新車試乗レポート
更新日:2018.11.29 / 掲載日:2018.02.22

最新メカニズム大解剖 SUZUKI スペーシア

軽初の安全装備群を引っさげてライバルを追撃

豊富な安全装備。HUDは普通車も越える内容
 N-BOXやタントなどの強豪がしのぎを削る軽スーパーハイトワゴンで、存在感の薄かったスズキのスペーシア。その名称からしても、広い空間を提供するワゴンなのだが、今回のモデルチェンジでは、全高を50mmも拡大してライバルに見劣りしないサイズ感と室内のスペースを確保した。スペーシアカスタムは、まるで軽版のアルファードを狙ったようないかついメッキグリルが目を引く。
 エンジンは、スペーシアがR06Aの自然吸気で、カスタムではターボもラインナップする。さらに、マイルドハイブリッドは10秒間のクリープ走行も実現している。CVTはスズキ自慢の副変速機ではなく、アイシンワーナー(アイシンAW)の通常タイプに変更。CVT単体で約5kgの軽量化と副変速機付きにある加速中の回転変化や違和感をなくし、スムーズな走行感を得ている。
 軽自動車初の後退時のブレーキサポートを搭載するなど先進安全装備も積極的に搭載している。さらにフロントスクリーン投影型のヘッドアップディスプレイも軽初で搭載する。これは、コストも重要な軽としてはかなり力が入っていて表示項目が過剰なくらい。ドア開け状態や瞬間燃費計、さらにはエアコンの操作状態まで表示され、普通車以上の内容となっている。

SPEC
Spacia HYBLID X 2WD(型式:スズキ・DAA-MK53S)
全長×全幅×全高(mm):3395×1475×1785 ホイールベース: 2460mm トレッド(前/後mm):1295/1300 最低地上高:150mm 車両重量:870kg 乗車定員:4名 ●エンジン 型式R06A 水冷直列3気筒DOHC12バルブ 吸排気VVT 総排気量:658cc ボア×ストローク:64.0×68.2(mm) 圧縮比:11.5  最高出力:38kW〈52PS〉/6500rpm  最大トルク:60N・m〈6.1kgf・m〉/4000rpm EPI電子燃料噴射 ●電動部 モーター型式:WA005A モーター種類:直流同期電動機 最高出力2.3kW<3.1PS>/1000rpm 最大トルク50N・m<5.1kg・m>/100rpm 動力用主電池 種類:リチウムイオン電池 ●CVT(ロックアップ付) 変速比(前進//R): 2.386~0.426//2.505 最終減速比:6.512(一次減速含む) ●ラック&ピニオン マクファーソンストラット式/トーションビーム ブレーキ:(前/後)ディスク/L&T 最小回転半径:4.4m タイヤサイズ:155/65R14 75S ●レギュラーガソリン 27L ●JC08燃費:28.2km/L

Spaciaカスタム XSターボ 2WD
●エンジン 型式R06A 水冷直列3気筒DOHC12バルブ 吸気VVT 圧縮比:9.1  最高出力:47kW〈64PS〉/6000rpm  最大トルク: 98N・m〈10kgf・m〉/3000rpm 車両重量:900kg タイヤ:165/55R15 75V JC08燃費:25.6km/L

  • やさしい曲線が主体の標準形スペーシアに対し、大型グリルとメッキパーツの多用でいかついスペーシアカスタム。内装でもレザーを多用するゴージャスな仕立て。

  • 標準車のインテリア。Aピラーを細くドアミラー位置を下げて視界を広げた。左側にはサイドアンダーミラーを設置。メーターのクリアカバーの映り込みが目立つのは改善してほしい。

ブレーキサポート付きの誤後進抑制装置で安心感アップ

  • デュアルセンサーブレーキサポートは全グレード標準装備。認識装置は、コンチネンタル製の単眼カメラと赤外レーザーレーダー。

  • 軽自動車初の後退時ブレーキサポートを全グレード標準装備。リヤバンパーに4つのソナーがあり、シフトやペダル操作ミスでの後方衝突を回避。バック時に危険と判定されたときは自動ブレーキが作動する。

  • 超音波式なので店舗のガラスも検知可能。車線逸脱警報のほかハイビームアシストや先行車発進お知らせ機能、全方位モニターパッケージ車は進入禁止の標識認識機能も付く。

