新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.03.27
【試乗レポート】これがワールドクラスの実力だ! 「MQB」で生まれ変わった新型ポロ

ポロ TSIハイライン
文と写真●ユニット・コンパス
VWの魅力、個性のひとつが、いつの時代においても自動車のスタンダード的な存在であることだろう。看板モデルであるゴルフやポロは、まさにそれぞれのクラスにおける規範、スタンダードとして長年尊敬を集めてきた。なにしろ、ポロが誕生した1975年からの累計販売台数は1400万台! そして、それは過去の話ではなく、2017年における世界の乗用車販売台数ベスト10に、VWからはポロとゴルフがランクインしている。現在進行形で売れ続けているワールドスタンダードカーなのだ。
2017年の夏にゴルフがマイナーチェンジを受けたときに、フル液晶化されたメーターやインフォテイメント機能で大幅に「デジタル化」されたことも話題になった。これも、他ならぬゴルフだからこそ。小型乗用車クラスの水準が、大幅に引き上げられることになるという意味も含めての驚きだったわけだ。そして、8年ぶりにフルモデルチェンジしたポロもまた、クラスの水準を大きく引き上げる実力の持ち主として登場した。
ワイド&ローになったプロポーション。ボディサイズは「3ナンバー」に拡大

新型ポロにおける進化のポイントは4つ。「最適化されたパッケージング」、「最新のVWデザイン」、「先進的なコックピット」、そして「上級モデルの先進安全性を採用」だ。
これら進化のキーとなるのが、VWが進めているモジュラー戦略「MQB」。すでに、ゴルフやティグアン、パサート、そしてアルテオン に採用されているVWの基幹技術である。これをポロにも適応することで、上記の進化が実現したという。「MQB」と一般的なプラットフォーム共用化との違い、それは自由度にある。一般的なプラットフォーム共用化では、ボディを伸び縮みさせるような展開しかできない。しかし「MQB」では、共通化することでメリットの得られる部分をモジュラー構造とし、重要部品については共用化を実現しつつも、車体骨格についてはモデルごとに自由度が大きい設計となっている。だから、ポロのようなBセグメントの小型車とアルテオンのような大型車を、同じ「MQB」で作ることができるわけだ。「先進的なコックピット」や「上級モデルの先進安全性を採用」の実現は、まさに「MQB」の真骨頂と言えるだろう。

では、そんな新型ポロはどんなクルマに仕上がっていたのだろうか。実車を目の当たりにした印象は、「ポロ、格好よくなったなぁ」というもの。これまでのコロンとした、横幅に対して上背の高かったプロポーションから一転、フォルムはワイド&ローとなり、ボディに刻まれるラインはシャープになった。グリルと一体化して横一文字を形成するヘッドライトもあいまって、これまでよりもスポーティに、そして品質が高そうな印象を受ける。
まったく新しくなったインテリア。上級モデルゆずりの充実した装備

そして、その印象はドアを開けてドライバーズシートに腰を下ろしてからも続く。もっとも大きな変化は、ダッシュボードのデザイン。従来が垂直基調だったことに対して、新型のそれは思い切り横基調で、広がりを感じさせるものになった。ドライバーを取り囲むように角度のついたインパネも、従来にはなかったテイストだ。そして、メーターのすぐ横、同じ高さにナビゲーションなどを表示するインフォテイメントシステム「Discover Pro」が設置された。タッチ操作対応の8インチスクリーンは周囲のパネルと同化していて、まるで最新のスマホのような先進感を演出している。ハードウェアスイッチが最小限となったことで、インパネ全体もシンプルですっきりとしている。

