新車試乗レポート
更新日:2026.08.20 / 掲載日:2026.08.20
色々な意味で興味津々なBYD ラッコ。実車はどうだったか【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
海外メーカー初となる日本の軽自動車規格のクルマが誕生した。BYDが送り込んだラッコ(RACCO)がそれで、7月28日に日本デビューを果たした。
日本市場をリサーチして作られた独自の軽自動車EV

特徴は……言わずもがなの日本専用設計。X-PACKアーキテクチャーと呼ばれる統合型EV技術で形成される。ボディは当然のこと、足回りや制御システムもこのクルマのために新設計した。
では、海外には無いこのガラパゴス的規格を彼らはどう学んだのか。まずは日本で軽自動車がどのように使われているかを調査。ユーザーをヒアリングして何が人気なのかを掴む。結果、スーパートールのハイトワゴンであることと両側スライドドアの装備を必須とした。それからディーラーへ足を運んで実車を研究。最初の頃はレンタカーを借りて走り込んだそうだ。メーカーは主にスズキとダイハツ。その辺のハイトワゴンを想像すれば、どのモデルがベンチマークになったのかはお分かりいただけるだろう。その意味では激戦区へのチャレンジとなる。

装備以外では走りへの希望も取り入れている。それは、横からの風でもふらつかない安定した走り。そこを鑑みサスペンションは意識的に少し硬めのセッティングにしたそうだ。
ちなみに、このプラットフォームを使ったモデル展開はないのかと質問してみた。すると、まずはラッコが売れなくてはあり得ないとしながらも、マーケットの反応を見てからと言う返答だった。となれば、軽自動車枠のSUVやリアをベッドにしたトラックなんかも想像できる。国産メーカーの発想にはないユニークなモデルが登場するのは歓迎だ。もちろん、今回の開発の経験からヨーロッパ向けのマイクロカーなんてのもありうるだろう。
ではラッコの詳細だが、パワーソースは出力違いの2種類が用意される。エントリーの“200”と上級の“300Plus” &“ 300Premium”だ。前者のバッテリー容量と航続距離は22.4kWh/210km、後者は35.8kWh/320kmとなる。
彼ら的にはウィークデーの通勤や買い物から週末のプチ旅行までフルカバーする内容だ。技術面ではモーターとインバーター、フロントアクスルを一体化したコンパクトなe-アクスルとX-PACKアーキテクチャーが新しい。軽自動車規格を徹底的に研究したことで、ハードウェアをギュッと凝縮させスペース効率を稼いでいる。そもそもバッテリーメーカーのBYDとしては腕の見せどころだ。
課題は乗り心地にアリ

実際にクルマに触れた印象をお話ししよう。まず乗り込んで感じたのは広さ。スーパートールだけありキャビンはとにかく広い。このサイズのパッケージングを研究した成果は出ているようだ。パワーソースも悪くない。アクセルの踏みしろでしっかりモーターを回しタイヤを前へ押し出す。操作に対しピーキーでないのはグッド。内燃機関からの乗り換えに違和感はなさそうだ。それに軽量ボディと相まって加速が思いのほかいいことを付け加えておこう。



といった走りの中で唯一気になったのが乗り心地。サスペンションを硬めにセッティングしたとはいえ、少し入力がダイレクト過ぎる。特に舗装の悪い状態だとバタバタするのは否めない。加速フィーリングがいい分少し勿体無いと感じた。最近はトーションビームでも乗り味がよくなっているのでその辺を研究するといいだろう。国産メーカーもそうだし、VWあたりがそこら辺のノウハウを習得している。

乗り味に関連して気になったのはタイヤだ。サイズは165/65R15と特に問題はないが、サイルン(SAILUN)という聞いたことのない中国製タイヤを装着していた。調べるとリーズナブルさが売りで、あらゆるカテゴリーにタイヤを提供していることがわかった。きっとコストとのバランスでこうなったのだろう。
ただ、実際に担当者に話を聞くと中国製タイヤを選ぶ理由はわからなくないと思えた。というのも、軽自動車用の日本製タイヤは中国国内で製造していないからだ。つまり、日本製タイヤを使おうとすると輸入品になってしまいコストがアップしてしまう。それもあってサイルンタイヤを採用したということだ。もちろん、BYD的には社内規定テストを通ったパフォーマンスに問題はないタイヤと結論付けている。



保証や残価設定などプロダクト以外の努力も
以上がラッコのファーストインプレッション。今回の試乗では乗り心地以外はかなり良かった。BEVだし初の軽自動車としては悪くないだろう。
さらにいえば、6年/15万キロの新車保証や5年で50%を据え置く残価据置型ローンなどを用意しているらしい。詳しくはディーラーでチェックしてもらうにせよ、このサービスは勝負できそうだ。それにCMキャラクターに広瀬アリスを起用するなどインパクトがある。果たして、長澤まさみの「ありかも、BYD」に続く二匹目のドジョウになるのか、興味津々である。
ラッコ新車価格帯:214万5000円〜249万7000円(全グレード)