新車試乗レポート
更新日:2026.08.19 / 掲載日:2026.08.19

見た目◎、走りも◎! 新型キックスの魅力

見た目良し! 走り良し! 大ヒット間違いなし!

日産のコンパクトSUV「キックス」が、待望のフルモデルチェンジを実施。自慢のe-POWERは最新の第3世代に進化するなど、先代でも高く評価されていた「走り」は、さらに磨かれたようだ。このクラスは強敵揃いの激戦区だが、新型はどのように戦っていくのか?じっくりと検証してみたい。

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

※本記事の内容は月刊自家用車2026年9月号制作時点(2026年7月中旬)のものです。

NISSAN 新型キックス

価格:299万9700円〜424万8200円

SUVの枠に留まらない、クルマ選びの新たな選択肢
 現在の日産は、同じカテゴリーに複数のモデルを展開する多品種戦略から、売れ筋カテゴリーを中心とした少数精鋭の国内展開へ舵を切っている。当然、1モデルが担当する領域が広がることになるが、そこは幅広いニーズに応えるべく、カバーレンジ(対応力)を大きく拡大している。そんな日産の販売戦略において、その主役を担うことが期待されているのが、今回試乗したコンパクトSUVのキックスだ。新型キックスは、従来型からのフルモデルチェンジになるため、日産の国内ラインナップの構成自体に大きな変化はない。ポジションとしては、コンパクトカーのノート/オーラとミドルSUVのエクストレイルの間を埋める存在であり、日産のSUVラインナップにおいては最も手頃なエントリーモデルという位置付けになる。
 日産としては、具体的なライバルとしてカローラクロスやヴェゼルを挙げているが、これはあくまでコンパクトSUVという枠組みでの話だ。前述したように、このクルマをノートオーラの上位に位置する、高級感と個性をプラスしたコンパクトカーとして捉えれば、SUV以外の普通のハッチバックやセダンなどから乗り換えるユーザーも十分に想定できる。
 また、日本ではフルモデルチェンジとなったが、この新型キックス自体は2年前からすでに北米市場で販売されている。ただし、北米向けは純ガソリン車のみの仕様だった。日本発売までに2年のタイムラグがあったのは、日産が自慢のハイブリッドシステム「e-POWER」を、この新型用に熟成させるための準備期間だったと言える。今後はこの「e-POWER仕様」が、北米など世界市場へも順次導入される予定だ。

さらに進化した電動駆動。対ライバルの最大の武器に
 新型キックスに搭載されるe-POWERは、第3世代へと進化を遂げている。その大きな特徴は2つ。1つ目は、発電専用として効率を一段と高めた新しいエンジン。2つ目は、モーターやインバーターなどの主要な電動部品をコンパクトにまとめた「5in1」システムを採用したことだ。
 どちらも徹底した効率の向上を狙ったもので、ハイブリッド車が主流の日本市場において、この最新の第3世代e-POWERはキックスの強力なアピールポイントになっている。
 ちなみに、2WDモデルのカタログ燃費(WLTCモード)をライバルのカローラクロスやヴェゼルと比較すると、数値上はわずかに及ばない。しかし、その差はごくわずかで、実際の走行で優劣がはっきり出るほどのレベルではない。
 むしろ興味深いのは、2WDと4WDの燃費の差だ。同じ前後に駆動モーターを配置する電動4WDを採用するカローラクロスと比べると、キックスは4WDにしたときの燃費の落ち幅が少し大きめ。それというのも、新型キックスは4WDシステムをさらに進化させ、前後モーターをより高度に協調制御する「e-4ORCE(イーフォース)」へとグレードアップしているからだ。
 e-4ORCEの本領は、乗り心地の良さと意のままに操れる走りの楽しさにあり、そのため普通の舗装路(オンロード)でも4WDのパワーを積極的に使っている。走りの印象は後述するが、このe-4ORCEこそ新型キックスの最大の注目ポイントになる。
 アウトドアやレジャー用の相棒として見ると、使い勝手の面でライバルを圧倒するような際立った強みはない。このあたりは、広大な道をゆったり走るパーソナルカー文化の北米市場を主眼に開発されたクルマらしさに思える。
 しかし、かつて日産が国内でも販売していた「ジューク」のように、個性を前面に押し出した奇抜なデザインではなく、落ち着いた大人の高級感を感じさせる内外装に仕上がっているのが魅力だ。「道具としての実用性」よりも、「デザインの良さや仕立てのクオリティ」といった感性的な満足感を求めるユーザーにとっては、新型キックスのバランスの良さは好ましく映るだろう。

