新車試乗レポート
更新日:2018.10.28 / 掲載日:2018.03.09

王者は奢らず! 執念を感じさせる徹底改良を受けた新型アルファード/ヴェルファイア

アルファード エグゼクティブラウンジ(7人乗り)

文●工藤貴宏 写真●澤田和久

 いま、世界中を見渡してもアルファードヴェルファイアほどの人気を持つラグジュアリーミニバンはないだろう。日本はもちろん、いまや輸出も絶好調。東南アジアのいくつかの大都市では東京と同じ頻度で見かけるほど高い人気を誇っている。
 アルファード/ヴェルファイアはトヨタのミニバンラインナップのなかで最大かつ最上級のモデルだ。それと同時に日本のミニバンのなかでもっともラグジュアリーなモデル。言い換えれば日本を代表するミニバンといえる。
 ミニバン界のクラウン、もしくはミニバン界のレクサスと言っていいかもしれない。装備の充実度、室内スペース、まるで飛行機のファーストクラスのような2列目シートのゴージャスさ、そして3列目居住性のよさ。どれをとっても日本のミニバンにおいて、そして世界中のミニバンを見渡してもトップを争う水準にある。バンをコンバージョンしたモデルではなく、生粋の乗用車としては世界一ラグジュアリーなミニバンに違いない。
 そんなアルファード/ヴェルファイアが大規模なマイナーチェンジを受けた。さっそく試乗してきたので報告しよう。

すべてのボディタイプでエクステリアをリフレッシュ

 まず伝えたいのは、マイナーチェンジの変更メニューを知ったときに感じた印象。言葉を選ばずに言うと「エンジニアの恐るべき執念」だ。そう感じた理由はなぜか? ラージミニバンクラスで販売台数がダントツなのに、一切の妥協を感じさせない気合の入った内容だったからである。場所によっては大胆に、部分によっては驚くほど細かく、マイナーチェンジなのに信じられないほど多岐にわたって手を入れてきたのだ。

 その内容は、目立つところからいえばエクステリアのリフレッシュだ。アルファードとヴェルファイアがあって、それぞれに標準タイプとエアロタイプの2種類、合計で4タイプある顔つきはすべてに手が入った。アルファードはグリルがひときわ大きくなって迫力が増し、ヴェルファイアはメッキ加飾が大幅に増えて煌びやかさが引き上げられている。また、バリエーションとして最上級の内装を誇る「エグゼクティブラウンジ」にエアロ外装が追加されたのもトピックだろう。
 しかし単に見た目だけが変わったのではなく、灯火類をすべてLED化。上級仕様のヘッドライトは先行車や対向車が眩しく感じる部分を消灯してそれ以外はハイビームとなるアダプティブハイビーム付きの3灯LEDヘッドライトやシーケンシャルターンランプ(外側に向かって流れるウインカー)を採用するなど、夜間の機能性も高級感も(そしてウインカー点灯まで)アップデートしているのだから念入りだ。

ヴェルファイア ZG(7人乗り)

第2世代トヨタセーフティセンスの採用でより安全で快適なミニバンに

 パワートレインはV6エンジンが全面的に設計変更された新タイプになり、ATを6速から8速に多段化。燃費もパワーフィールもよくなり、従来は非採用だったアイドリングストップが装着されたのも朗報だ。トータルで約14%も燃費がよくなっている。
 しかし、今回のマイナーチェンジにおける最大のトピックは安全システムの充実だろう。
 これまではレーダー式の「プリクラッシュセーフティシステム」が用意されていたが、マイナーチェンジを機にトヨタが先進予防安全装備の次なるステップとして新開発した「第2世代トヨタセーフティセンス」を初採用。減速可能速度が増しているほか、レーダーとカメラにより自転車の飛び出しや夜間の歩行者まで検知して自動ブレーキを働かせるのが自慢の世界最高水準の安全支援システムだ。さらにはドライバーアシストとして従来から採用の追従型クルーズコントロール(全速度域で停止保持までサポートする)に加え、高速道路では渋滞中も含めて車線の中央を維持するようにハンドル操作をサポートする機構の「LTA(レーントレーシングアシスト)」も組み込まれている。
 停止保持までサポートする追従型クルーズコントロールとLTAの組み合わせは、いわば日産の「プロパイロット」やスバルの「アイサイトツーリングアシスト」と同じ状態。ハンドルに手を添えて保持しないといけないしドライバーの運転操作も必要だから自動運転ではないが、高速道路においてアクセル/ブレーキ操作とステアリング操舵をおこなってくれる感覚は、自動運転時代がすぐ近くまで来ていることを予感させる。「第2世代トヨタセーフティセンス」の採用によって予防安全性が高まっただだけでなく、日ごろから高速道路ドライブもアシストしてくれるのが嬉しい。

