新車試乗レポート
更新日:2020.08.26 / 掲載日:2020.08.26

新型ハリアー公道試乗

<公道走り込み> その実力、想像以上!

指名買いが多いモデルだけに、事前予約で2万台を超えるのは当然。そんな声も耳にする新型ハリアーだが、いざ発売された製品車を見ると、“名前だけ”のモデルではないことが分かってきた。今年注目のビッグネームの実力、改めて検証してみたい。

2.5ハイブリッド Z “Leather Package” (2WD) 車両価格:482万円

■主要諸元 ●全長×全幅×全高(mm):4740×1855×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1690 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(178PS/22.5kg・m)+モーター(88kW/202N・m) ●トランスミッション:電気式CVT●WLTCモード総合燃費:22.3km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R)●タイヤ:225/60R18 

【公道試乗】乗った瞬間にすぐ分かる 大人びた走りに脱帽!

昨年RAV4がデビューした時に、次期型の開発が明らかにされてから約1年。ついに公道デビューとなった新型ハリアー。前評判が高かっただけに走りにも期待が高まるのは当然のこと。生まれ変わったハリアーは期待に応えてくれるのだろうか?

オンロード志向は不変だが快適重視の味を強化

 新型ハリアーのカタログには、いっさい悪路の走行シーンがない。外観は曲面の張りを活かしたグラマラスなスタイリングで、ホイールアーチカバーも装備されていない。ロングノーズプロポーションと併せて、オンロード志向を強く主張している。

 そう書き出してしまうと、未舗装路嫌いの軟弱なSUVと誤解されそうだが、最低地上高は190mmを確保し、ドアには泥跳ね対策のプロテクターも装備する。RAV4と共通のプラットフォームをローダウン化させずに用いていることからも、従来型より悪路踏破性を重視した設計。実は「なんちゃってSUV」ではない。

 さらに「オンロード志向型のSUVなら走りはスポーティ」というわけではない。新型の走りの味付けで重視されているのは、乗員にくつろぎ感をもたらしてくれる快適性である。

 まずそのポイントのひとつは静粛性の向上だ。やや荒れた路面ではロードノイズが多少気になったが、総じて静粛性は高い。特にエンジン周りは静か。エンジン負荷の少ないハイブリッド車は当然としても、ガソリンの2L車でも静粛性はミドルSUVのトップレベルといえるだろう。回転を抑えたパワートレーン制御の効果だけではなく、全開加速時でも威圧的な騒音は聞こえてこない。静かというより“穏やか”と表現したくなる良質の静粛性である。

 乗り心地は硬め傾向が強いSUVの中では柔らかめ。高い着座位置でもロールを大きく感じさせない程度に締まったサスチューンが与えられている。オンロード自慢のSUVにありがちな、高い重心をサスで締め上げるような硬さは感じない。路面の細かな凹凸を上手にサスストロークに転嫁させるため、細かな揺れ返しが少なく、路面感覚は滑らかに感じる。

 乗り心地に関してはハイブリッド車もガソリン車も、大まかに同じ特性を示すが、車重が重い仕様の方が重質な味わいが高まるため、ハイブリッド車の4WDモデルが最もどっしりと落ち着いた味わいだ。価格差に見合った違いとも言いがたいのだが、価格なりの上級感も感じさせてくれる。

 動的な評価は、ユーザーのSUVに対する期待値で意見が分かれるだろう。刺激的なスポーツ感覚を求める向きには適さず、安心と寛ぎのツーリングを楽しみたいユーザー向けである。

基本メカニズムはRAV4系と共通だが、程よい柔らかみを持つサスチューンや一体感の高いハンドリング特性など、細部の味付けを変えることでRAV4とは上手にキャラクターが作り分けられている。

  • 最新のトヨタセーフティセンスがもたらす運転支援機能の充実ぶりも新型の魅力のひとつ。ACCやLTAの制御はRAV4同様に高いレベルをキープ。国産車屈指の実力を持つことを実感できる。

  • ガソリン車に比べると、ハイブリッド車は車両重量が重くなるが、モーター駆動の力強いアシスト力のおかげでデメリットは皆無。むしろ走りは一枚上の安定性を感じるほど。

  • ハイブリッド車のパワートレーンは、RAV4と同じ2.5L直4ダイナミックフォースエンジン+モーターの新世代THS 2を採用。従来型に比べるとレスポンスや余力感が大きく高まっている。

ハイブリッド車ほどの余力感はないが、加減速の扱いやすさもあって、高速走行時でも不満はまったく感じない。最新エンジンとダイレクトシフトCVTがもたらす緻密な駆動力制御はガソリン車の大きな武器。

icon Z “Leather Package”(2WD) 車両価格:423万円

■主要諸元 ●全長×全幅×全高(mm):4740×1855×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1600 ●パワーユニット:1986cc直4DOHC(171PS/21.1kg・m) ●トランスミッション:ダイレクトシフトCVT ●WLTCモード総合燃費:15.4km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R)●タイヤ:225/55R19

icon ガソリン車の性能向上は 新型の大きな見所の一つ

 パワートレーンがもたらす動力性能はRAV4と大差はない。2.5Lが組み合わされるハイブリッド車は、低速から高速まで安定したドライバビリティと余力を示す。踏み込み時の加速立ち上げから伸びの繋ぎがよく、速度や加減速のコントロールが容易。速度が高くなるほどエンジン稼働頻度と使用回転域が高くなるが、高まった静粛性の恩恵で、常に穏やかな心持ちでいられる。

 ガソリン車は高速域での急加速など、大負荷時ではさすがにトルクに余裕がなく高回転を使用することになるが、それ以外の状況では3000回転以下で賄うことができる。巡航回転数は2000回転以下で、緩加速でダウンシフトしてもプラス500回転程度。浅いアクセル域での軽い踏み込みにも即応し、アクセル踏み込み量も減少するので、扱いやすく余力感にも優れる。トレンドになりつつある電動パワーアシストでも使っているのでは思わせるほどだ。また、新旧ハリアーの走行性能で最も差を感じるのはガソリン車だ。

 ハンドリングは切れ味はほどほどで、ラインコントロールをしっかり効かせるタイプ。後輪をきっちりグリップさせ前輪でラインを押さえ込むようなコーナリング感覚であり、加減速や路面のうねりによる方向性の乱れが極めて少なく抜群の安定性を持つ。クルマを操る醍醐味が薄いと感じてしまうユーザーもいるかもしれないが、コーナー時に先読みするような神経質な操舵を求めない特性は、ハリアーのキャラに似合い。万人が扱いやすさと安心感を感じる。

 快適性も動力性能もハンドリングも、刺激少なく穏やかさが身上。価格以上に上質を実感できるSUVに仕上がっている。

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

提供元:月刊自家用車

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