新車試乗レポート
更新日:2020.09.16 / 掲載日:2020.09.15

【スバル レヴォーグ(プロトタイプ)】サーキット走行で判明した新型の実力

スバル レヴォーグ(プロトタイプ)

スバル レヴォーグ(プロトタイプ)

文●ユニット・コンパス 写真●スバル、ユニット・コンパス

 発売に向けて徐々に全貌が明らかになりつつあるスバルの新型レヴォーグ。新型(プロトタイプ)を取材するのはこれで2回目となるが、こうした機会を複数用意しているところからも作り手側の気合が伝わってくるし、それだけ内容が盛り沢山というのもまた事実だろう。前回のイベントは「アイサイトX」に焦点を絞った内容だったが、今回は千葉の袖ヶ浦フォレスト・レースウェイを舞台に新型レヴォーグと現行モデルをサーキットで比較しながら走らせることができた。新型レヴォーグでは「先進安全」、「スポーティ」、「ワゴン価値」という3つの価値を掲げているが、そのなかの「スポーティ」をチェックできるというわけだ。

アイサイトXを体験! 新型レヴォーグの全容が明らかに。国産ワゴンの雄はどう進化したのか

レヴォーグらしさはそのままに、新しさと驚きを提供する

新型レヴォーグの開発を取りまとめた商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢氏

新型レヴォーグの開発を取りまとめた商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢氏

 会場に用意されていたのは、ハイグレードモデルにあたる「GT-H」と最上級モデルに位置する「STIスポーツ」、そして現行型の「STIスポーツ」。

 「GT-H」と「STIスポーツ」はともに225/45サイズの18インチを標準で履くが、「STIスポーツ」にはスバル初採用となる電子制御ダンパーと「ドライブモードセレクト」が備わるため、スバルが言う「キャラ変」が体験できる。電子制御によってクルマの乗り味を変更する装備は、これまで欧州車や高価格帯のクルマを中心に採用されてきたが、それが新型レヴォーグにどのような価値をもたらしたのかは興味深い。

 今回、試乗に先駆けて新型レヴォーグの開発を取りまとめた商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢氏に話を聞くことができた。それによれば、電子制御サスなどによる「キャラ変」のアイデアは、レヴォーグらしさをキープしながら、さらに多くの人々に受け入れてもらいたいという想いから生まれたのだという。

 五島氏によれば、現行型レヴォーグでC型から追加された「STIスポーツ」は、いまや3割ものユーザーが選ぶ人気グレードとなっているが、その一方で主に男性が「STIスポーツ」を希望しても、パートナーの女性が乗り心地を理由に他グレードを選びたがる「家庭内競合」が起きているのだとか。たしかに、現行型は最終D型で標準モデルのフットワークがだいぶしなやかな性格になったが、「STIスポーツ」のそれは依然としてハード系で、路面状況によっては路面からの衝撃が気になったのは事実だ。そこで新型では、電子制御ダンパーを採用することで、スポーティな乗り味と乗り心地のよさを両立することを決定したという。サプライヤーはドイツのZF社で、選定の理由はセッティングが幅広く、イメージしていた「キャラ変」を実現するのにぴったりだという判断から。

外板パネルと骨組みを分離させた「フルインナーフレーム構造」でねじり剛性は+44%と大きく改善した

外板パネルと骨組みを分離させた「フルインナーフレーム構造」でねじり剛性は+44%と大きく改善した

 継承と進化は新型レヴォーグのメインテーマだ。ヒット作となった現行モデルのチャームポイントを受け継ぎつつも、「新しくなった」とユーザーに判断してもらうために、部署を超えての協力体制が敷かれたという。例えば先進安全装備「アイサイトX」についても、担当チームがレヴォーグがフルモデルチェンジするタイミングを見据えて開発を行ってくれたことで採用が実現したと、その舞台裏を教えてくれた。

 もちろん「STIスポーツ」に代表される走りの進化は、乗り心地への配慮だけではない。従来の開発工程では、ベースモデルが完成したのちにSTIへと開発が受け継がれ、そこでスポーティバージョンが生み出された。それを新型ではベースモデルの開発段階からSTIから人材を受け入れ、共に開発作業を行ったという。その結果が「STIスポーツ」のフルモデルチェンジとの同時投入実現であり、ベースモデルそのものの進化にもつながった。

日本を代表するグランドツーリングカーとして大きく進化

上質な走りで全体的なレベルアップが実感できた「GT-H」

上質な走りで全体的なレベルアップが実感できた「GT-H」

 そんな新型レヴォーグの走りであるが、結論から言えば、驚くべき進化を遂げていた。

 すでに登場しているインプレッサやフォレスターの経験からSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の実力は理解しているつもりだったが、それだけでは説明できないレベルに到達していたのだ。サーキットという状況ゆえ、乗り心地や静粛性については多くを語ることはできないが、それでもなお「驚くべき」と表現できるくらいの仕上がりである。新型には国内向けモデルとしては初投入となるフルインナーフレーム構造を採用しているが、その威力たるや絶大である。

