新車試乗レポート
更新日:2018.11.24 / 掲載日:2017.12.08
【試乗レポート】まさにプロ仕様! 日本に帰ってきたハイラックスは強面だけどフレンドリー

文と写真●ユニット・コンパス
プロ仕様、こんな言葉の響きに弱いひとも多いはず。たとえ自分が使いきれないとしても、ハイクオリティだったり、高機能だったりするアイテムや用品を手に入れることは単純にワクワクする。トヨタが久しぶりに日本市場で販売するハイラックスはまさにそんなクルマだ。
ハイラックスは、トヨタが1968年から販売している商用トラックで、現在ではワールドワイドに販売されている主力モデルのひとつ。これまでの世界累計販売台数は約1730万台を数える。車名は「High」、「Luxury」を組み合わせた造語で、商用車の枠を超えた快適性を備えるモデルというコンセプトからきている。2004年に登場した7代目は、新興国向けだったこともあり日本市場から一時的にハイラックスは姿を消すことになったが、既存ユーザーの代替需要を鑑み、ひさしぶりに国内向けにもハイラックスが販売されることになった。
本格的な悪路でもクルマのサポートで安全にクリア

実車と対面して、国際派であることを改めて実感したのがボディサイズとデザイン。約5.3mもの全長もど迫力なら、その顔つきも堂々たるもの。ユーザーの使用状況をリサーチし、過酷な使用環境でも耐えうるように徹底的に鍛え上げたというタフさをアピールするべくデザインもマッシブそのもの。そして、そのマッチョさが見せかけではないことを示すべく、試乗会場には悪路走破性を実際に体験できるコースまで設営されていた。
大小の丸太を並べてつくられたコースは、普通のクルマならば腹下をこすって動けなくなるような段差なのだが、ハイラックスはこともなげにクリアしているのだ。あくまでも熟練したインストラクターによる実演なのだろうと思っていたら、我々メディアも運転するのだという。聞けば、ハイラックスに搭載された運転アシスト機能「アクティブトラクションコントロール」を活用することで、特別なテクニックを必要とすることなく、コースはクリアできるのだとか。これはタイヤが空転したとしても、それを車両が感知して自動的にブレーキをかけ、残りのタイヤに駆動力を伝えてクルマを脱出させてくれるシステム。さらに、後輪左右を直結させるデフロック機能や上り坂で車両がずり下がるのを防ぐ「ヒルアシストコントロール」、下り坂で姿勢を安定させる「ダウンヒルアシストコントロール」も用意されている。帰ってきたハイラックスは、タフなだけでなく、ユーザーフレンドリーでもあるというわけだ。
想像以上に快適だった室内空間

プロ機としての実力の高さをしっかりと体験した後に、いよいよ一般道での試乗へと移る。悪路体験のときは緊張のせいか気がつかなかったが、室内の装備が想像以上に充実しているし、シートの感触もやわらかくて快適。質感は商用車テイストだが、ステアリングの操作力も普通の乗用車と変わらない。さらに視界と見切りがいいので、取りまわしにもそれほど気を使わずに済む。そうなるとゲンキンなもので、俄然運転が楽しくなってきた。
強面なのに走らせるとやさしい側面を見せる

プラド用をベースに2.4L化した直4ディーゼルターボエンジンは、走り出しからもりもりと力を発揮してくれて最新ユニットらしく高速域までスムーズにパワーを発揮。排出ガス浄化装置や尿素SCRシステムによって厳しい環境基準もしっかりとクリアされており、燃費性能も11.8km/L(JC08モード)と立派だ。さらに嬉しいことに、乗り心地も想像以上にソフトタッチで、トラックという先入観を裏切る快適さだった。日本仕様として販売されるのは後席のあるダブルキャブ仕様だが、これならレジャー用途として十分使えるだろう。なお、先進安全機能として「プリクラッシュセーフティシステム」や「レーンディパーチャーアラート」などを装備するのもポイントが高い。
シティ派SUVへのアンチテーゼとして

今回は試乗ということで、広大で最大積載量500kgという本格的な積載能力を備えるデッキ(荷台)を活用することはなかったが、使い道を空想しているだけで楽しくなってくる。価格はベーシックな「X」で326万7000円からというハイラックス。全長だけでなく「1ナンバー」となるなど個人所有のハードルは高いが、だからこそ乗りこなしているひとが格好よく見えるのは間違いない。人気のSUVに対するオルタナティブとして、面白い選択肢が登場した。
トヨタ ハイラックス Z(6速AT)
全長×全幅×全高 5335×1855×1800mm
ホイールベース 3085mm
トレッド前/後 1535/1550mm
車両重量 2080kg
エンジン 直列4気筒ディーゼルターボ
総排気量 2393cc
最高出力 150ps/3400rpm
最大トルク 40.8kgm/1600-2000rpm
JC08モード燃費 11.8km/L
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/リーフスプリング
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 265/65R17
販売価格 326万7000円~374万2200円(全グレード)