新車試乗レポート
更新日:2026.05.18 / 掲載日:2026.05.18
まるで“グリーン車”。新型エルグランドが提示する最上級ミニバンの新境地【山田弘樹】

文●山田弘樹 写真●ユニット・コンパス
2025年のジャパン・モビリティショーで初披露され話題を呼んだ、日産が誇るLLサイズのプレミアムグランドツーリング ミニバン「エルグランド」。そのプロトタイプに試乗して、上質な乗り味に「次世代のミニバン」を感じました。
グレード構成は「e-POWER」+「e-4ORCE」一本勝負
試乗したのは、クローズドテストコースである「日産グランドライブ」。その試乗時間はわずかに20分という短さだったため、今回はそのドライバビリティに焦点を当て、集中して走りを確かめます。

4代目となったエルグランドは、大胆なラインアップで挑みます。
パワートレインは、1.5L直列3気筒VCターボをベースとしたシリーズハイブリッド「e-POWER」のみ。またその駆動方式も、ここにリアモーターを加えた「e-4ORCE」のみという、思い切ったグレード構成です。

先代エルグランドはその頂点に3.5Lを誇るV型6気筒エンジン(280PS/344Nm)を置き、スタンダードモデルとしては2.5L直列4気筒(170PS/245Nm)をラインアップ。また駆動方式はFF/4WDのふたつを用意して、日産らしく走りの良さをアピールしていました。
果たしてその幅広いレンジをカバーした走りを、1.5Lエンジンとモーターだけで、超えることができるのか? ここがまず、ひとつの見所だと言えます。
インテリアの高級感と上質さには大満足

新型エルグランドに乗り込んでまず感じるのは、室内空間の上質さです。
水平基調のデザインでまとめられた室内は、広々としていてクリーンな印象。紫がかった「紫檀」(シタン)カラーのダッシュボードやインパネが実に大人っぽく、14.3インチモニターを連結させた「統合型インターフェースディスプレイ」も、その雰囲気を壊すことなくスタイリッシュに収まっています。

第3世代「e-POWER」は効果絶大!

第3世代へと進化した「e-POWER」ユニットは、静粛性の高さが自慢です。
新型リーフで「3-in-1」構造だった電動ユニットは、内燃機関用のジェネレーター(発電機)と増速機をプラスした「5-in-1」構造に。モーターやインバーターを一体化して、ユニット剛性を向上。共振周波数帯を引き上げることで、常用稼働時に起こる振動やノイズを抑えることができました。

エンジンも、より静粛性が高まりました。
欧州では「キャッシュカイ」、国内では「エクストレイル」にも搭載される1.5L直列3気筒VCターボは、上死点を可変させることで、ターボパワーが必要な時と、燃費走行の時との圧縮比を変えることができる非常に効率的なエンジンです。
しかしその特性は、まだまだ駆動用エンジンとしてのキャラクターが強かった。急激なトルク変動に耐えられるだけの強度や、他車との汎用性を持たせるために、敢えて設計に余裕を持たせていたのです。

対して新型エルグランドでは、こうしたガソリンエンジン車用の造りを完全に捨て去り、この1.5L直列3気筒ターボを「発電特化型エンジン」へと生まれ変わらせました。
その結果熱効率は42%まで向上し、エンジン回転数も低く抑えられるようになったため、結果として静粛性を高めることができたのです。
なおかつエンジン音やロードノイズに対しては、スピーカーから逆位相の音を出してをこれを打ち消す「アクティブ・ノイズ・コントロール」の制御範囲も拡大。正直なところ、今回の路面が良すぎてそのオン/オフ時の違いまでは判別できませんでしたが、オフ状態で走らせても車内は、とても静かでした。
乗り心地の良さやスムーズさが際立つ

