新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.07.25

【試乗レポート・トヨタ新型カローラ スポーツ】通信機能も搭載! 見た目以上に中身は進化した

カローラ スポーツ G 2WD

文と写真●ユニット・コンパス

 50周年という節目を迎えたカローラがニューモデルとなって登場した。
 その名もカローラ スポーツは、スタイリッシュなデザインが与えられた5ドアハッチバック。
 多くの方がご存知のとおり、従来このポジションはオーリスがカバーしていたものだ。だがトヨタは、ユーザーの高齢化が著しいカローラ・ブランドを再び盛り上げたいという意図から、TNGAを採用してスタイリッシュに生まれ変わった3代目オーリスを日本ではカローラ スポーツとして販売し、カローラという名前に再び注目を集めようという作戦に出た。
 トヨタは今後、車種を整理し、販売店も統合していくとされており、「トヨタのベーシックモデルはカローラ」というイメージを、より強く打ち出していきたいということだろう。

 そんな事情はさておいても、カローラ スポーツは見どころの多いクルマだ。
 走らせた印象の前にお伝えしたいのが、カローラ スポーツは、トヨタブランドにとって同時に発売されたクラウンと合わせて、車載通信機DCM(Data Communication Module)を標準装備した「コネクティッドカー」第1弾だということ。
 車載通信機を搭載することで、クルマはネットワークにつながり、ユーザーはこれまでにない「安全・安心」と「便利」を手に入れることができるようになった。

コネクティッドカーは、3年間無料でコールセンターによるサポートが受けられる

 まず、「安全・安心」。車両が故障した際に、そのまま走行できるかどうかの判断も含めて対処法などアドバイスが得られる「eケア」、事故や急病といった緊急時に、専門のオペレーターが警察や消防といった機関に手配を行ってくれる「ヘルプネット」、ドアの開閉状況やアラームの状況をスマホから確認できる「マイカーSecurity」を用意。
 とくに「ヘルプネット」は、エアバッグ作動時には自動的に通報と位置情報や車両データをセンターに通報してくれるため、万が一の際に生存率を大幅に高めてくれることが期待できる。
 「eケア」についても、故障状況の判断だけでなく、販売店への受け継ぎまでサポートしてくれるというのが心強い。

 そして「便利」。なんといっても、24時間365日、オペレーターにリクエストを送れる「オペレーターサービス」の存在が大きい。行きたい場所を伝えることで、ナビの目的地設定を行ってくれるほか、電話番号を調べてもらいそのままハンズフリー通話すること、渋滞情報やスポーツの結果などといった各種情報の検索もお願いできる。

 もうひとつ見逃せないのが、スマホのLINEアプリを通じてナビの目的地登録、距離や所要時間の確認、ガソリン残量から給油の必要性などを教えてくれる「LINEマイカーアカウント」。人間と会話しているような感覚の対話形式で操作できる手軽さが魅力で、多くのひとが利用しているLINEアプリを活用するというアイデアも秀逸。
 目的地設定ではなく、目的地登録となるため、車両側でもうひと段階アクションが必要だが、これは複数人で1台のクルマを利用することや、週末のドライブに向けて目的地を複数登録したいというシーンを想定した設計だという。開発に携わったエンジニアによれば、ユーザーからのフィードバックを集め、今後さらに使いやすくしていきたいとのこと。このように使い勝手向上する余地があるというのも、ネットワークを使ったサービスのいいところだろう。
 ちなみに、こういったサービスをフルで活用するためには、「T-Connectナビ」の導入が必要。メーカーオプション品だけでなく、より手軽な価格のディーラーオプション品が用意されているのも嬉しい配慮だ。
 カローラ スポーツにはこれらサービスを3年間無償で利用できる権利が付帯。4年目以降は1万2000円/年(税抜き)と有償となるものの、ユーザーがサービスを受け続けるかどうかを選択できるようになっている。

すっきりとしていて上質感のあるインテリア。電子式パーキングブレーキなど装備も充実

 カローラ スポーツには、ハイブリッド車(241万9200円から268万9200円)とターボガソリン車(213万8400円から241万9200円)の2種類がラインアップされており、ターボガソリン車には4WDのほか、MT仕様も選択可能となっている。
 グレードは上から「G“Z”」、「G」、「G“X”」の3つで、ハイブリッドとターボに共通で、「G」グレードでの価格差はハイブリッドが27万円高い。

 まず最初に試乗したのは1.2Lターボの「G」グレード。シートに腰掛け、室内を改めてじっくりと見まわす。全体的に上下に薄く、ダッシュボード自体が手前に傾斜しているようなデザインはなかなか新鮮だ。逆にシフトセレクターは、プリウスやオーリス時代のような未来的でスイッチのようなものから一転、オーソドックスな「自動車らしい」シフトノブに先祖返りした。
 パーキングブレーキは全車標準で電子式を採用しており、スイッチの位置も使いやすい。シフトをPに入れると自動で作動し、Dレンジにすると解除されるのも便利だ。その左となりにあるのは、ブレーキホールドのスイッチ。停車時にブレーキペダルから足を離してもブレーキを保持する便利な機能だが、これがカローラクラスに採用されているのはインパクトがある。日常での快適さに大きく貢献するのは言うまでもない。

 そして驚いたのがシート。試乗車はオプションの本革仕様(12万4200円)となっており、シート表皮は本革で、そこにメランジ調のファブリックが組み合わせられていた。これを選択すると、インパネのアッパー部も合成皮革ながら革巻き仕様となる。ブラウンのステッチも入り、所有欲をくすぐる仕立てだ。
 着座位置は低めで、なかなかスポーティな雰囲気なのだが、ドア内張りの位置が低めでAピラーも細く、ピラー付け根周辺がガラスとなっているため視界がいい。ここも好印象。

