代と位置付けている。搭載エンジンは出力と燃費向上を図った従来の改良型だが、モーター及びインバーターを新型に変更し、小型軽量化を図るとともに高出力化している。スペック上の変化はさほど大きくないのだが、前項で述べたとおり加減速制御特性を変更。アクセル踏み込み時の初期トルクの立ち上がりは従来車以上に早くなっているが、定常加速への移行を滑らかにした。回生ブレーキでの減速G制御も同様。滑らかな過渡特性は適度な予兆感をもたらし、ストレスの少ない運転性にも繋がっていた。

 モーター出力の向上は加速性能を高めるが、その効果を実感したのは高速域。従来車は80km/hくらいから速度上昇に応じて加速が鈍るが、新型は100km/hでも加速の衰えは小さい。高速域での余力は従来車のウイークポイントでもあり、この改善は長距離走行適性の向上に大きく寄与する。 

 試乗車には用意されなかったが、追加される4WD仕様も見逃せない。従来車同様に電動後輪駆動を採用しているが、モーター出力を3.5kWから50kWに大幅増。RAV4ハイブリッドの後輪駆動用モニターが40kWなので、いかに高出力か理解できるだろう。

もちろん、これだけの高出力モーターを採用して駆動補助というのは有り得ない。全車速域での4輪駆動制御を行い、加減速やコーナリングなどの状況に応じて駆動力を配分。また、後輪駆動用モーターでの回生も行うので、理論的にはFF車よりも広い減速域で効率的な回生が可能になる。もちろん、強力な後輪駆動用モーターの追加で前後最高出力合計はFF車の約1.6倍となり、加速性能や高速性能の向上も期待できる。

 FF車がリーフ由来のハイブリッド車とするなら、4WD車は新型クロスオーバーEVのアリア由来のモデルと考えてもいい。ただし、システム名はアリアの「e-4ORCE」ではなく「e-POWER 4WD」。発電やPCUの容量からすれば大幅性能向上は難しく、グレード設定もベーシックの「F」がない以外はFF車と共通。しかも、同グレードのFF車との価格差は約26万円高でしかなく、実用型4WDと見るのが妥当だろう。

アリアに搭載予定の“e-4ORCE”の技術を注入

  • アリアに搭載されるであろう先進の電動4WD技術。 ひと足先に、その実力の一端を感じられるのが新型ノートの4WD技術だ。

4輪を滑らかに駆動することで、力強い発進や加速を実現。前後の駆動力を自在に変え、滑りやすい路面でのコーナリングも楽になった。

新旧比較 ~4WD~

後輪駆動力が約14倍に!

 従来型の後輪駆動系は、滑りやすい路面で前輪のスリップを抑制するのが目的であり、発進時の駆動アシストに限定されていた。新型では後輪駆動用モーターの大幅出力増に加えて、モーター型式も従来の直流型からフロントモーターと同じ交流同期型に変更。全車速域での4WD制御と、後輪も加えた回生制御などがハイブリッドシステムに統合されている。また、加減速制御のみならず4WD制御によるコーナリング性能向上も特徴のひとつだ。

内外装をCHECK

質感の向上に注力。後席スペースは縮小したがクラス随一の広さは変わらず

見た目だけでなく「音」の質感にもこだわって開発

 新型ノートにはルノーが主体となって開発された新型プラットフォームを採用するが、質感向上へのニッサンのこだわりが凄い。車体骨格は高剛性設計に加えて遮音構造を最適化。試乗したプロトタイプで細部を見てみたが、コンパクトクラスにしては遮音材や防振材を奢っていた。また、ドア開閉音の質感向上のためドアラッチにストッパーを新設。これによりドア閉時のドアラッチ周りのガチャつきを抑えている。上級クラスのような重厚感はないものの、建て付けのよさを感じさせるドア閉音である。

 こういった配慮は警告音やアンサーバックにもなされ、テンポや音色で緊急度や重大度を圧迫感なく伝えるために専用スピーカーを備えた情報表示音を新たに作成している。人間の感性を重視して質感を見直しているのだ。

 キャビンスペースは従来と大差ない。とはいえ初代からロングキャビンフォルムで同クラス他車よりも広い後席が長所。上級クラスに比べると座り心地は劣るものの膝前スペースは男性にも余裕があり、天井の圧迫感も少ない。また、シートサイズもクラス標準より大きく、リクライニング機構により寛いだ着座姿勢も取りやすい。車体寸法は多少小型化されたが、4名乗車時の居心地のよさはクラストップレベルである。

 インパネデザインも様変わりした。従来は圧迫感を抑えたコンパクトカーらしいデザインを採用していたが、新型ではメーターパネルと連続感を持たせた中央の大型ディスプレイや立体感のある造形を採用。二段式の大型センターコンソールの採用もあり、インパネ周り機能感と車格感が一段と向上。光り物系の加飾を抑えていることもあって、落ち着きのあるプレミアム感が演出されていた。

 車載ITはスマホ連携に加えてニッサンコネクトサービスを設定。地図の自動更新機能やオペレーターサービス、事故自動通報サービスのSOSコール、プロパイロット緊急停止支援システムなどの機能が用意されている。なお、ニッサンコネクトナビと連動するプロパイロットはニッサン初であり、ACCの設定速度自動変更やカーブ減速支援などの新機能を採用。状況に応じた運転支援により運転ストレスもさらに軽減している。

