新車試乗レポート
更新日:2026.05.22 / 掲載日:2026.05.22

使いこなせば最高の相棒! グランカングーの実用性は本物だ【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 「日本における『カングー』の人気ぶりについて、ルノー本社の人はとても不思議がっているんですよ。」

 かつてルノージャポンの広報スタッフがそんな話をしていたことをよく覚えています。そして、そんな様子が、日本におけるカングーという存在を端的に表していると言っていいでしょう。

欧州の働くクルマが日本では家族の一員に!?

ルノー グランカングー

 カングーは言うなれば商用バンであり、本来の姿は“働く車両”。日本車でいえば「トヨタ・ハイエース」みたいなもの。郵便の集荷や配達といったデリバリーユースにはじまり、花屋や酒屋などの商店がお客のもとへ荷物を届けるのに使ったり、ライトトラック的に荷物運搬に使われることもある(バンはトラックに比べてアウトバーンの制限速度が高く設定されているので荷物が大きく重くないのであれば都合がいい)。日本のカングーのように快適装備仕様の設定もあるとはいえ、本国フランスでそれを乗用車として使うユーザーはほぼいない。だって本国では、カングーといえば「ただの道具」なのですから。

ルノー グランカングー

 いっぽう日本はどうか。仕事で使う人も一部にはいるかもしれないけれど、ほとんどが乗用車としてのニーズ。そのうえで、まるでカングーをペットのように親しみを持ち、かわいがっているユーザーが多い。毎年開催され、多くのファンが集う「カングージャンボリー」というイベントは日本でのカングーの愛されかたを端的に表していると言っていいでしょう。

 そんな様子を見てルノー本社のカングー関係者が「ここまでカングーに愛情を注ぎ、まるで家族のように扱うなんて。日本人はどうなっているんだ。単なる仕事で使うクルマなのに。」と不思議がるのも、まあ無理もないでしょうね(よく考えると日本でハイエースが多くの人に愛されるのも似たようなものか?)。

 しかし、10年ほど前になるとそんな日本の状況をフランスも徐々に理解し、先代では“日本のため”にデュアルクラッチ仕様を開発。欧州でも発売したもののMTが基本となる現地向けは生産数も少なく、発売はまず本国に先駆けて日本だった……なんていう輸入車としては例外中の例外と言えるエピソードも持っているのもカングーらしいと言えるのかもしれません。

カングーとグランカングーの違いはシートにあり

ルノー グランカングー

 さて、「グランカングー」はそんなカングーワールドを広げる追加モデル。そのポイントは、車体を伸ばして3列目のシートを追加したこと。3列目を外せば通常のカングーよりも広い荷室となるのも特徴です。

ルノー グランカングー

 全長は通常のカングーに対して420mm長い4920mm。大人気の「トヨタ・アルファード」に“近いけどちょっと短い”と覚えておけばOK。ちなみに全幅(これはカングーと変わらない)は1860mmで、これも「アルファード未満」ですね。

ルノー グランカングー

 3列目は取り外し可能で、2列目を取り外した状態(2列目スライド位置は最後部)の荷室床奥行きはカングーの2列目使用時に対して350mm拡大の1380mm(筆者計測)。さらに、2列目は前方へ130mmスライドできる(普通のカングーはできない)ので最大約1.5mまで荷室拡大が可能というわけで、「普通のカングーでは荷物を積みきれない」というユーザーに向けたモデルと言っていいでしょう。たくさんのグッズをもってキャンプに出掛ける人とか。

ルノー グランカングー

 また3列目だけでなく2列目のシートまで取り外せるのも“グラン”だけの特徴。外すと奥行きは約2.3mとなり、しかもフラットな床面だから大人2人が安眠できるスペースになったり、自転車どころかバイクを積んでトランスポーターとして活用できたりしちゃうのだから、ハマっている趣味がある人にとって最高の相棒となること間違いなし。シートの脱着は3列目が左右独立、2列目は左右と中央の3分割で可能。自由自在のアレンジもグランカングーの大きな魅力です。

ルノー グランカングー

 いっぽうで、3列目を活用してミニバン的に使う場合はどうか。さすがにアルファードのように広々でゆったりというわけにはいきませんが、意外に居心地がいいというのもまた事実。乗り降りのしやすさも、3列目アクセス時は2列目を倒す必要があるものの、カングーに対して開口幅を180mm拡大したスライドドア(ライバルのフランス/イタリアブランド3列車はここまで広くない!)のおかげで悪くはないですし。

 ただ、電動スライドドアの設定はないので国産ミニバンからの買い替え時は覚えておいたほうがいいかもしれませんね。ちなみにスライドドア自体はライバルのフランス/イタリア3列車よりも動きがスムーズなのがうれしかったりします。

1.3Lでも走りにまったく不満なし!

ルノー グランカングー

 そんなグランカングーのエンジンは、排気量わずか1.3Lのガソリンターボ。最高出力は131PSで最大トルク240Nmとどうってことはない。というか、約1.7トンの車両重量にたいして「それで大丈夫?本当に大丈夫?」と思うのが正直な印象ではないでしょうかね。何を隠そう、筆者だって乗る前はそう思っていましたから。

 だけど、実際に運転して驚きましたよ。加速にまったく不満や物足りなさがないのですから。さすがにガンガン走れるほどパワフルとはいかないけれど、日常的な発進加速も、高速道路の巡航性能も、峠道の上り坂もまったく問題なし。これは実際に運転してみないと理解しづらいかもしれないけれど、論より証拠。乗れば誰もが納得できるに違いありません。まるでディーゼルエンジンのように低回転からトルクを発生するガソリンターボエンジンが効いているのでしょう。

ルノー グランカングー

 そしてカングーというかルノーに受け継がれる美点である、しなやかで乗り心地が極上だけど、高速安定性が抜群にいいサスペンションはもちろん健在。スペック的に凄いポイントは一切見当たらないのに、長距離を高速巡航してもまったく疲れず、どこまでも走り続けていられる“隠れ高速ツアラー”的な能力はさすがとしか言いようがないですね。

 (日本人にとっては)異国テイストのオシャレでいながら、しっかりと質実剛健。それがカングーの神髄であり、日本で高い人気を誇る理由なのかもです。

ルノー グランカングー

 ところで、日本で販売するグランカングーはすべてテールゲートが左右に開く「観音開き」ですが、実はロングボディにそれを組み合わせるのは日本仕様だけ(本来は一般的なミニバンのように上へはね上げる1枚ドア)。理由は日本のカングーユーザーが観音開きドアを好むからで、わざわざ日本仕様のためだけに特別にそれを作ってくれているのです。

 「そもそも普通のカングーは観音開きがあるわけで、車体が伸びていると言ってもドアを変えるだけなんだから楽でしょ」と思うかもしれませんが実はそうじゃない。電源ハーネスも専用設計が必要だったりと、想像以上に跳ね上げドアからの変更点が多いのです。

日本のために作られた実用的で特別なカングー

 日本のためにそこまでやってくれたフランス本社の理解にまず感謝。そして日本で売るグランカングーは限定車販売を基本とするのも、日本向けはそういった背景からある程度の数をまとめて一気に生産するロット制となっている事情があることを知れば、ますますカングーとグランカングーに親しみが持てませんか?

 車体サイズは気にならず、もっと実用的なカングーが欲しいという人にとってはきわめて魅力的な選択肢となるでしょう。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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