新車試乗レポート
更新日:2020.09.28 / 掲載日:2020.09.22

【試乗レポート トヨタ ヤリスクロス】公道試乗でわかったグレードごとの個性

トヨタ ヤリスクロス

トヨタ ヤリスクロス

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 成長が著しいコンパクトSUVとあって間違いなくヒットするであろうヤリスクロス。わずかにサイズが大きい兄貴分のC-HRは、発売からしばらくは絶好調だったものの、その後は徐々に販売台数が下降していったのに対して、息の長い安定した人気を維持するのではないかとも期待されている。

 C-HRは、室内空間や荷室に多少の犠牲を強いることを厭(いと)わない攻めたデザインが特徴的でアクの強さがある。好き嫌いがはっきりとわかれるため、人気が上下動するのだろう。一方のヤリスクロスは、主張の強いキャラクターラインなどは採用しないでシンプル&クリーンにまとめつつ、立体的な造形で存在感を醸し出す。タイムレスなデザインゆえに鮮度が長持ちしそうだ。

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新世代となったハイブリッドは、タウンユースでとくに好印象

ヤリスクロスが搭載する新世代ハイブリッドは、アクセル操作へのレスポンスがよく、音や振動も抑えられている

ヤリスクロスが搭載する新世代ハイブリッドは、アクセル操作へのレスポンスがよく、音や振動も抑えられている

 以前のプロトタイプ試乗では、サーキットでシャシー性能もパワートレーンも最新世代らしい高いポテンシャルの持ち主であることを確認したが、今回は晴れてナンバープレートを取得した市販車を公道で試乗。ハイブリッドのFFと4WD(E-Four)、ガソリンのFFという3モデルで日常域での走りをチェックした。

 ハッチバックのヤリスから採用されている新世代ハイブリッドは、公道で走らせたほうが真価を実感できる。発進時から力強いトルクがあり、レスポンスも良好。街中から郊外路、高速道路での巡航など、ほとんどのシーンで意のままの走りが体験できるのだ。アクアやヴィッツ・ハイブリッドなど一世代前のハイブリッドは、アクセルを踏み込んでもドライバーが望んだトルクが出てくるまでに時間を要し、しかもエンジン回転数が高まることも多かったので、ドライバビリティーや音・振動は今ひとつだった。それに比べると劇的な進化を遂げたといえるだろう。

ハイブリッド仕様は、デイリーユースでの高い快適性を実感できた

ハイブリッド仕様は、デイリーユースでの高い快適性を実感できた

 ハイブリッド用エンジンは、排気量は従来型と同じ1.5Lながら4気筒から3気筒になり、高速燃焼を実現する。高効率なうえにレスポンスも改善されている。電気系ではニッケル水素からリチウムイオンとなったバッテリー、モーターともに高出力化。エンジンと電気系の両方が進化し、相乗効果が得られているわけだが、より貢献しているのは後者だ。だから、強い加速を必要とする場面ではレスポンスやドライバビリティーは少し落ちることになる。その領域ではエンジン主体となって電気系の貢献が下がるからだ。そのことはサーキット試乗で感じていたが、日常域ではほとんど気にならない。あるとすれば高速道路で素早く追い越しを済ませたいときぐらいだろう。

  • ヒップポジションがヤリスよりも高く、前方視界は良好。最小回転半径は5.3mで細い路地なども得意とする

    ヒップポジションがヤリスよりも高く、前方視界は良好。最小回転半径は5.3mで細い路地なども得意とする

  • 後席は膝前空間こそヤリスと大きく変わらないものの、頭上の空間があるため居心地がいい

    後席は膝前空間こそヤリスと大きく変わらないものの、頭上の空間があるため居心地がいい

ハイブリッドの4WDは降雪地域向け

ハイブリッド仕様は、必要に応じてリヤタイヤをモーターで駆動する4WDシステム「E-Four」を採用

ハイブリッド仕様は、必要に応じてリヤタイヤをモーターで駆動する4WDシステム「E-Four」を採用

 E-Fourは4WD化とリヤサスペンションのダブルウィッシュボーン化でFFよりも80から90kg重くなるため加速が鈍くなるが、それも日常域では問題なし。とはいえ、フル乗車で荷物も満載したときに高速道路の登り区間などでもどかしい思いをするかもしれないので、4WDの必要を感じないのであればFFを選択したほうがいいだろう。

