新車試乗レポート
更新日:2020.07.27 / 掲載日:2020.07.27
TOYOTA 新型ハリアー<プロトタイプ>試乗インプレッションインプレ&試乗リポート

ハリアー ハイブリッドZ(FF)
)■主要諸元 ●全長×全幅×全高(mm):4740×1855×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1680 ●パワーユニット:2487cc
サスチューンやボディ静粛性の向上が図られたことで、走りの上質感が高まっていることも印象的。試乗前はRAV4との棲み分けはどうなのか? が気になっていたが、そんな心配は杞憂だった。
キャビン空間の仕上がりは、ハリアーにとって重要ポイントの一つ。豪華な素材を多用するというよりも、パーツや意匠を丁寧に処理することで、巧みに上質感を引き出している。多くのユーザーの期待に応えることができるだろう。
ハリアー 2.0 Z レザーパッケージ

■主要諸元 ●全長×全幅×全高(mm):4740×1855×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1600 ●パワーユニット:1986cc直4DOHC(171PS/21.1kg・m) ●トランスミッション:ダイレクトシフトCVT ●WLTCモード総合燃費:15.4km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R)●タイヤ:225/55R19 ●価格:423万円
基本的には穏やかな走行特性だが、スタビリティの効いた走りを併せ持つなど、芯の部分には最新トヨタ車特有のDNAが宿っている。またRAV4と比べるとロードノイズを感じにくくなるなど、静粛性の向上も見逃せない美点だ。
これまでのトヨタとは違う クーペフォルムが新鮮に映る
一般的にプロトタイプ=開発途中のテスト車をイメージする人も多いだろうが、今回試乗した新型ハリアーのそれは「量産車の先行生産モデル」、つまり正式発売されるクルマと考えていい。 エクステリアは画像で見るより実物のほうがより魅力的だ。先代の雰囲気を継承しながらもクーペフォルムを強調したスタイルは、よりスタイリッシュ、よりエモーショナルに仕上げられていた。特にリヤに向かって絞り込まれるクビレの形状は感性に響くデザイン処理で、欧州のプレミアムSUVにも負けていないと感じる。以前のトヨタでは、どうしても後席の居住性や荷室のスペース効率を気にしてしまい、デザイン的にどことなく中途半端な窮屈さも感じてしまうことがあったが、新型はハリアーはそんな部分は少しも感じられない。かなり攻めている。
キャビン空間の仕立ては 想像以上に煮詰めてきた印象
インテリアは操作系の位置関係こそRAV4と共通だが、デザインは完全にハリアーオリジナル。豪華な素材を用いているわけではないが、各部品の精度や調和が取れており、質感とのバランスの良さはレクサスモデルにも負けていない印象だ。大画面ディスプレイ(12・3インチ)や先代から継承されたタッチパネル式の空調パネルなども特徴の一つだが、個人的にはディスプレイは少々大きすぎに感じてしまう。運転中に圧迫感を感じてしまうことと、モニター情報が過多な点が気になる。 居住性に関しては、確かにRAV4と比べれば若干狭くなっているが、そもそもボディ設計に余裕があるミドルSUVだけに、実用面で困ることは全くない。むしろ「このデザインなのに、十分広いよね」と感じるレベルだ。
余裕と落ち着きを兼ね揃える HV車の方が“らしさ”は上
走りはどうか? パワートレーンはガソリン車が2L直噴NA+ダイレクトCVT、ハイブリッド車は2・5L直噴NA+モーターの2タイプで、どちらもFFと4WDを選べる。 ガソリン車もハイブリッド車も共に十分以上のパフォーマンスを備えている。ただガソリン車はハリアーのキャラクターを考えると、ちょっと軽快で元気すぎる印象が強く、余裕の走りと電動化ならではの落ち着いたフィーリングを備えるハイブリッド車の方が、“ハリアーらしい”と感じた。
RAV4とメカ系は共通だが 走りの味つけは明確に異なる
プラットフォームにはTNGA「GAK」を採用するなど、基本的にはRAV4と同じ構成だが、味付けはハリアー専用に仕上げられているという。そう事前に聞いてはいたが、実は試乗前は「RAV4の着せ替えかな?」くらいに考えていた。しかし、いい意味で裏切られた。 基本に忠実な部分や限界を試してみたくなるワクワク感はRAV4と共通だが、乗り味は別物だ。一言にすれば「軽快でキビキビ」、「良く曲がる」RAV4に対して、ハリアーは「重厚でシットリ」、「自然に曲がる」と言った違いだ。より具体的に説明すると、ステア系はRAV4よりシャフトが一回り太くなったかのような直結感がプラス。ハンドリングはRAV4よりも穏やかな特性ながらも、前後バランスの良さや4輪をより効果的に使っている感覚が強く、コーナリング時の一連の動きにより連続性が高められ、クルマとの一体感や安心感が増している。そして乗り心地はプレミアムクロスオーバーらしい重厚でシットリした優しさを備える。加えてRAV4の数少ないウイークポイントだった静粛性も大きく改善。つまり、ハリアーの内外装に相応しい1ランク上の走りに仕上がっているのだ。 この違いは、GAKプラットフォームの時代進化分や、ハリアー用に新開発されたショックアブソーバーの効果もあると思うが、最も大きな要因はハリアーの目指した世界観に合わせた「走りのセットアップ」の成果である。 つまり、基本構造を中長期的に使えるように最初に高いレベルを実現させ、それを皆で共用すると言う「TNGA」の思想と豊田章男社長が常日頃語る「味づくり」が高次元で融合した結果と言っていい。