■主要諸元(G) ●全長×全幅×全高(㎜): 4365×1800×1615 ●ホイールベース(㎜):2655 ●車両重量(㎏):1480 ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1433㏄直3DOHC(98PS/11.7㎏・m)+モーター(105㎾/315N・m) ●トランスミッション:一段固定式 ●WLTCモード総合燃費:23.4㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)/トーションビーム式(R) ●タイヤ:225/45R19

特徴的なルックスながら、実用性も高いレベル
 新型は、写真で見るとボディのサイズ感が少し掴みにくい。実際の全長は4355㎜とコンパクトSUVらしい扱いやすいサイズなのだが、隣に比較するクルマがないと、1つ上の「エクストレイル」並みに大きいのではないかと錯覚してしまうほどの存在感がある。
 そう感じさせる理由は、厚みのあるフロントエンドや力強いフロントマスクの造形、そして踏ん張り感を強調するフェンダー周りの張り出しだ。良い意味で、コンパクトカーにありがちな実用性や効率の良さを優先したデザインとは一線を画す、堂々とした佇まいに仕上げられている。
 それでいて実用性を犠牲にしていないのがキックスの優れたところだ。
 ボディの窓から上の部分は、流行りの5ドアクーペのようにスタイリッシュに絞り込まれている。車内の広さを最優先して四角く作った実用型SUVに比べれば、確かに形状的な無駄はある。しかしその無駄こそが、クルマ全体にどっしりとした安定感と、カッコいい佇まいを与えるための必要なこだわりと言えるのだ。
 この外観の印象もあって、最初は大人の男性4人が乗るには少し狭いのでは? と思ったが、実際に乗り込んでみると予想以上に余裕がある。後席は背筋がすっと伸びて収まりが良く、座り心地も抜群。さらに、圧迫感を与えないようにデザインされたダッシュボードやドアの内張りのおかげで、4人での長時間のドライブが快適に過ごせるだけの心地よさを備えている。
 荷室に関しては、大人4人が乗った状態でさらにキャンプなどの大荷物を積み込むには、少々スペースが足りない。そのため、室内の広さや積載力を何よりも最優先したい、というユーザー向けのクルマとは言いがたい。
 向いているのは、基本的に2人乗車がメインというユーザーだ。普段は街乗りが中心だが、ロングドライブや旅行も楽しみたいという向きにとっては、キックスのサイズ感はちょうどいい。キャビン加飾はデザイン性を重視したオシャレなルックスでありながら、外せない実用性のポイントはしっかりと押さえている。絶妙なパッケージングになっているのだ。
 このように巧みなデザインやサイズ設計が居心地の良さに繋がっているわけだが、新型で最も注目すべきは快適性の高さ。その要となるのが、静粛性と乗り心地の2点になる。

■主要諸元(X e-4ORCE) ●全長×全幅×全高(㎜):4365×1800×1610 ●ホイールベース(㎜):2655 ●車両重量(㎏):1550 ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1433㏄直3DOHC(98PS/11.7㎏・m)+モーター(フロント:105㎾/315N・m リヤ:50㎾/140N・m) ●トランスミッション:一段固定式 ●WLTCモード総合燃費:21.5㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R)サスペンション:ストラット式(F)/トーションビーム式(R) ●タイヤ:215/60R17