ガソリン車は軽快な走り味が持ち味でコストパフォーマンスも高い

 ガソリン車はハイブリッドほど低速域でのトルクはないが、パワーは高く車両重量が軽いので軽快に走る。ただし、3気筒特有のちょっとチープな音や振動は大きくなるので、気になってしまう人もいるはずだ。ハイブリッドとガソリン車の車両価格には40万円近い差があり、これを燃料代で相殺するにはかなりの距離を走らなければならないが、快適性の高さを考慮すれば納得がいくはず。選択で悩んだら、しっかりと乗り比べてみることをお薦めしたい。

クラスのなかでも動的質感はピカイチ

18インチはルックスが魅力だが、乗り心地を重要視するなら16インチも試乗して確かめてもらいたい

18インチはルックスが魅力だが、乗り心地を重要視するなら16インチも試乗して確かめてもらいたい

 サスペンションがスムーズに動き、快適な乗り心地であること、ハンドリングは無用にシャープではないものの、追い込んでも舵(かじ)の効きが確かで頼もしいことなど、サーキット試乗で感じた高いシャシー性能は公道でも実感できたが、試乗車がすべて18インチタイヤを装着していたため、タイヤの大きさや硬さを意識させられることもあった。とくに都市高速の目地段差など強い入力があると、突き上げ感がやや強めで、その後の収束も少しだけぎこちない。また路面の状況によってはロードノイズが目立つこともある。ルックスの良さと引き換えに目を瞑(つむ)れるレベルではあるが、快適性重視ならスタンダードな16インチを検討したほうが良いだろう。

 ハイブリッド車かガソリン車か、16インチか18インチかなど、選択で悩みそうなところもあるヤリスクロスだが、日本のBセグメントカーのなかで動的質感はピカイチ。長く付き合っても満足度が高い1台になりそうだ。

想像以上だった4WD仕様の走破性

主に降雪地域での日常走行をターゲットに開発されたHV仕様の4WD

主に降雪地域での日常走行をターゲットに開発されたHV仕様の4WD

文●ユニット・コンパス

 試乗会では、ヤリスクロスの4WD性能を体験するプログラムも用意されていた。ここでは、意図的に前後の片輪をスリップ状態にしてスタック状態を作り出してからの脱出やモーグルコースを、ハイブリッド仕様とガソリン仕様の双方の4WDシステムを乗り比べることができた。

 ハイブリッド仕様4WDに搭載される「E-Four」は、後輪をモーターで駆動する構造で、一般的な乾いた路面では前輪駆動として燃費を稼ぎ、雪道などの走行時にスリップを検知すると自動的に4WDへと切り替わる。また、一部のタイヤが空転してスタックしたときには、ドライバーがスイッチを「TRAILモード」に切り替えることで、クルマが空転したタイヤのみにブレーキをかけ、脱出を手助けしてくれる。4WDであることを特別意識をすることもなく、2WD以上の走破性を発揮する「E-Four」のキャラクターは、降雪地域のユーザーに歓迎されるはずだ。

 

ガソリン使用の4WDはRAV4などにも採用されているダイナミックトルクコントロールAWD機構を採用している

ガソリン使用の4WDはRAV4などにも採用されているダイナミックトルクコントロールAWD機構を採用している

 4WDモデルの開発にあたっては、ランドクルーザーに代表される高度な4WDの技術力を生かして、ヤリスクロスに必要とされる機能を盛り込んだという。「ダイナミックトルクコントロール4WD」システムを採用するガソリン仕様は、ハイブリッド使用よりもオフロード能力が高く設定されていて、路面状況にあった4WD性能を引き出す「マルチテレインセレクト」を採用。ぬかるみや砂地に対応する「MUD&SAND」、ガレ場やダート路に対応する「ROCK&DIRT」など、幅広いシチュエーションを走り抜ける実力を備えている。
 「ダイナミックトルクコントロール4WD」システムは、「E-Four」やRAV4に採用された「ダイナミックトルクベクタリングAWD」に比べると地味な存在ではあるが、アクセル操作に対する反応が素直でクルマの動きがわかりやすく、いわゆる「ヨンクらしい」しっかり感が魅力。洗練されたスタイルやコンパクトSUVという商品性から想像していたよりも、ずっと頼もしいクルマであることに好感が持てた。

トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ(電気式CVT)

■全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm
■ホイールベース:2560mm
■トレッド前/後:1515/1515mm
■車両重量:1190kg
■エンジン:直3DOHC+モーター
■総排気量:1490cc
■エンジン最高出力:91ps/5500rpm
■エンジン最大トルク:12.2kgm/3800-4800rpm
■モーター最高出力:80ps
■モーター最大トルク:14.4kgm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:215/50R18

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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