新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.08.03
ハリアーがマイナーチェンジでさらに上質に。追加されたターボモデルの実力もチェック!

文●工藤貴宏 写真●川崎泰輝
2017年6月、ハリアーが大幅なマイナーチェンジを受けた。そのポイントは3つ。「Toyota Safety Sense P」をはじめとする先進装備の充実。2.0L直噴ターボエンジンの新搭載。そしてナビ画面の大型化やプレミアムナッパレザーの設定などインテリアのグレードアップだ。
ハリアーは日本市場のために開発された日本専用車種。しかし車体構造を「レクサスNX」や海外向けモデルである「RAV4」と共用する隠れ兄弟車であり、そのうち日本のトヨタブランドで販売されるのがハリアーとなっている。
とはいえスタイリングはレクサスNXともRAV4とも異なる「ハリアー」だけのオリジナル。グリルで左右を繋ぐヘッドライトや歴代ハリアーとの血の繋がりを感じるCピラーのデザインなどが特徴である。
インテリアを見ると、ハリアーの特徴はラグジュアリーな雰囲気が強調されていること。たとえばトヨタ車としてはじめてパネルにガラスを用いたナビを中心としたインパネは、ナビの周囲を光沢のあるブラックパネルで囲んで洗練された上質感あふれる仕上げ。さらにはダッシュボードを風合いのいい革調の仕立てにするなど、欧州プレミアムブランドのようなクオリティの高い仕上がりは、乗るたびに上質さを実感できる。

PROGRESS “Metal and Leather Package”/PROGRESS(ターボ車)
ボディカラーはホワイトパールクリスタルシャイン

今回のマイナーチェンジで上質感がさらに引き上げられたのは、上質感こそがハリアー人気の需要なポイントと開発陣が認識しているからに他ならない。ナビのディスプレイは8.0インチから9.2インチに大型化され、シフトレバー周辺にヘアライン加飾を施した本物のアルミパネルを用意し、シート表皮に柔らかい肌触りが自慢のプレミアムナッパ本革を設定。シートには身体周辺の空気を循環させてムレを防ぐベンチレーション機能も追加された。プレス向け資料の言葉を借りると「“本物感”から“本物”へ」が上質感に関する今回の変更だ。お世辞抜きに、この価格帯でここまでプレミアムな雰囲気を作り上げた内装は立派だ。
また、フロントバンパーやテールランプのデザインが変更されたほか、エクステリアにもいくつかの新デバイスが追加された。たとえば暗い場所での乗降時に足元を照らすドアミラー足元照明は、ハリアーのエンブレムが映し出されるように進化。「たったこれだけで」とボク自身も驚くのだが、実際に味わうと、びっくりするくらい満足感をくすぐる仕掛けである。
さらにウインカーは、16個のLEDが内側から外側へ流れるように光る、いわゆるシーケンシャル式を採用。実用性にとってはどうでもいいことだが、これがまた先んじて採用している高級輸入車みたいカッコイイ。
機能装備としては、乗降時に運転席が自動的に後方へスライドして乗り降りをサポートする機能、信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しても制動力を保持したままとなるホールド機能付きの電動パーキングブレーキ、インテリジェントクリアランスソナー機能の強化など便利な機能が追加されている。クリアランスソナーの機能強化に関しては、低速走行時になどアクセルを踏んでいない時にも作動、超音波センサーを8個に増やして左右折時やハンドルが切れている状態でも障害物が迫ると減速して衝突緩和が可能、またワイパー高速作動時にも働くようになるなど進化幅はかなりのものだ。細かい接触は駐車場などきわめて速度の低い状態で起きることが多いのだが、クリアランスソナーの進化によってより一層、極低速走行時の衝突回避能力が上がっている。
従来は上級仕様のみに設定したプリクラッシュセーフティシステムが、システムを刷新し「Toyota Safety Sense P」と進化したうえで全車に標準装備になったのは朗報だ。このシステムはトヨタ車に用意されている先進安全デバイスのうち「高機能版」で、自動ブレーキ機能の対車両は自車速度10km/h以上で作動。センサーとしてはレーダーと単眼カメラを組み合わせて活用し、歩行者も検知するからドライバーのミスをフォローして事故の加害者になるリスクを下げてくれる。
ハイビームのまま前走車や対向車に眩しくなる光だけをカットするアダプティブハイビーム、そして渋滞時は完全停止し停止保持までおこなう追従型のクルーズコントロールなど安全性を高める便利機能の搭載もトピックだ。