最新電動技術の恩恵は明らか。走りには「格上感」がある
 もともと日産のe-POWERは、バッテリーの電気だけで走っているときの静かさには定評があった。しかしこれまでは、パワーが必要な高速走行などでひとたびエンジンが始動すると、そのエンジン音が目立ちやすいという弱点もあった。
 その点、新型に搭載された第3世代のe-POWERは、エンジンがかかったときの静かさが劇的に向上している。モーターだけで走る時間自体は以前と大きく変わらない、あるいは短くなったようにも感じられるが、エンジン音そのものが驚くほど穏やかなため、街乗りなどでエンジンの始動と停止が頻繁に繰り返されても、耳障りに感じることはまったくない。
 強いて不満を挙げるなら、アクセルを強く踏み込んで急加速したときもエンジン音が盛り上がらず、悪く言えば「退屈で冴えない音」に感じてしまうこと。ただ、乗員にストレスや圧迫感を与えないこの徹底した穏やかさこそ、新型キックスの大きな見所だと言える。
 さらに、エンジン音だけでなく、風切り音などの車外から入ってくる音や、タイヤが路面を叩くロードノイズもバランスよく抑えられている。単に全体の音量を下げるだけでなく、耳障りな高音や不快にこもる低音がほとんどカットされているため、実際の数値以上に体感として静かに感じる、秀逸な仕上がりだ。
 乗り心地に関しては、サスペンションがしっかりと仕事をしており、段差を越えた後も車体がいつまでもユサユサと揺れ残ることなく、スッと一発で収まる。ボディ全体の骨太な剛性感の高さも非常に印象的だ。
 大きな段差を乗り越える瞬間に、足回りのクッション特性からか、タイヤ周辺がわずかにブルブルと震えるような仕草を見せることもある。しかしそれを含めても、コンパクトSUVとしては中身がぎっしり詰まったような質の高い乗り心地だ。分かりやすく言うなら、ワンサイズ上のミドルSUVに乗っているかのような重厚感があり、実際のサイズ以上に車格感が感じられる。

2WD車でもクラス上位の安定した走りを披露するが、e-4ORCEが組み合わされる4WD車の走りは、さらにその上をいく。ハンドリングや路面追従性、安定感は完全に別物だ。

e-4ORCEの恩恵はオンロードでも実感可能
 このように乗り心地の質の高さは、新型の大きな武器になっているが、2WDと4WDで走りの評価はガラリと変わってくる。
 まず2WD車の足回りは、リヤのサスペンションの沈み込みをあえて抑えた味付けになっている。後ろを少し突っ張らせることで、カーブを曲がる際にあえて前輪側へ荷重を乗せるような姿勢を作る、いわゆる一般的なFF(前輪)駆動らしいキビキビとしたセッティングだ。
 一方、4WD車は加速するときやカーブを曲がるときに、後ろのサスペンションがしなやかに沈み込んで路面を捉えてくれる。もちろん、路面の段差を乗り越えるときも2WDよりサスペンションがよく動いてショックを吸収するため、後席の乗り心地はワンランク上の快適さに引き上げられている。
 この4WD車が見せる独特の動きは、運転の楽しさ(ファントゥドライブ)という点でも非常に高く評価できる。少し大袈裟に聞こえるかもしれないが、後ろのタイヤが地面を蹴る力や、車重のかかり具合に応じてサスがじんわりと沈み込むその挙動は、まるで高級な後輪駆動(FR)のクルマを運転しているかのような感覚がある。加速中やコーナリング中に、車体の後ろ側にしっかりと乗っているような安定感と心地よさは、2WD車では味わえないもの。明らかにクラス以上の贅沢な乗り味になっている。
 本来、前輪駆動をベースにしたクルマにおいて、加速やカーブの際にリヤサスが大きく沈み込むような挙動は、走りの安定性を乱すため「タブー」とされている。
 しかし新型キックスは、前後のモーターを使って前後左右の駆動力を自由自在にコントロールできるツインモーター式4WDのe-4ORCEの強みをフルに活かしている。緻密な制御と、その特性を最大限に引き出す絶妙な足回りのセッティングによって、極上の操り心地と4WDならではの圧倒的な安心感を、高い次元で両立させているのだ。
 しかもこの走りは、ドライバーだけが自己満足で楽しむためのものではない。車体の無駄な揺れが抑えられるため、加速や減速、コーナリングの際にも乗員の体が揺さぶられにくく、同乗者の快適さや安心感にも直結している。まさに運転して楽しく、乗っても快適という一石二鳥の見事な出来栄えだ。
 全体的な走りの質感は、まさにノート/オーラの上位モデルと呼ぶにふさわしい仕上がりであり、日産の電動車の系譜を強く感じさせるものになっている。現在ノートやオーラに乗っていて、その走りを気に入っているユーザーであれば、新型キックスがもたらす進化の意味をすぐに体感、そして理解できるはずだ。コンパクトカーのサイズ感に、ワンランク上のプレミアム性を求めるユーザーにとって、間違いなく見逃せない一台になっている。

