新車試乗レポート
更新日:2026.09.22 / 掲載日:2026.09.22
ロードスターに感じた無限の可能性【九島辰也】

最近、クルマのモデルサイクルが長くなっているような気がします。かつての日本車は6年で1サイクル。なので、3年でマイナーチェンするものが多くありました。ただ、先だって三菱デリカD:5が話題になったように、8年や9年、10年を軽く超えるものも見受けられます。もちろん、カーメーカーによって規模や資金力が異なりますから、それぞれのお家事情が関係します。小規模メーカーであればモデルサイクルを長くとらなければ、開発費を回収できませんし、次から次へと新型車を開発する原資はありません。
ですが、アイデア次第でそれはどうにでもできます。今回ここで紹介するマツダロードスターもそんな一台。現行型NDの息は長く、今年も商品改良の手が加えられました。

具体的には初代NAが9年、2代目NBが8年、3代目NCが11年、そして現行型も今年11年目を迎えました。どれも通常のモデルより長寿と言っていいでしょう。人気の高さが伺えます。ただ、実際の販売台数はというと、これが意外とバラけています。NBは初年こそ「1万台」を稼ぎますが2年目以降「5000台/年」以下で右肩下がり、NCは11年の間「5000台/年」以上販売されたことは一度もありませんでした。印象的なのはやはりNAでしょう。なんと発売2年目には歴代一位の「2万5000台」を記録します。その後も6年目まで「1万台/年」以上あったのですから驚きです。
それじゃNDはというと、こちらもユニークな動向を見せています。1年目の「8418台」をピークにした後は右肩下がりでしたが、なんと8年目と10年目に「9500台/年」以上を稼ぎ、昨年はついに「1万台」を突破しました。つまり、発売以来最高台数を売り上げたのです。こんなクルマそうそうあるものじゃありませんよね。
この背景には、20歳代のユーザーが増えている傾向をマツダは挙げています。その比率はそもそも全体の10~15%だったものが、2022年と2024年、それと昨年は20%を超えました。しかも目立つのは女性比率。じわじわと人気が高まっています。
といった状態の中で、今年6月に発表された商品改良ですから、マツダとしても期待が膨らまないわけはありません。特別仕様車「PS(ピュア・スポーツ)」を追加し、意気揚々です。

このモデルはソフトトップはインシュレーター付きでクロスがグレーに、RAYS製16インチを履いたり、ブレンボ製ブレーキやビルシュタイン製ダンパーを装着します。つまり、専用チューニングした足回りで、よりスポーティさを演出したわけです。確かに、それは試乗してすぐにわかりました。引き締まった足は低速で硬く感じられますが、速度域が高いワインディングではリアがしっかり路面をホールドし、トラクションをかけます。ステアリング操作に対する応答性が上がったような感覚です。
そのステアリングのセッティングも今回手を入れています。PSに限った話ではありませんが、切りはじめ少しするとパワステが重く感じられます。で、そこから手ごたえを強くする。言うなれば操作感が強まった感覚でしょう。センター付近はダイレクト感がありますから、ここでもスポーティさが強調されました。
と言った改良型ですが、取り上げたいのはPSに用意されたジンクグリーンです。これまでにない雰囲気のカラーリングがNDの存在感を高めます。

マツダはこれを「久しぶりのグリーンの復活」と宣言しています。ですが、この色の魅力はそこではないと感じました。かっこよさは工業製品としての魅力であり、言葉を換えるなら「プロスペック」と言ったところです。なぜならそれは飛行機などアルミ製品を保護するプライマーから発想を受けているからです。クルマで言えばサフェーサー。塗装する前の下地に塗る粘土色のやつです。90年代アメリカ車のピックアップトラックをベースに「サフェーサー仕上げ」みたいなブームを作ったことがあります。シボレーC/KやフォードF150、ダッジラム、同ダコタなどをベースにしたカスタムです。サフェーサーは作業の途中段階ですから「仕上げ」というのは矛盾していますが、とにかくカッコよかった。それが男心に刺さったわけです。
個人的にジンクグリーンはそれに通じるものを感じました。「プロスペック」や「ミルスペック」を想像させます。それがたまたまグリーンに近い色だったということでしょう。なので「グリーンの復活」とはニュアンスが異なる気がします。
いずれにせよジンクグリーンは大好評で、全体の30%を占めているそうですからデザイナーの勝利でしょう。個人的にも大好きで、見ているだけでワクワクします。ガレージに納めたい一台です。
なんてことを鑑みるとロードスターにはまだポテンシャルを感じます。ボディカラーで着飾るなら可能性は無限にあるでしょう。これからも魅力的な仕様車が登場することを期待しちゃいます。
文●九島辰也 写真●マツダ