 最初の驚きは、コースインの前、クルマをピットレーンで前進させたときに訪れた。ブレーキから足を離すとクルマがスッと、重さや引っ掛かりのようなものを感じさせずに動き、止まる際にもスムーズで視線が揺すられにくい。こういうクルマは経験則的にいいクルマである率が非常に高い。

 次が静粛性と乗り心地の良さ。サーキットとはいえ、同一コンディションで現行型と乗り比べているのでどうしてもその変化ぶりに反応してしまう。大きな違いはロードノイズの低減で、「ゴー」という騒音が数段低くなり、風切音も明らかに低い。車体全体がしっかりとしたカプセルのように乗員を包み込んでいる感覚だ。車体自体は段差や荷重移動に応じて動くのだが、車体から感じられるしっかり感と動きのリズムが心地いいため、完熟走行もそこそこにスピードを上げることができた。

比較用に用意された現行型レヴォーグ。「STIスポーツ」はヒットモデルの地位を確立した

比較用に用意された現行型レヴォーグ。「STIスポーツ」はヒットモデルの地位を確立した

 五島氏は新型の走りについて、「ドライバーが思いのままに操れる、コントロールできる。それがスバルの考えるスポーティ」とコメントしてくれたが、走らせてみてその言葉の意味がよく理解できた。ステアリング操作への正確性、タイヤの接地感が大きく改善しているため自信を持って操作できるし、イメージしているラインをクルマがしっかりとトレースする。現行型がHD画質のテレビだとしたら、新型は4Kテレビのように、いまクルマがどのような状況にあるのかを鮮明にドライバーへと伝えてくれるのだ。そして、タイトコーナーでは運転手近くを回転の中心軸としてクルッと回り込む気持ちいい感覚を味わえた。このクルマは、雪道のような滑りやすい道路環境でも、現行型以上に安心感を与えてくれるだろう。

運転する歓びを色濃く味わえる「STIスポーツ」

「STIスポーツ」ではクルマとドライバーのシンクロ率がさらに上昇する

「STIスポーツ」ではクルマとドライバーのシンクロ率がさらに上昇する

 「GT-H」でも爽快な走りを楽しめたが、「STIスポーツ」になるとそのレベルはさらに上がる。具体的にはクルマの動きが引き締まり、操作に対する応答はさらに正確さを増す。「ドライブモードセレクト」を「スポーツ」、「スポーツ+」と変更したが、サスペンションだけでなく、ドライブトレーンのキャラクターもそれにともなって明確に元気がよくなる。新型はシャシー性能が大きくレベルアップしているため、1.8Lにサイズアップされたエンジンをもってしても「GT-H」ではひとによっては全体的にマイルドで大人っぽいキャラクターだと感じたかもしれない。まさにグランドツーリングカー向けのセッティングなのだが、それを「おとなしい」と感じてしまうタイプのクルマ好きであれば、「STIスポーツ」をオススメしたい。

レヴォーグらしさと向き合った骨太なフルモデルチェンジ

新型レヴォーグは従来の価値を受け継ぎながら着実に新しい次元に到達している

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 試乗したのはプロトタイプで、サーキットという限られた空間と時間ではあったが、それでも新型が持つポテンシャルの高さ、到達したレベルに驚かされた。走りに定評ある欧州系ツーリングワゴンたちと比較しても新型レヴォーグは十分に戦える実力を備えており、しかも価格は200万円後半から300万円後半と、現行型モデルと大きく変わらないゾーンに収まっていることも高く評価できる。

 近年の国産車は走りのレベルアップに目を見張るものがあるが、新型レヴォーグはそのなかでもトップクラスの位置を走っている。ハイパワー版が追加モデルとして登場するという噂もあるが、なるほどこのシャシーならばさらなる高出力も問題なく受け止めてくれるに違いない。そして、この新型レヴォーグで培われたフルインナーフレームなどの技術は、これから登場するであろう次世代のスバル車全体へと受け継がれていくことになる。レガシーを受け継ぎ変革するもの。その名前にふさわしい進化を遂げた新型レヴォーグに拍手を送りたい。

進化した先進安全機能「アイサイト」を体験

  • アイサイトも進化している。横断歩行者を検知する「対歩行者プリクラッシュブレーキ」は死傷者ゼロに向けた着実な進化だ

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  • 見通しの悪い交差点では、「前側方警戒アシスト+」が事故を防ぐ手助けをしてくれる

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  • プリクラッシュブレーキも対応可能速度が50km/hから60km/hへと進化。重大事故を防ぐ価値のあるレベッルアップだ

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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