海外ではガソリンモデルを中心に展開しているが、国内では第3世代e-POWERを搭載するハイブリッドモデルのみが導入される。ベースエンジンは1.4ℓとなるなど、ノート/ノートオーラよりも格上の選択になる。
サイドビューは、力強く張り出したフェンダーがグラマラス。ツートーン仕様ではルーフ部分がブラックアウトされる。オーソドックスなフォルムだった先代と比べると、垢抜けた印象が強まっている。
フロントマスクは、アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たデザインを採用。特徴的なシグニチャーランプと水平基調のワイドなグリルを組み合わせることで、力強く大胆な存在感を表現。
ルーフ形状は、リヤエンドを絞り込むクーペルックでスマートに仕上げられている。キャビンのスペース効率の面では不利になるが、デザイン的には恩恵が大きい。Gにはルーフ左右にボディ一体型ルーフレールが設置される。
足元のホイールは、Gグレードに19インチ(上)、X系グレードには17インチ(下)が組み合わされる。ともにデザインを意識した異形タイプだが、派手なボディシルエットもあって違和感は皆無だ。
インパネまわりは、2枚の12・3インチ画面を繋いだ統合型インターフェイスが目を引く。前後のシートは乗員の体圧を分散し中立姿勢を保持できるゼログラビティシートが奢られる。
ルーフを絞り込んだわりには開口部は幅も高さも上手に確保される。床面は格納時に完全にフラットになるなど使い勝手も向上。荷室容量も十分に確保されている。
ダッシュ中央にも12.3インチディスプレイを配置。純正の車載ITとして、通信連携機能が強化された日産コネクトインフォテイメントシステムが組み合わされる。Gグレードでは標準装着となる。
運転席の正面に配置された12.3インチのフル液晶メーターディスプレイ。フードレス設計による圧倒的な開放感と見やすさをもたらしてくれる。
センターコンソールの前方には、物理ボタン式のシフトスイッチを配置。ドライバー側には電気式パーキングスイッチ、その横に非接触充電に対応したスマホスペースが設けられる。
GグレードのOP装備として高性能アンプ+10スピーカーのBOSEサウンドシステムも用意。フロント左右シートのヘッドレスト部には、ヘッドレストスピーカーが配置される。

新型キックス《まとめ》

実用重視のライバルたちとは一線を画す「独自性」がある
 日本や東南アジア市場では、このクラスのコンパクトSUVに対して「荷物がたくさん積めること」や「ファミリーでの使い勝手」といった実用性を強く求める傾向がある。しかし、新型キックスは個人が自分専用のオシャレな移動手段としてクルマを楽しむ「北米市場」を主眼に開発されたモデルになる。そのため、一昔前の言葉でいう「セクレタリーカー(都会で働く人がスマートに乗りこなすパーソナルなクーペ)」のような、経済的で趣味性の高い個人向けのクルマとしての性格が強くなって当然と言える。
 実際に試乗してみても、内外装の雰囲気から走りの方向性に至るまで、ファミリー向けのSUVが持つような実用最優先のイメージは薄い。そのため、ファミリーでキャンプやアウトドア趣味をガンガン楽しむための相棒としてコンパクトSUVを探しているユーザーには、正直なところイチオシの一台とはならない可能性もある。
 別項でも述べたが、新型キックスの位置付けとして最もすっきり感じられるのは、ノートオーラの上位モデルというキャラクターだ。1人や2人での移動をスマートにこなせるスペシャリティ感と、上質なデザインや走りがもたらすプレミアムな演出がこのクルマの真骨頂。ファミリーカーというよりは、大人のカップルが楽しむレジャーワゴンとして、あるいは上級クラスからの乗り換えを検討しているダウンサイザーのような、クルマにプラスαの付加価値を求めるユーザーにこそ乗ってほしいモデルである。

新型キックス《オススメグレードは?》

X e-4ORCE
359万9200円

高級感やプレミアム性を最優先するなら最上級の「G」、コストパフォーマンスを重視するなら「X」に必要なOPを選択するのがオススメ。どちらも新型キックスの魅力をバランス良く体感できる。駆動方式は4WDの「e-4ORCE」を選びたい。2WDよりも約35万円ほど高くなるが、走りの質感や操る楽しさは別モノだ。

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ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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