カーブでの身のこなしも、かなりの上質さです。これまでのエルグランドは、乗り心地の良さを備えながらも上質ながらも日産車らしい、スポーティな走りが特徴的でした。しかし良い意味で新型エルグランドの走りは、その期待を裏切りました。
曲率が高く、折り返しもあるカーブでは、「e-4ORCE」(イーフォース)の4WD制御が、大きなボディをスムーズに旋回させてくれます。
その足周りにはエルグランドとしては初の電子制御ダンパー「インテリジェントダイナミックサスペンション」が奢られ、旋回Gや舵角に応じて減衰力を自動調整。エコ/コンフォート/スタンダード/スポーツ全てのモードを試しましたが(モード的にはこのほかにスノーとパーソナルがあり)、それぞれの閾値のなかで、ハンドリングと安定性をバランスしていました。

それは駆動方式と足周りの両方が協調制御された、とても現代的な走りです。だから「アシがいいなぁ!」とか、「トラクションがガッツリ掛かる!」といったわかりやすさは希薄です。しかし全ての動きに連続性があり、走りが洗練されています。
まるで「プチ新幹線」! ハイレベルな高速走行
高速道路の継ぎ目を模した路面では、バネ下の18インチタイヤをダンパーが上手に動かして、姿勢をフラットに保ちます。うねりのある波状路でも、車体が上下に揺さぶられる挙動をスムーズに収束させながら、乗り心地と操安性を両立していました。セレナはこうした動きを抑えるのが少し苦手でしたが、エルグランドなら酔いにくいと思います。
100km/hまで許された、直線路での加速も見事でした。

最大トルク500Nm以上という4WDのダッシュ力は、プチ新幹線のよう。その座り心地を合わせると、グリーン車に乗っているような気分です。発電特化型エンジンは高稼働領域でも遠鳴りで、加速が落ち着くとむしろ空調の方がうるさいくらい。3.5LV6を上回るといわれるその加速感は、速度の上昇がリニアに管理されていて、強烈というよりも爽快でした。
感動的な「スムーズストップ」機能
感動的だったのは、「スムーズストップ」機能です。
これはボッシュが提案した、停車時にブレーキの液圧をコントロールして、車体の姿勢をフラットに保ってくれる新機能です。その制御は実に緻密で、おそらくベテランドライバーよりも上手です。試しに少し強めにブレーキを掛けて、そのままペダルを踏みっぱなしにしてみましたが、瞬間的に液圧を抜いて“スッ”と停車。まるで体操選手が着地したときのように、ピタッと止まる制御には驚かされました。ちなみに緊急回避時は、この機能は作動せず、最後まで制動力を引き出します。
こうした機能に慣れてしまうと運転操作が雑になってしまわないか少し心配ですが、理解して使えばとても便利です。
全面的に褒めたい気持ちはあるが課題も見えた

総じて、もはやEVいらずとも思えるほどの滑らかさと、レスポンスの良さを身に着けた新型エルグランド。基本的には全面的に肯定なのですが、気になる部分もありました。
それはまず、2tを優に超えるであろう車体の重さです。「今回の試乗路では」という条件付きですが、旧型からキャリーオーバーされたプラットフォームが、剛性不足を感じさせなかったのは見事です。そこには4WD制御による安定性と、それに耐えうるサブフレーム周りの強化、そしてダンパーの制御が効いているのだと思います。

かたや235/60R18というタイヤサイズは、ややこの重たいボディに対しては剛性が不足している一面も感じました。通常走らせている限りはエアボリュームも十分で、乗り心地も上々。しかしダブルレーンチェンジでの収まりの弱さや、スラロームにおけるイナーシャ(慣性)の大きさを考えると、あと1インチくらいキャパシティを上げて、緊急回避時の性能を高めておきたいと感じたのは事実です。
また乗り心地の良さや静粛性の高さに関しても、テストコースではなく生きた路面を走らせないと、その真価は問えません。
遂に搭載された「プロパイロット2.0」の走りだって、長距離移動しながら堪能してみたい。ベンチシートを止めた2列目、キャプテンシートの取り付け剛性も、じっくり確かめたいところです。

厳しめなコメントを残すのは、日産グランドライブでの走りがあまりに快適だったから。
筆者はミニバンを欲しいと感じたことはありませんが、「これならいいなぁ!」と素直に思えたからこそ、リアルワールドでその走りを確かめたいと強く感じました。