ホイールベース:2580(-20mm) 全長:4045(-55mm) ※( )内は先代比。

  • 全幅:1695(±0)mm 全高:1520(±0)mm【16インチホイール。15インチの場合1505mm】

全長、ホイールベースを縮小。先代よりも小回り性能が向上し、街中での取り回しもさらに楽になっているのが特徴だ。

アリアと一貫性を持たせたという、エッジの効いたエクステリアデザイン。Vモーショングリルも新しいタイプに。4連のLEDヘッドランプはメーカーオプション設定。

2トーンカラーも用意

最上位グレードに用意される2トーンカラー。キャビン部分が黒で引き締まり、より洗練感のあるエクステリアに。ビビットブルーとオペラモーブに設定。

ボディカラーバリエーション

※Xはホワイトを除く。Sは左からオーロラフレアブルーパールまで選択可能。 FはSからさらにホワイトとガーネットレッドを除く。

新旧比較 ~外装~

icon 【先代】

キャビンの広さを感じさせるプロポーション

初代ノートと、ティーダの後継を担うべく発売された2代目ノート。コンパクトクラス内では広い室内空間を持っていた。Vモーショングリルはマイナーチェンジ時に装着された。

シャープで、コンパクトクラスであることを忘れさせるような質感たっぷりのインテリア。一体型バイザーレスディスプレイもアリア譲りのもの。

本革シートはメーカーオプション

FとSがトリコット、Xがグラデーショントリコット(右上・右)のシート表皮に。Xなら本革のキルティングシート(左)も選択が可能。

各ポケッテリアもスマートな見た目に

  • 蓋付き収納や、インパネデザインと調和した、目立たないポケッテリア類を採用。この点も、インテリアの質感向上に寄与している。

蓋付き収納や、インパネデザインと調和した、目立たないポケッテリア類を採用。この点も、インテリアの質感向上に寄与している。

後席は6:4の分割可倒式で、最上位のXのみリクライニング機能も採用される。日常使いには十分なラゲッジスペースだ。

新旧比較 ~内装~

icon 【先代】

フレンドリーなデザイン

エアコン吹き出し口やスイッチ類に「丸」を用いて、親しみやすいデザインのインテリアを採用。シートも見た目からわかるようにたっぷりとしたもので、柔らかな座り心地だ。

新旧比較 ~安全装備~

ナビ連動プロパイロットなど各機能が大きく進化

赤い文字が、先代ノートから追加された機能。ナビ連携機能などプロパイロットの進化が注目ポイント。標識を検知し車速を自動変更。地図情報をもとにカーブに合わせて減速。高速道路では、停止後約30秒まで追従を継続するように。

【新型】 ノート AUTECHをCHECK

まもなく登場予定のカスタムノート!

※後日正式発表済み。
●価格:250万4700~276万3200円(持込登録)

大人の趣味として楽しむプレミアムなカスタマイズ

 プレミアム感を高めるため、内外装にもう一工夫加えたい!と考えるユーザー向けの特装仕様が「オーテック」である。専用フロントグリルやメタル調フィニッシュパーツ、専用アルミホイールでスポーティなイメージを強化した外観。人工皮革を用いた専用デザインのコンビシート、ダークウッド調加飾パネルなどを施した内装。内外装とも、「渋さは損なわず、でも目立っている」というまとめ方。大人の趣味として楽しむプレミアムというカスタマイズが見所だ。

専用16インチアルミホイールのほか、グリル、前後プロテクター、サイドシルのフィニッシャーも専用のもの。メタル調で派手すぎない。

落ち着いたブルーのインテリアが大人のスポーティを演出。センターコンソールにはさりげなくAUTECHのエンブレムが。

おすすめグレードをCHECK

icon F

  • 実質ビジネスユース用のグレード

    205万4800円

    ボディカラーの選択肢も少なく、フロントのIRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラス、アラウンドビューモニター、インテリジェントキー、後側方衝突防止支援システムなどがオプションでも選べない。

  • 205万4800円

icon S/S FOUR

  • ナビはディーラーOPのみでプロパイロット装着不可

    202万9500~228万8000円

    Fで述べた装備類がメーカーオプションで選べる中間グレード。日常の買い物だけでなくレジャー、長距離ドライブなど個人用途も考えると、実質選択肢となってくるのはこのグレードからだろう。

  • 202万9500~228万8000円

icon X/X FOUR

  • 2トーンカラーを選べる最上級仕様

    218万6800~244万5300円

    プロパイロットなど、新型ノートの目玉装備が選べるようになってくるのはこの最上級グレードのみ。本革シートやアルミホイール、後席センターアームレストも、このXにのみメーカーオプション設定される。

  • 218万6800~244万5300円

おすすめ

プロパイロットが選べるXが買い

 先進性もプレミアムの重要な要素のひとつ。しかも、安全に関わればプロパイロットは必須条件。ならばプロパイロットが唯一装着可能な「X」以外の選択はない。プロパイロット以外にも「X」専用オプションがあり、内外装のプレミアム感を高めるなら尚更である。むしろ「X」以外のグレードがレスオプション仕様と考えるべきだ。

結論

クラス内でここまでプレミアムにこだわったのはノートだけ!

 同クラスでは装備揃えで最高水準となる価格が気になる部分だが、プレミアム性をデザインや加飾で演出するのではなく、走りも含めたクルマの基本的な部分で質を感じさせるのが大きな魅力。同クラスではそこまでダウンサイザー向けプレミアム性にこだわったモデルは他になく、上級クラスからの移行を考えれば価格も納得できる。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之/澤田和久

提供元:月刊自家用車

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