先代V6ユーザーには待望となるターボモデル

そんな上質感や機能のバージョンアップも大きなニュースだが、個人的にはもっとも気になったのがターボエンジンの新設定である。
「なぜ今、ターボを追加したのか?」そんな疑問に対する開発者の答えは明快だった。「先代や先々代に用意していたV6モデルに乗っていたユーザーさんから『動力性能が物足りない』という声が多かったのです。それに応えました。」というのだ。つまり、「ワイルド but フォーマル」というかつてのハリアーのキャッコピーを借りれば「ワイルド」が足りなかったというわけ。新搭載されたターボエンジンは、ハリアーのラインナップで最も強い加速をするユニットである。
実際に乗ってみても、2.0L自然吸気エンジンを積む従来モデルに対する加速の力強さは明らかだ。グングン加速する様子は運転を楽しくしてくれる。
たしかに、かつて3.0Lや3.5Lなど大排気量V6エンジンに乗っていたユーザーにすれば、2.0L自然吸気やハイブリッドでは加速感が物足りなかったことだろう。そんな人にはうってつけの新パワーユニットであることは約束する。
新設定されたターボエンジンの加速感が心地よかったのは、じつはエンジンのほかにもうひとつ理由がある。それがトランスミッションの違い。自然吸気エンジンが採用するCVT(無段変速)はエンジン回転数の上昇と速度上昇の関係に違和感があって、燃費はいいのだが運転好きにとっては加速にスッキリしない印象がある。いっぽうでターボ車には通常のトルコン式6速ATを採用している。エンジン回転数上昇と車速上昇の関係が一致するから、爽快感が強いのだ。運転好きなら、ターボを選ぶことを強く推奨しておく。
自然吸気、ハイブリッド、ターボ、それぞれのキャラクターが明確化した

ここでちょっと裏話をすると、ハリアーには今回初搭載となる2.0Lターボエンジンだが、じつは血縁関係の濃いレクサスNXには従来から用意されていたもの。レクサスNXが存在したおかげでこうしてハリアーにもターボが追加されたのだから、ハリアーを買おうとしていた人にとっては何ともラッキーだ。
ユニット自体はレクサスNX用もハリアー用も同じもの。ただしレクサスNXが238馬力なのに対してハリアーでは231馬力と出力が若干劣るのは排気系の違いによるもの(NXのほうがデュアルテールパイプで排気効率が良くパワーを出せる)。とはいえ卑屈になる必要はない。0-100km/h加速がNXの8.0秒に対してハリアーは7.6秒、40-70km/hの中間加速でもNXの3.8秒に対してハリアーは3.3秒と実際には速いのだから。その理由は、ベースモデル同士の比較で40kg軽い車両重量にある。
今回、久しぶりにハリアーに試乗して驚いたのは以前に比べてハンドリングが引き締まった印象だったこと。ターボモデルには車体前後に車体の微振動を減衰する「パフォーマンスダンパー」を組み込むなど車体安定性を向上しているのも理由にあるだろう。ひときわスポーティな、ドライバーが楽しめるハンドリングを身に付けていたのだ。これなら山道の運転も楽しめる。そんな味付けだった。
ボクも知らなかったのだが、ターボ以外の自然吸気エンジン車やハイブリッドモデルも、デビューから約1年後の改良でサスペンション設定を変更し、減衰を高めて車体の挙動を抑える方向のセッティングになっているのだという。以前試乗した時は「もう少し挙動に落ち着きが欲しい」と感じただけに、この変更は大歓迎である。
こうして自然吸気エンジン、ハイブリッド、そしてターボと3タイプのパワートレインが選べるようになったハリアー。パワートレイン選びの指針としては、パワフルな走りを味わいたいならターボ、燃費重視ならハイブリッド、コストパフォーマンス重視なら自然吸気エンジンがオススメだ。
グレード選びはナビを除き一通りの装備が備わる「プレミアム」が価格と装備のバランスがいい。ただしメーカーオプションのナビはオプション価格43万2000円と高額なので、装着するのならいっそのことナビを標準装備する「プログレス」まで手を伸ばすほうが満足度は高まるだろう。
【トヨタ ハリアー プログレス メタルアンドレザーパッケージ ターボ車2WD(6速AT)】
全長 4725mm
全幅 1835mm
全高 1690mm
ホイールベース 2660mm
重量 1700kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1998cc
最高出力 231ps/5200-5600rpm
最大トルク 35.7kgm/1650-4000rpm
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 235/55R18
販売価格 294万9480円~460万4040円(全グレード)