表示項目が多い、軽初のHUD

  • 軽自動車初のフロントスクリーン投影型ヘッドアップディスプレイ(全方位モニターカメラパッケージ車)。

  • 表示項目がとても多く、シフトポジション、タコメーター、ナビゲーションの交差点案内のほか、エアコン操作(風量、温度)まで表示。

Fスクリーン上部も衝撃吸収構造

歩行者への傷害を軽減する構造。バンパー内は脚部ダメージを軽減。フロントフードやフェンダー、ワイパー部のカウルトップパネルも変形しやすくしてある。さらにフロントガラス上部ではルーフ側にも変形。

全高を増し室内スペース大幅拡大

  • 全高を先代比+50mm、室内高を35mm拡大。ホイールベースも+35mmの2260mm、室内幅も+25mmの1345mmで、特に前席の左右間を拡大している。

  • リヤバンパー部には、自転車を載せやすくするステップを設けてある。ハッチ内側上部には後方確認の視界支援ミラー。

最長10秒のモータークリープ走行を実現するマイルドハイブリッド

  • WA05A型のISGを搭載するが、クリープ走行を実現したためベルトのテンショナーをオート式2つとしている。

  • これは駆動方向がエンジンからとISGからで逆転したときでも適切な張りを維持しつつスリップを防ぐためだが、かなり贅沢な装備と言える。なおNAエンジンでもエアガイドを付けて冷却性能を上げている。

CVTは副変速機なしのアイシン製

  • スズキのCVTといえば副変速機付きというイメージだったが、スペーシアでは通常型が採用されサプライヤーはアイシンAWになった。5kgの軽量化と滑らかさを重視。

パワースイッチでアクセル特性を変える

  • スズキ車初のパワーモードスイッチ。エンジンとCVTの制御を変えてISGのモーターアシストでトルクアップを図り、常用域の加速を力強くする。

LiBは助手席下へ搭載

  • マイルドハイブリッドのリチウムイオンバッテリーは助手席下に搭載。

  • 座面下のボックスで買い物や小物の収納が便利にできるのは従来と同じ。

後席左右独立スライド

  • リヤシートは左右で独立スライドができ、40mmのスライド量がある。背もたれはリヤハッチ側からも倒せるよう、ショルダー部に操作レバーがつき、倒すとフラットになる。

ルーフライニングにサーキュレーター搭載で温度ムラをなくす

  • ハイトワゴンで起こりやすいエアコンの温度ムラを解消するスリムサーキュレーター。前から空気を吸い、細いスリットで後方への気流を作り天井付近の空気に流れを有む。

  • ルーバーの角度は変更可能。これは、他のクルマにも付けたくなるような良装備。

Test&Impression

マイルドハイブリッドの制御が良くなった
 スタータージェネレーターでクリープ走行を実現する機構はワゴンRに採用されているが、スペーシアではかなり熟成したと感じる。ワゴンRでは、CVTあたりからのヒューン音が目立っていたし、エンジン停止から発進時のつながりにギクシャク感が出たが、スペーシアではとても自然な動きをしている。CVTの変更も関係するのかは分からないが、より自然な感覚になったのはウレシイ。
 今回から装備されたパワースイッチは、アクセル踏み込みの中間域の特性を変えるもので、オンにすると少しの踏み込みでもレスポンスの良さが感じられる。特にターボだと、足をちょっと載せている感じで加速できる。同乗者がいる時はオフのほうがいいかもしれないが、1人なら気持ち良い走りになる。
 フル加速性能では、7.2前後のワイドなレシオカバレッジを誇っていた副変速機付きCVTに比べると、今回は5.6なので穏やかな感じ。副変速機付きの途中でエンジン回転数が変わる独特のフィールがないので自然にはなっているが加速タイムでは従来より遅くなっていると思われる。それと、遮音対策もかなり入念になっているが、ライバルも相当にレベルアップしているため、強い加速Gやエンジン回転が高い時のノイズは、もう1段下げてもよいのではないかと思う。

誤発進抑制機能との関連か、アクセルベタ踏みではスロットルが開くまでに明確なタイムラグがある。NAでは、最初のトルコン域で加速Gのピーク(0.35G)があるが、すぐに0.2G程度に落ち着く。80km /hを超えると加速は鈍くなるが、市街地走行では過不足ないレベルのパワー。

ターボはコンパクトカーに迫る加速力がありピークで0.4Gは出るし、トルクがあるので出だしの勢いが持続する。従来CVTの回転変化もない。しかし、先代やワゴンRなどと比べると、大分おとなしい感じがする。CVTの2段変速がなくレシオカバレッジが狭くなった影響もありそうだ。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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