新車試乗レポート
更新日:2018.10.24 / 掲載日:2018.06.26
MAZDA新型CX-3公道試乗レポ
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
大幅改良されたコンパクトSUV 新開発1.8ディーゼルターボの真価は?
MAZDA CX-3

●発売日:5月31日●価格帯:212万7600~309万4480円●販売店:マツダ全店●問い合わせ先:0120-386919
主要諸元(XDLPackage)
●全長×全幅×全高(mm):4275×1765×1550●ホイールベース(mm):2570●車両重量(kg):1310●駆動方式:FF●パワートレーン:1756cc直4DOHCディーゼルターボ(116PS/27.5kg・m)●トランスミッション:6AT●WLTCモード燃費:20.2(km/L)●燃料タンク容量(L):48[軽油]●最小回転半径(m):5.3
発進から巡航まで穏やかなペダルコントールが可能
1・8Lへの排気量アップによるパワースペック向上は最高出力の11PS増。排気量の影響が大きい最大トルクは同値である。限界性能至上主義なら許し難い改良だ。もっとも、全開加速性能など一般ユーザーにはメリットもなく、マツダがドライバーに優しい、あるいは心地よい走りを求めた様々な提案とも合致する。要は能書きではなく実利なのだ。と考えればCX‐3の改良は当を得たものだ。
最近マツダは加速度の増減率、つまり加加速度を運転しやすさの要点に挙げているが、新型CX‐3もその通りだった。踏み込み時のトルクは素早く、緩やかに立ち上がっていく。発進から巡航まで穏やかで安定したペダルコントロールが自然とできる。CX‐5等の2・2L仕様と比較すると過給圧の応答遅れを意識するが、それは文字通りの「若干」でしかない。
従来車も当時の小排気量ディーゼルでは相当な優等生だったが、新型と乗り比べると遅れてドンっと立ち上がるターボ感を意識してしまう。高負荷で安定した高速域ではその差は少なくなるが、言い方を換えるなら新しい1・8Lユニットは発進から高速、登坂といった負荷変動に対して運転感覚の変化が少ないわけだ。
ただし、パワーを感じさせる刺激があるのは1・5Lであり、ちょっと走らせたくらいでは新型のほうがダルいと思えるかもしれない。とくにアクセルオンオフが頻繁なドライバーはそう感じる可能性が高い。新型の狙いは自然に綺麗な運転ができる特性であり、それは無駄踏みの抑制にもなる。普段から滑らかな運転を心掛けているドライバーなら、いかに扱いやすくなったか容易に理解できるはずだ。
エクステリア&インテリアも大深化
今回のマイナーチェンジでは、ラジエターグリルやLEDリヤコンビネーションランプ、サイドガーニッシュの意匠変更が図られたほか、ピラーパネルがグロスブラックに変更されている。

上級仕様のLパッケージ車に設定されるレザーシートは、ピュアホワイトとブラックの2色から選択可能。今回の改良に合わせて内部素材などが変更されている。
ドライバー優先のキャビン空間。水平基調のインパネデザインは、基本的に従来型を踏襲するが、助手席のインパネパッドの拡大やニーレストにソフトパッド追加など快適性向上が図られている。
マツダコネクトを操作するコマンダーダイヤルを中央に配置し操作性を向上。引き上げ式のサイドブレーキも電子スイッチ式の電動ブレーキに変更された。
純正タイヤは上下左右の動きに対して適正な応答特性を持つ、CX‐3専用設計タイヤが採用された。18インチホイールデザインも新意匠に変更。
従来型と比べると数値以上に伝わる乗り心地が向上
ハンドリングにも改良が加えられているが、すでにGVCも搭載されていて、据わり中心に半歩前進レベル。先読みや神経質な補正なしで狙ったラインに乗っていくのは相変わらずの見所。車体サイズと全高の関係からマツダ車の中では落ち着きで劣るが、同サイズSUVでは最も安心感のある操縦性であり、平均車速が高くなるほど優位性も大きくなる。
段差乗り越え時等の刺激を減らしたのが乗り心地の改良点。ストローク制御は従来同様に硬めの設定であり、硬柔をあまり変えずに肌触りをよくしたような印象だ。また、騒音も改善され、骨格から伝わってくる騒音の高周波成分が減少。厚みを感じさせるような音質であり、車格感も向上した。乗り比べると、微妙な揺れなど数値以上に体感に影響する部分が洗練されている。
車線維持支援が逸脱警報のみなのは従来車と変わらないが、ACCは全車速型となり、AEBSには夜間歩行者検知機能が加わり、さらに全周囲モニターも用意。安全&運転支援も着実にステップアップしている。後席が狭い等のユーティリティ面の難点もあるが、全体的な車格感の向上はダウンサイザーにはとくに大きな魅力。
注目の1.8Lディーゼル進化のPOINT