この「Discover Pro」は、スマホと連携させることで、ナビの検索性能と案内性能が向上するようになっているのも特徴。オンラインVICSにも対応し、ルートガイダンスもリアルタイム交通情報を反映したものとなる。さらに検索の入力も、従来の文字入力に加えて音声による入力にも対応しており、使い勝手を大幅に高めている。
運転支援機能についても、「プリクラッシュブレーキシステム Front Assist(歩行者検知対応シティエマージェンシーブレーキ機能付き)」、「アクティブクルーズコントロール ACC(全車速追従機能付き)」、「ブラインドスポットディテクション(後方死角検知機能)」、「リヤトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能)」、「パークディスタンスコントロール(フロント/リヤ、前進/後退時衝突軽減ブレーキ機能付き)」など盛りだくさん。先のインフォテイメント機能と合わせて、もっと上級クラスのクルマと比べても遜色のない内容となっている。
そう、上級クラスのクルマといえば、リヤシートの快適性が新型では大幅に向上している。ボディサイズの拡大は、しっかりと居住空間と荷室スペースに割り当てられていて、後席の膝前はあきらかに広くなった。ラゲッジルームは351Lと従来比71Lの拡大している。VWによればゴルフ4よりも全長は短いにも関わらず、ホイールベースは長く、室内空間は広くなっているのだとか。
「MQB」採用で走りの実力も大幅にレベルアップ

では、走り味はどのように進化しているのだろうか。搭載されるパワートレーンは、95馬力を発生させる1L3気筒ターボと7速DSGの組み合わせで、1.2L4気筒だった従来モデルよりも排気量とシリンダー数を少なくしながらも、最大出力では5馬力アップと、最新ユニットらしい高効率なものだ。
試乗したのは、市街地を中心に、速度の乗る郊外のバイパス路を含めたコースで、一般的なユーザーの使用用途に近いもの。3気筒エンジンの音や振動がどうなのか、「MQB」に進化したプラットフォームの進化がどれほどのものかを重点的にチェックした。

結論を先に言ってしまうと、進化の大きさに驚き、そして関心した。
パワーは必要にして十分で、アクセル操作に対する反応も素直そのもの。心配していた3気筒エンジンのネガも、まるで感じなかった。なにより、ボディ全体か伝わってくるしっかり感、頼もしさがいい。車体剛性の高さからくるしっかり感や安定性は、従来からドイツ車が得意としていた分野だが、新型ポロでは乗り心地や静けさといった、これまで日本車が得意としていた項目についても好評価が与えられる。まるでもっと大きなクルマに乗っているかのような快適さなのだ。
そして、ワイド&ローになった見た目のとおり、コーナーでの振る舞いも良好で、もっとパワフルなエンジンが搭載されたとしても、そのパワーをきっちりと路面に伝えてくれそうな器の大きさを感じさせた。気の早い話にはなってしまうが、新型ポロのGTIモデルはかなりのファン・トゥ・ドライブに仕上がるに違いない。

2018年3月20日の新型ポロ発表会でスピーチを行なったフォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役のティル・シェア氏
コンパクトSUVやクロスオーバーといった、ライフスタイル色の強いモデルが数多く登場する昨今だが、やはり王道には王道のよさがあるというのが新型ポロに試乗した素直な感想になる。走り出した瞬間からストレスフリーで、コンパクトカーに重要な取りまわしのよさについても、「3ナンバー化」の影響は感じられなかった。VWは新型ポロの発表会で、ボディサイズの大型化はユーザーからの要望でもあったと説明したが、確かにその恩恵は大きい。
使い勝手、安全性、走り。新型ポロは、もはや「スタンダードカー」と呼ぶのをためらわれるほどの完成度と充実した内容を誇っていた。
フォルクスワーゲン ポロ TSIハイライン(7速AT・DSG)
全長×全幅×全高 4060×1750×1450mm
ホイールベース 2550mm
トレッド前/後 1505/1485mm
車両重量 1160kg
エンジン 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 999cc
最高出力 95ps/5000-5500rpm
最大トルク 17.9kgm/2000-3500rpm
JC08モード燃費 19.1km/L
サスペンション前/後 ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 195/55R16
販売価格 209万8000円~265万円(全グレード)