車線維持機能によって高速道路の快適性は大幅に向上

 実際に高速道路でドライバーアシスト機能を試してみたところ、前を走るクルマの速度に合わせてアクセル/ブレーキ操作をおこなう追従クルーズコントロール機能は従来よりもドライバーの感覚に逆らわない加減速感が好印象。
 またステアリングアシストに関しては、他車種に採用されていた従来タイプの車線保持支援機能では車線からはみ出さないことを目的としていたため、アシストに頼ると車線内を軽く蛇行するような感覚でドライバーがしっかりハンドルを操舵し進路を定める必要があった。対して新採用のLTAでは車線認識が正確になり、ハンドルに手を添えているだけでしっかりと車線の真ん中をキープしてくれる。
 もちろん、横風や速度に対する道路の曲がり状況によってはアシストが対応できないなど完全にハンドル操作を自動化するほどまでは完ぺきではない。しかしかつては同様のシステムが「同一レーン自動運転」と呼ばれたほどドライバーがアクセル操作/ブレーキ操作に加えてある程度ハンドル操作も任せることができるので、楽をすることができるし、わき見などに起因するドライバーのハンドル操作ミスによる事故も減るだろう。ロングドライブをした際には、目的地に着いた際の疲労度が全く違うはずだ。
 また、渋滞時のアクセル(停止からの発進を除く)/ブレーキとハンドル操作を任せられるから、渋滞が苦痛でなくなるのもこのシステムの絶大なメリット。ちなみに渋滞など車間距離が詰まっている状態ではカメラが車線を読み取れないので、前を走る車両の動きを認識し、そのクルマと同じ場所を走る仕掛けになっている。

執念すら感じさせる内容の充実したマイナーチェンジ

 こうして先進性という部分が大きくアップデートされた新型。しかし、今回の改良の本質はそういった目立つ部分だけではない。むしろ目に見えない部分こそが肝だと思うし、エンジニアの情熱を感じることができる。
 たとえば、ボディ。鉄板と鉄板の結合を強固にする構造用接着材の使用範囲を拡大し、フロントウインドウをはじめ前後クォーターガラスなど“開かない窓”すべての張り付けに高剛性接着剤を採用。高まったボディ剛性にあわせてサスペンションも再チューニング。サスペンションは大きくわけて2タイプ(あとは仕様により重量に合わせて微調整している)があり、通常モデル用とより乗り心地を重視したエグゼクティブ用を設定している。いずれも高めたボディ剛性のおかげで従来よりもしなやかな方向に味付けされ、新開発のバルブを組み合わせて微低速からしっかり減衰するショックアブソーバーの採用も快適性の向上に効いている。

 快適性の向上。それが新しいアルファード/ヴェルファイアのキーワードと言えるだろう。そのために入った改良の手は驚くほど細かく、わかりやすい部分ではシート表皮がベーシックグレードでも従来の上級グレード用ファブリックに格上げされ、合成表皮は表面温度の変化を抑える処理が施された。それだけでなく従来なかった1列目のベンチレーション機能を設定しているのだが、つまりはシートの内部まで設計を変えているのだから徹底している。
 また、エグゼクティブパワーシート車とエグゼクティブラウンジは2列目シートレールの板厚をアップしている。これは2列目に座っている人に伝わる走行中やアイドリング中の微振動を緩和する対策なのだが、マイナーチェンジでそこまでするのか?と驚くばかりだ。
 そのほかにも静粛性をアップするために遮音材を追加しドアミラーの形状を変更(見てもわからないレベル)するなど、快適性を突き詰めるための改良は数え上げればきりがない。

 クルマを育てる。
 言葉で言ってしまえば簡単だが、ここまで細かく、そして数多くの改良を施すマイナーチェンジはそうお目にかかれるものではない。売れているから手を掛けられるといってしまえばそれまでなのだが、アルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジからは快適性への執念、そして多くの情熱と進化の手を止めない意地が感じられた。

トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジ(7人乗り・8速AT)
全長×全幅×全高 4945×1850×1935mm
ホイールベース 3000mm
トレッド前/後 1600/1605mm
車両重量 2150kg
エンジン V型6気筒DOHC
総排気量 3456cc
最高出力 301ps/6600rpm
最大トルク 36.8kgm/4600-4700rpm
JC08モード燃費 10.6km/L
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 225/60R17

販売価格 335万4480円~735万8040円(全グレード)


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グーネットマガジン編集部

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