新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.03.23

【試乗レポート】セレナeパワーのメリットは!? 気になる実力を路上で確かめた

文と写真●ユニット・コンパス

 これは説得力がある。セレナに追加された「eパワー」で街中を走って、まず感じたのがこれまでのセレナと明らかに違う静かさだった。
 試乗は横浜の市街地を抜け、高速道路を走り、また市街地へと戻るコースだったのだが、スタート地点となった日産本社から出てすぐ、みなとみらいの街を走らせているうちに、ガソリンモデルとは明らかに違う静けさにすっかり気持ちを奪われてしまったのだ。

ノートに続く「eパワー」搭載モデル第2弾

 セレナに追加された「eパワー」。これは、クルマを走らせる駆動力を従来のエンジンからモーターに置き換えたモデルに与えられるもので、セレナeパワーは2016年11月に登場したノートeパワーに続く2モデル目となる。
 「eパワー」のメカニズムは、簡単に言えば電気自動車に発電用エンジンを追加したもの。一般的なガソリン車と同じようにスタンドで給油し、その燃料で発電機を働かせて電力を生み出すため、駐車場に充電設備は必要ない。一方で、純粋な電気自動車のように、外部から充電することはできない。
 ではなぜ、ノートやセレナをリーフのようなピュアEVにしなかったというと、ピュアEVには大きく高価なバッテリーとそれを収めるための専用シャシーが必要になるという理由がある。既存モデルをピュアEV化するには、大幅な改良とコスト増が必要となるのである。
 実際、リーフが搭載するリチウムイオンバッテリーと比べて「eパワー」に搭載されるものは小型で、前席シート下に収まるほどのサイズ。さらに、発電用エンジンも従来のガソリンエンジン車のものを改良して採用しているため、開発と製造のコストを抑えられる。ガソリンエンジンの弱点をモーターで補うトヨタ「THS-II」、エンジンとモーターそれぞれの長所を生かすホンダ「スポーツハイブリッドi-MMD」、「eパワー」はいずれとも異なるアプローチで電動化を実現した。

 発電用にガソリンエンジンを搭載するため、リーフのような完全にモーター音だけの静けさではない。むしろ、地下駐車場のような静かな環境から発進する際には、エンジンの振動やゴロゴロといった唸り音が耳に届く。しかし、それはあくまでも音に神経を集中しているからだろう。事実、クルマが街中に入ると、もうそれからエンジンの音が気になることはなかった。じつはこの静かさは、パワートレーンだけによるものではない。セレナには25アイテムにもわたる静穏化アイテムが採用されており、さらにエンジンを始動するタイミングなどの制御も合わさって、総合的に静かなクルマとなっている。
 また、セレナeパワーには「マナーモード」という機能が備わっており、バッテリーの容量にもよるが、最大で約2.7kmまで極力エンジンを始動させない走行が可能になっている。この機能を使えば、深夜や早朝といった、まさに近隣へ配慮したいときに車内だけでなく、車外に対しても静かな走りを提供してくれる。これはガソリン車にはない、eパワーならではのポイントだ。

eパワー化の副産物は上質な乗り味

 「eパワー」ならではの価値は静かさだけではない。モーターは、エンジンとトランスミッションを組み合わせたものよりもレスポンスがいいのだ。つまり、セレナeパワーはガソリンモデルよりも出足がよく、走りやすさという部分でも優れている。ひとや荷物を乗せることの多いミニバンは、とくに排気量の小さいモデルでは出足が遅く、アクセルを大きく踏み込まなければ期待する加速が得られないことがよくある。とくにそれを実感するのが街中でのストップ&ゴー。信号からの発進や右折時などで、ガソリン車よりも走りやすさを体感することができた。
 そしてもうひとつ気が付いたのが、乗り心地がよくなっていること。スペックを見て、ガソリンモデルよりも車重が重くなっていることから、より重厚な乗り味になることは想像していたが、ちょっとした段差を踏み越えた際に身体に伝わってくる振動が、ガソリンモデルよりも少ない。さらに言うと、シートを通じて伝わるブルブルとした振動も少なくなっている。その差は前席よりも2列目が大きい。乗り比べれば誰でも感じられるくらいの差だ。
 試乗後にエンジニアに確認したが、セレナeパワーではバッテリーを搭載するためにフロアの一部を再設計している。その際、リチウムイオンバッテリーの安全性を高めるために施した補強が、ボディ全体のねじり剛性を高める結果にもつながったという。さらに、ボディがしっかりとした恩恵は足まわりのセッティングにもおよび、スプリングやダンパーをガソリン車よりもソフトな方向にすることができた。セレナeパワーの乗り心地がいいのには、このような理由があったのだ。

ワンペダルドライブは、運転者にも同乗者にもやさしい

 最後に、セレナeパワーならではの個性のひとつである「eパワー ドライブ」について紹介しよう。すでにノートeパワーにも搭載されている、アクセルペダルだけで加減速できる機能だ。これにより、ペダルの踏み替え量が減るため、運転が楽になると言われている。
 「eパワー ドライブ」は、ドライブモードを「Sモード(スマートモード)」または「ECOモード」にしたときに有効になる。「S」というとスポーツを想像するが、加速力は「ノーマル」と変わらず、アクセルペダルを放した際の減速力が強くなるというロジックだ。
 ペダルの踏み替えが減るということがメリットだと言われている「eパワー ドライブ」だが、ミニバンであるセレナの場合はむしろ、停止する際の嫌な「ガックン」がなくなるという方が嬉しいかもしれない。ブレーキを使って停車するときに、慣れているドライバーは自然にペダルから力を抜く操作を行うが、「eパワー ドライブ」ではこれをクルマが自動的に行ってくれる。ドライバーは止まりたい場所に向けてアクセルペダルからゆっくり足を離すだけでいい。同乗者に不快な思いをさせず、なおかつドライバーの負担を減らせるという意味では、まさにセレナに採用されて嬉しい機能だと言えるだろう。
 もちろん、速度によってはブレーキを踏まなければ停止できない場合もあるし、不意な飛び出しなどにも当然ながらブレーキで対応しなければならない。そういう意味でも、「プロパイロット」同様に、あくまでも操作の一部を手助けしてくれる機能ということは忘れてはならないが、慣れればペダルの踏み替えが大幅に減り、運転が楽になることは間違いない。

 このように、ガソリン車と比べてかなりの違いを体験させてくれるセレナeパワー。価格は296万8920円から343万6560円と、ベース車に対して40万円近いエクストラということで、確かにその差は小さくない。だが、一度乗ってしまうと、この静かさ、運転しやすさは魅力的だ。これまでのファミリーミニバンは、便利さと価格のリーズナブルさにプライオリティがあり、静かさや走りやすさといったクオリティ・オブ・ライフ的な性能は後まわしにされる傾向があった。しかし、ミニバンだって、いやミニバンだからこそ、乗員みんなが快適に楽しく移動できることに価値があるはず。そういった意味でも、セレナeパワーには魅力がある。


日産 セレナeパワー XV(CVT)
全長×全幅×全高 4690×1695×1865mm
ホイールベース 2860mm
トレッド前/後 1485/1485mm
車両重量 1750kg
エンジン 直列3気筒DOHC+モーター
総排気量 1198cc
最高出力 84ps/6000rpm
最大トルク 10.5kgm/3200-5200rpm
JC08モード燃費 26.2km/L
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 195/65R15

販売価格 296万8920円~343万6560円(eパワーのみ)

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グーネットマガジン編集部

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