 逆に、少々残念だったのがリヤシートとラゲッジ。リヤシートは、足元のスペースは広く、シート座面の大きさも適切だが、座ったときに閉所感があり、目の前に前席シートバックがそびえる印象で、あまり長時間乗りたいとは思えなかった。
 また、ラゲッジは荷室容量352Lで、ゴルフバッグも9.5インチサイズが2個搭載可能とのことだが、開口部が狭く、また開口地上高が高いため、重い荷物を載せようとするとリヤバンパーにぶつけてしまいそう。荷室の高さを調節できる分割式デッキボードなど、使いやすさを高めるアイデアはいいだけに残念だ。

乗りやすく、気持ちのいい走りに驚く

 試乗コースはアップダウンのある郊外路で、高速走行以外の走行性能を総合的に評価できる環境。適度に荒れた路面もあり、乗り心地の良し悪しや静粛性もしっかりチェックできるコースだ。

 走り出して最初に感じられたのがクルマが素直で、走らせやすいこと。
 プロトタイプをサーキットで試乗したときに、クルマ全体の重心の低さ、そしてスムーズさ、しっかり感に関心したが、市街地を走らせても気持ちがいい。
 乗り心地もすっきりとしていて、とくに走り出した瞬間のスムーズさは、ドライブトレーンの連携も含めて白眉だろう。
 段差を越える際の振る舞いにも、わざとらしいフラット感もなければ、ゴムまりのような弾む感じもない。特別なキャラクター性はないものの、多くのひとが快適で乗り心地のいいバランスの取れたクルマだと思うはずだ。
 カローラ スポーツにはKYBと共同開発した新開発のダンパーが採用されているが、これがいい仕事をしている。段差のような上下の振動はスッといなし、コーナーのようなダンパーに横力がかかるシーンでは摩擦力を発揮してクルマの傾きを規制してくれるという代物で、それがきちんとリアルワールドでも効果を発揮しているのにちょっとした感動を覚えた。高価な電子制御を使うことなく、それに近い効果を発揮するというまさに新世代カローラにふさわしいアイテムだ。

 身体にフィットしながらもゆったりとした気持ちになれるシートにも感心した。腰やふとももの支え方が適切で、ステアリングをスッと切った際にほどこよく上半身をサポートしてくれるのだ。サーキット試乗では新設計だというスポーツシートの出来に目が奪われたが、標準シートでも満足度は高い。

自然で気持ちいい走りの1.2Lターボ。ハイブリッドの魅力は言うまでもない

 パワートレインの印象もよかった。1.2Lターボエンジンは、先代モデルにあたるオーリスでは最上級グレードの位置付け(価格も250万円を超えていた)だっただけに、必要にして十分な力を提供してくれる。CVTとのマッチングもよく、アクセルの踏み加減と車速の関係も自然だった。そして、試乗シーンの多くで十分な静粛性を提供してくれることも確認できた。
 走行シーンにあわせて、パワートレーン、ステアリング、エアコンの制御を変更する「ドライブモードセレクト」は、「ECO」、「NORMAL」、「SPORT」の3段階(AVS装着車は5段階)で、ほとんどのシーンは「NORMAL」で十分だったが、積極的にアクセルを踏むような走りのときは、もちろん「SPORT」がマッチ。絶対的なパワーがアップするわけではないが、操作に対するクルマの反応が機敏になる。

 続いてハイブリッドにも試乗。1.2Lターボがクルマが持つ素性を生かした仕上がりだとすれば、1.8Lエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドは、「電動化とはこういうものだ!」という説得力に満ちていた。
 具体的には、発進からタウンスピードのほとんどをEV走行で賄えてしまうところや、モーターならではのスムーズかつ力強い加速。そして全般的な静粛性の高さだ。現行型プリウス以降のそれはとくにEV感が強い。
 価格差はあるが、下取りで有利であることも考慮すれば、やはりハイブリッドは魅力的。燃費性能ももちろん優秀(WLTCモードでHYBRID G が30.0km/L、1.2LターボのGが16.4km/L)、市街地走行が多いユーザーにはハイブリッドをオススメする。 ただし、ハイブリッドには90kg近いウエイトハンデがある。クルマの動きに軽快感があるのは1.2Lターボで、それをどう評価するかはユーザー次第だろう。

クルマとしての完成度はもちろん。「つながる」ことの価値を大きく評価したい

 いずれにしても、TNGA世代となった新生カローラは、見た目だけでなく走りの実力も大幅にアップしていることは間違いない。
 このクラスでは言うまでもなく、VW ゴルフがディフェンディング・チャンピオンだが、乗り心地のよさや走りのスムーズさといった項目でカローラ スポーツに光るものを感じた。ハイブリッドでも200万円後半というプラシングを考えれば、カローラ スポーツを選ぶメリットは十分にある。
 そして、1.2Lターボの価格設定にも注目したい。決して安価ではないが、装備、安全性能を含めてまったく手抜きなしの内容で、購入後の満足度は高い。
 なにより、コネクティッド機能を標準で備えることを大きく評価したい。クルマがつながることで得られる便利と安心感は、いちど体験したらきっとやめられなくなるはずだ。


トヨタ カローラ スポーツ G 2WD(6速AT)

全長×全幅×全高 4375×1790×1460mm
ホイールベース 2640mm
トレッド前/後 1530/1530mm
車両重量 1585kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1196cc
最高出力 116ps/5200-5600rpm
最大トルク 18.9kgm/1500-4000rpm
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 215/50R18

販売価格 213万8400円~268万9200円(全グレード)



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グーネットマガジン編集部

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