新車試乗レポート
更新日:2026.09.29 / 掲載日:2026.09.29
【日産 エルグランド 試乗】新しい高級ミニバンが誕生した【九島辰也】

フルサイズミニバン市場はそれほど広がりがあるとは考えにくい。法人需要もそうだし、個人向けもマーケットは限られる。とはいえ、確かにニーズはあり、そこにトヨタが応えているのはご承知のとおり。羽田空港や夜の銀座に彼らの黒いヴェルファイアやアルファード、レクサスLMが連なっている。
そこを狙って登場したのが新型エルグランドだ。2010年にリリースした3世代目をマイチェンさせながら延命させてきたが、今回は4代目としてフルモデルチェンジした。初代、2代目と人気だっただけに、チカラの入った刷新となる。
日産の技術すべてを注ぎ込んだフラッグシップミニバン

テーマは「デザイン」、「居住性」、「走り」で、ロングドライブが楽しくなるプレミアムツーリングミニバンとして開発が進められた。中でも目玉は「走り」に違いない。第3世代となるe-POWERとe-4ORCE、IDS(インテリジェント・ダイナミック・サスペンション)が初めて同時に搭載された。要するに日産の最新技術が詰め込まれたということになる。もちろん、プロパイロット/プロパイロット2も健在だ。

では、第3世代のe-POWERだが、特徴はその構造にある。エンジン、モーター、発電機、インバーター、減速機/増速機の5つのパーツを動力ユニットとしてまとめている。それにより、動力性能は当然のこと静粛性と燃費を高めたわけだ。エンジンは1.5リッターのZR15DDTe。発電用に特化した仕様となる。よって、100%モーター駆動であることに変わりはない。
e-4ORCEに関しては従来のモーターとブレーキの統合制御に加え、リアモーターのトルクを積極的に活用するようにした。ステアリング操舵に対してFR的な動きを加えようという算段だ。運転好きにとってハンドリングが楽しくなるようなセッティングになる。さらに言えば、左右の動きに対してはコーナーで内側のブレーキをつまむ働きを加えることで、コーナリング性能を高めている。

ユニークなのは、このe-4ORCEが乗り心地の向上にも関わる点。車輪速センサーとVDCセンサーを使って路面からの入力を読み取り、100分の1秒単位でカウンタートルクを出す。しかも2モーターなので前後独立してそれを行うというから興味深い。この辺はIDSと合わせて、プレミアムな乗り味を提供することだろう。IDSは電子制御の連続可変ダンパーが各センサーを用いて4つのタイヤの減衰力を瞬時に調整する。細かい入力に対しては減衰力を下げて振動を和らげ、大きくうねったような入力には減衰力を高めてボディの揺れを抑える働きをする。なるほど、ホイールベースの長いエルグランドには効き目がありそうだ。
「e-POWER」「e-4ORCE」「IDS」が三位一体となった快適な走り

では実際に乗った印象へ移ろう。まず、目の前で対峙して感じたのはその迫力。フルサイズミニバンの大きな塊は存在感が大きい。プレゼンテーションで“威風堂々”というワードを使っていたが、まさにそんな感じだ。四隅に広がるようなシルエットがそれを強調する。ただ、その中でもDピラーを逆スラントにするなど空力を考慮したデザインが見受けられたのはおもしろい。

乗り込んで運転席に座ると視線が高いことに気づく。先代エルグランド、セレナよりも意図的にヒップポイントを上げて周りを見下ろすようにした。それでいて、走り出すと、じつにコントローラブルで扱いやすい。動き出しはスムーズでステアリングは正確だ。試しに細い道に入ってみたが臆することはなかった。小さな舵角で思った通りにクルマを動かせる。それに資料に最小回転半径5.8mと書いてあったが、その恩恵はありそうだ。



高速道路ではまさに大海原を滑るクルーザーのように走った。乗り心地はゆったりしていて快適。ロングドライブでの身体への負担は少なさそうだ。それでいてアクセル操作に対し瞬時に加速するのが嬉しい。追い越し加速に不満はなく、ストレスフリーで高速巡航ができる。こうした高速域でのモーターの加速は素晴らしい。モーター駆動への信頼性が高まる。

高速道路同様ワインディングでも好印象。前述した通りステアリングは正確なので、狙ったラインへスッと切れる。でもってそのままこの巨大なボディがキャビンをフラットにした状態で追従するのだからすごい。まさにe-POWERとe-4ORCE、IDSが三位一体となってクルマを走らせているといった印象だ。箱根のワインディングをクルマが小さく感じるほど素早く反応し、軽快に走る。
日産の力の入れようが伝わる意欲作だ

と言ったのが新型エルグランドとのファーストコンタクト。冒頭に記したようにフルサイズミニバンは大きなマーケットではないが、このクルマの存在はアピールできそうだ。それに日産の最新技術がすべて搭載されているのは事実。チカラの入った新型車であることを確信した。
日産 エルグランド新車価格帯:689万7000円〜869万8800円(全グレード)
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス