新車試乗レポート
更新日:2026.09.29 / 掲載日:2026.09.29
【BMW iX3 試乗】航続距離なんと906km! これは未来から来たBMWだ【工藤貴宏】

BMWが自社の歴史的な名称「ノイエ・クラッセ」を掲げる最新電気自動車シリーズの第1弾iX3を自動車ライターの工藤貴宏氏が試乗レビュー。プレミアムSUVとしての実力をチェックします。
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
iX3の注目すべき4つのポイント

BMWのSUVは“X”ではじまり、後につながる数字が車体サイズを示しています。もっとも小さいモデルが「X1」で、「X2」「X3」「X4」「X5」「X6」「X7」までラインナップ。奇数が一般的なプロポーションのSUVで、偶数モデルはリアウインドウを寝かせたクーペタイプのフォルムを持つSUVとなっているのは、BMW好きならきっとご存じでしょう。
そのなかでX3は、セダンで言うと「3シリーズ」に相当するポジション。いわゆる「Dセグメント」であり、昨今はグローバルでの販売面におけるBMWのトップセラーとなっています。そして車名に“i”がつくのはEV(電気自動車)。今回試乗した「iX3」は“X3のEVモデル”となるのです。
しかし、BMWにはiX3よりも小さなEVである「iX1」やiX3よりも大きなEVとして「iX5」などもありますが、それらとiX3にある大きな違いが実に興味深いところ。iX3だけはガソリン車と車体を共用していないのです(ほかはガソリン車と同じボディ)。
つまりiX3だけがEV専用設計というわけ。このセグメントだとEVモデルもマーケットが大きく、作り分けたほうが何かと効率がいいという事なのでしょう。
そんなiX3、注目すべきポイントは4つ。「スタイル」「先進性を感じるインテリア」「先進的な装備の数々」「そして国内EVナンバーワンの航続距離」です。
過去へのリスペクトを先進的にまとめ上げた新しいデザイン言語

まずはスタイル。はっきりいって、好みは分かれるでしょうね。顔つきは大胆で、これまでのBMWテイストとはかなり違います。
BMWはちょっと前にキドニーグリルと呼ばれる独特の形状のグリルを一部車種で超大型化して賛否両論となる大きな話題をまき起こしたばかりですが、iX3ではむしろ小型化。とはいえ、顔つきは相当な個性の強さです。
これはBMWの次世代モデルである「ノイエ・クラッセ」を象徴するデザインなのだとか。筆者は実は嫌いではありません。むしろ好きだったりして。最初は「えっ⁉」と思っても、少し時間が経てば多くの人は馴染めるのではないでしょうか。デザインは最初ではなく、時間が経ってからが勝負ですからね。
驚くほど未来的なインターフェース

インテリアも近未来さがハンパない。BMWはほんのちょっと前までコンサバティブなインテリアを貫いていましたが、それも今や昔の話。ダッシュボードまわりは、未来から来たのか?ってくらい先進的です。いや普通の感覚だと「先進的すぎる!」と言っていいかも。
ステアリングはSFアニメの操縦席から飛び出してきたような「これでスポーツ走行できるのか?」という形状(実際はハンドルを大きく回すのを繰り返すような峠道でなければ気にならない)だし、17.9インチのセンターディスプレイは平行四辺形で奇抜すぎ(ちなみに右ハンドルと左ハンドルではしっかり左右が反転している)。

またドライバーの正面からメーターを廃止、代わりにフロントウインドウ下へ約110cmに渡って左右をつなぐ超横長ディスプレイを組み込んでいるのも斬新。これは8つの区画に分けられていて、中央から助手席前にかけての6区画は表示メニューを選択可能。いっぽう速度などが示される運転席前は、ヘッドアップディスプレイのような感覚で走行中も見やすいので好印象ですね。これはこれで実用的だし、悪くないと感じました。

ここまで先進的になったのは「電気自動車だから」というのもあるでしょうけれど、「ここまで大胆にやらないと中国勢に勝てない」とか「こういうのについてこられる人だけに買ってほしい」という狙いがあるのかもしれません。BMWにだって変化は必要で、変化しないと「単なる古いブランド」に陥るリスクはありますからね。

「先進的な装備」のなかで注目は、車両に標準で組み込まれていて今年11月以降の無線通信によるアップデートで使えるようになるという「ハイウェイ・アシスト」と呼ぶ機能。これは高速道路における手放し運転機能で、これまでもBMWには多くのモデルに高速道路の手放し運転機能が搭載済みです。しかし従来は「高速道路の渋滞時のみ(上限60km/h)」だったのに対し、iX3に搭載するのは高速道路のすべての車速域(上限130km/h)において手放しできるという先進的なもので実用性はグッと高まります。同様の機能はすでに日産、トヨタ、ホンダには搭載車が設定されていますが、高速道路移動がとても楽になる便利機能ですね。筆者は高速道路を使う機会が多いのでかなり惹かれる機能です。
航続距離を問題としない最長906kmのゆとり

EVとしての性能における最大のトピックは航続距離。なんと最長「906km」も走り、これは日本で販売されているEVの中で最長。これだけ走れば不満はないだろうし、実際にここまでの必要なんてないわけですが、長距離移動時の余裕が増すのがいいですよね。また、日常のブレーキは、その98%を従来の摩擦させるブレーキではなく回生ブレーキでまかなえたりと効率も高まっています。
そんなiX3ですが、なによりお伝えしたいのは「走り出せばBMW」ってことでしょう。デザインも大胆だし、インテリアもこれまでのBMWらしさは感じられないわけですが、乗ればしっかりと気持ちよくて、BMWらしいんですよね。まず加速は単に速いだけではなくて伸び感やそれに伴う高揚感が普通のEVよりも感じられるのが心地いい。
それからコーナリングも、ハンドルを切り始めたときのスッと曲がる感覚はやっぱりBMWらしいあの味。EVになっても、SUVであっても、やっぱりその走りの血が脈々と受け継がれているのを実感するんです。「ああ、この瞬間がBMWだね」と。
航続距離を心配しないで乗れる電気SUVが欲しい人にオススメ

というわけでこのiX3がどんな人に向いているかと言うと、「長距離を走れるEVに乗りたい」とか「最先端のEVに乗りたい!」という人にまずおススメです。あと「未来的なインテリアが欲しい」という人にも。
だけど、それだけじゃなくて「やっぱりBMWの走りのテイストが楽しいよね、EVでも」という人に対してもしっかりと裏切らないとお伝えしておきましょう。ちなみに駆動方式は4WDですが、基本は後輪駆動で必要に応じてフロントでも駆動するタイプです。
BMW iX3新車価格帯:982万円〜1031万円(全グレード)