従来型の1.5Lと比べて、300ccの排気量アップとなった、1.8Lディーゼルターボエンジンは116PS/27.5kg・mを発揮する。さらに環境性能と実用燃費も改善。
排ガス浄化性能向上を狙った排気量アップ
一般的に排気量増は動力性能向上を狙いとするが、この新エンジンはプラス300ccを排ガス浄化性能向上に用いているのが特徴だ。具体的には全域EGRを採用しているのが特徴。全負荷域でもおよそ10%のEGRが導入される。つまり全開時でも外気からの吸気量は1.6L相当でしかない。しかし、高価かつ維持費の負担が増加する尿素SCRを用いることなく新たな排ガス規制に対応している。
また、動力性能と燃費についてもカタログスペックから実態燃費にシフトしているのも見所。そのためカタログ燃費もJC08モードよりも実燃費に近いWLTCモード表記となった。ドライバーとクルマが一対での走行性能という視点は正に「人馬一体」思想と言える。
ピストンやコンロッドの形状変更、軽量構造のクランクシャフトの採用により、1・5Lエンジンと比較して、排気量アップにもかかわらず、300gの部品軽量化を達成。
排気量アップにより高回転域でのトルクが増加。5000rpmまで気持ちよく扱えるトルクカーブとなり、1.5Lエンジンと比べてパワフル感が向上している。
新型の狙いは自然に綺麗な運転ができる特性であり、それは無駄踏みの抑制にもなる。滑らかな運転を心がけるドライバーならその狙いが容易にわかるはずだ。
新型CX-3とライバルの走りを比較!
MAZDA新型CX-3

●価格帯:212万7600~309万4480円
コンパクトSUVのライバルは走りでも特性が異なる
CX-3を基準にすると、ヴェゼルはユーティリティに圧倒的なアドバンテージ。後席と荷室スペースは実用型2BOX車並みであり、多様な積載性も長所だ。半面、上位モデルでも1.5Lのハイブリッド止まりで、走りの車格感は1クラス下の印象。高速のロングツーリング向けとは言い難い。C-HRは車格感とスペシャリティな雰囲気が売り。キャビン容量でもCX-3に勝るが、雰囲気優先で使い勝手向上には後ろ向き。ラフロード対応力も低い。CX-3よりもロングホイールベースだが、4WD車では最低地上高は5mm低く、FF車は140mmでしかない。また、看板モデルのハイブリッド車に4WDの設定がなく、SUV用途にはあまり適していない。
HONDAヴェゼル

●価格帯:207万5000~292万6000円
ユーティリティ特性に優れたコンパクトSUVの万能選手
今年の3月にマイナーチェンジを実施し、再び人気が再燃。買い得感の高い価格設定もあって、C-HRと激しい競争を繰り広げている。コンパクトSUVの代表モデルだ。

後席の居住性や積載性などは秀でているが、走りに関しては、CX‐3と比較すると車格感で一歩譲る。高速のロングツーリング向けとは言いがたい。
TOYOTA C-HR

●価格帯:229万~292万9200円
スペシャリティ感とオンロード性能に特化した快速SUV
先日行われた一部改良で、1.2L直噴ターボ車に2WDモデルを設定しスタート価格を下げるなど、ヴェゼルなどのライバル勢を迎え撃つ体制を整えた。

新世代TNGAシャシーを採用し、ニュルブルクリンク仕込みの足回りなど、質感の高いオンロード走行性に定評がある。一方悪路走行は得意としていない。
提供元:月刊自家用車