新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.06.07

【試乗レポート】これはもう別モノ! ロードスター・ロードスターRFがエンジンを大幅改良

ロードスターRF VS

文と写真●ユニット・コンパス

 ロードスターが進化した。といっても、見た目にはほとんどわからない(詳しいひとならすぐに気がつくかもしれない)。しかし、ひとたび走り出せば、その進化は誰にでも体感できるものだ。

 マツダは、2018年6月7日ロードスターおよびロードスターRFの一部改良を発表。改良のポイントは、エンジン改良による動力性能の進化、安全性能の充実。そして見逃せないのが、シリーズ初となるテレスコピック機能の採用となる。

ロードスターはこれからもマツダの象徴であり続ける

 ロードスター開発主査である中山 雅氏は、改良モデルのプレゼンテーションにあたり、ロードスターの開発コンセプトについて、「ロードスターは、マツダにとってブランドアイコンといえる存在であり、そして、歴代のロードスターはつねに『ライト・ウェイト・スポーツ』であることを意識しながら、開発・改良を重ねてきた」と改めて紹介。今後ロードスターが進むべき道筋についても、その育成方向を「モノ作り」と「コト作り」というふたつの軸とすると説明した。
 まず、「コト作り」においては、1989年以来続くロードスターの歴史を、今後も継続して続けていくことで文化とすること。そしてもうひとつの軸である「モノ作り」においては、ユーザーの想定を超えるプロダクトを生み出すことで、ユーザーが感動するようなクルマを目指す。
 このマツダの姿勢、決意には、ロードスターのファンだけでなく、多くのクルマ好きが共感するだろう。小さい子供が憧れたクルマが、大人になったときに、もっと進化した形で存在していて、それを所有し操ることができるということは、とても大切なことだ。クルマは道具であるが、同時に人生を豊かにする相棒でもあるからだ。
 そんな志によって改良された新型ロードスターとは、どのようなクルマに仕上がっているのか。今回は、クローズドコースでの試乗も行われたので、その印象を交えてお伝えする。

大人の感性に訴えかける特別仕様車「キャラメル・トップ」

特別仕様車「キャラメル・トップ」

 ちなみに、冒頭で詳しいひとなら、変化に気がつくかもとしたのは、ソフトトップにブラウンの幌が追加され、ホイールカラー(ソフトトップの16インチ、RFの17インチ)がブラックメタリックになったから。改良を機に追加された特別仕様車「キャラメル・トップ」は、まさにこのブラウンカラーのソフトトップを採用。内装色は「スポーツタン」で、シートにも本革を贅沢にあしらった。タンカラーの内装色というと、古くからのロードスターファンは、ユーノス・ロードスターのVスペシャルを思い出すかもしれないが、「キャラメル・トップ」のスポーツタンは、もう少し薄めの色合いで、洗練された雰囲気を放っていた。

フルモデルチェンジ級の改良を施した新型2Lユニット

 現行型ロードスターが登場したのは2015年5月のことで、2017年にはリトラクタブルハードトップのロードスター RFが追加されている。1.5Lエンジンを搭載するソフトトップモデルが、歴代モデルから受け継がれた軽快かつ爽快感のある走行フィーリングを提供するのに対して、RFは2Lエンジンを搭載。上質さやゆとりといった、ソフトトップモデルとはニュアンスの異なるキャラクター性が与えられていた。

 新型では、ともにエンジンに改良が加えられているが、とくに変化の幅が大きいのがRFが搭載する2Lユニット(SKYACTIV-G 2.0)だ。スペックを比較すると、新型は最高出力が184馬力(+26馬力)、最大トルクが20.9kgm(+0.5kgm)と大幅にスペックアップ。レブリミットは6800回転から7500回転へ拡大され、逆に最大トルクは600回転低い4000回転で発生するようになった。それでいながら燃費性能についてはむしろ、低回転から高回転までの全域にわたり同等以上に向上しているというから驚きだ。
 その改良点は、吸気系改良による「高回転領域での吸気の確保」、エンジン部品内部の見直しによる「慣性重量とフリクション低減」、排気効率を高め「高回転領域で排気ロスの低減」、「燃焼の進化による全域トルク向上」、「リニアに澄んだ力強いサウンド」と非常に広範囲にわたる。簡単に言えば、2L用エンジンは『別モノ』というわけだ。

RFの走りが激変! 高回転まで使いたくなるスポーツカーフィール

 取材会では、クローズドコースにて新旧モデルを比較試乗できる環境となっており、エンジンの違いを全域にわたって存分に確認。結論から言ってしまえば、新型RFは、これまでの個性を失うことなく、よりスポーツカーらしく、走らせて楽しいクルマになっていた。

 具体的には、従来型RFがスムーズかつクールに速度を重ねていくタイプだったのに対して、新型RFはアクセル操作に対するエンジンの反応がレスポンシブで、高回転まで積極的に使いたくなるようなドラマチックさを身につけている。とくに気持ちがよかったのが、コーナーをクリアする一連の流れだ。
 ターンインで車速をコントロールする際、AT車でもダウンシフトのタイミングがドライバーの意図どおりなのも気持ちがいいし、コーナー出口に向けてアクセルを踏んでいく際、足の動きに対してエンジンのトルク感、排気音の盛り上がりがリンクしている。
 涼しい顔でコーナーをクリアする従来モデルもクールだったが、ライトウエイトスポーツカーらしいワクワク感が感じられる新型の走りは素直に楽しい!

 もちろん、ソフトトップモデルのエンジンについても改良は加えられている。内部パーツや制御に2Lユニットを開発する際に得られた知見が投入されており、スペック上の変化はわずかながら、高回転型エンジンのキャラクターはそのままに、燃費性能と全域でのトルクアップを実現しているというから安心してほしい。
 RFのような大幅な出力強化が行われなかった理由を確認すると、「絶対的な性能ではなく、運転して感じられるライトウエイトスポーツらしい軽快感、楽しさを重視している」という答えが帰ってきた。スピードの速さが必ずしも運転の楽しさに直結しないというマツダの考え方には共感できる。

シリーズ初となるテレスコピック採用

 そしてもうひとつ、全モデルに共通する変更点がある。それが、ステアリングの位置を手前側に30mm動かせるテレスコピック機能が追加されたことだ。
 とくに体格の大きいユーザーを中心に、ステアリングをもう少し手前に引き寄せたいという声があったことに応えたもの。重量増を最小限に抑えるべく設計に工夫を凝らしたというのもロードスターらしい話である。これまでドライビングポジションを理由に購入を諦めていたひとにとっては、まさに福音となる改良であり、ぜひ一度確かめてもらいたいところだ。

 最後に安全性能の充実について紹介しよう。なんと、新しいロードスターおよびロードスターRFの全車が、「サポカーS・ワイド」に該当する先進安全機能を備えるようになったのだ。
 自動ブレーキである「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」、後退時の衝突を回避、被害を軽減する「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(後退時)」、ペダル踏み間違えによる急加速を抑える「AT誤発進抑制制御(前進時/後退時)」。これらがMTモデルを含めて全車標準装備になった。スポーツカーであっても、いや運転を積極的に楽しむクルマだからこそ、リスクを低減してくれる先進安全装備の搭載は嬉しい。なお、これによりマツダは日本国内で販売するすべての車種全車が「サポカーS・ワイド」に該当するようになった。

 いまや国産車ではめっきり少なくなったスポーツカー。輸入車まで範囲を広げれば魅力的なスポーツカーは確かにあるが、いろいろな意味で我々一般ユーザーが等身大で付き合えるロードスターの存在は貴重で、その存在には大きな価値がある。それだけに、ロードスターをこれからも育て続けると決意表明したマツダには賛辞とともにエールを送りたい。


マツダ ロードスターRF VS(6速AT)

全長×全幅×全高 3915×1735×1245mm
ホイールベース 2310mm
トレッド前/後 1495/1505mm
車両重量 1130kg
エンジン 直列4気筒DOHC
総排気量 1997cc
最高出力 184ps/7000rpm
最大トルク 20.9kgm/4000rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 205/45R17

販売価格 336万9600円~381万2400円(RF 全グレード)

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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