新車試乗レポート
更新日:2026.04.14 / 掲載日:2026.04.14
【新型CR-V】売れ筋SUVクラスに登場したホンダからの刺客【渡辺陽一郎】

文●渡辺陽一郎 写真●ユニット・コンパス
ホンダCR-Vほど、国内販売の終了と再開を繰り返した車種はない。初代モデルは1995年に発売されて好調に売れたが、その後は北米指向を強めて国内販売台数を下げた。
そこで2016年に4代目で国内販売を終えたが、「ヴェゼルよりも上級のSUVが必要」という理由により、2018年に5代目で国内販売を再開した。それなのに「売れ行きが低調」という理由で、2022年に再び国内販売を終了した。
この後、2024年に6代目で国内の取り扱いを再開したが、e:FCEV(燃料電池車)のリースのみで、ほとんど利用されていない。それが2026年2月から、いよいよハイブリッドのe:HEVを国内で売るようになった。
全長4.7mに対して最小回転半径5.5mで取り回しもしやすい

国内販売の終了と再開を繰り返してきた理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。「開発側は常に国内で売りたいが、経営判断で廃止した時期もあった。その代わり2023年にZR-Vを加えたが、CR-Vが欲しいというお客様の意見も根強い。そこで改めて日本でe:HEVのCR-Vを発売した」。
国内販売を復活させたCR-V・e:HEVのグレード構成は、「e:HEV・RS」(駆動方式は前輪駆動の2WDと4WD)と、「e:HEV・RSブラックセレクション」(4WDのみ)だ。

ボディサイズは、全長が4700mm、全幅は1865mm、全高は1690mm(4WD)だから、全長はCR-V・e:FCEVよりも約100mm短い。既存のSUVに当てはめると、エクストレイルを若干ワイドにした大きさだ。ZR-Vは、4570mm・1840mm・1620mmだ。全長はCR-Vが130mm長いものの、ボディサイズはかなり近い。
外観は最近のホンダ車に多いデザインで、フロントマスクを直立させ、ボディは水平基調だ。そのためにボンネットが視野に入り、ボディの先端位置や車幅も分かりやすい。フロントピラー(柱)とウインドウの角度を比較的立てたから、斜め前方も見やすい。最小回転半径も5.5mだから、SUVでは小回りの利きも悪くない。
質感の高さは良好。後席は頭上空間に少し不満も

内装ではインパネが水平基調で、中央部分から助手席の前側まで、メッシュ状の横長の装飾パネルが装着される。ATの切り替えはスイッチで行う。コンパクトで安価なZR-Vやシビックに似た形状だが、素材の使い方も含めて質感に不満はない。

シートの座り心地は良好だ。背中から大腿部をしっかり支えて、運転席については、背中の張り出しを調節する電動ランバーサポートも備わる。シート生地は全車が本革で、滑りやすい印象はない。

後席は足元空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半に達する。床と座面の間隔も十分に確保されて着座姿勢は良いが、頭上の空間は握りコブシ1つ少々に留まる。全高が1600mmを超えるSUVでは、頭上空間は少なめだ。

この点を開発者に尋ねると「後席の着座位置は先代型に比べて30mm高い」という。見晴らしが良いため、座高の低い子供がクルマ酔いしにくい効果もあるが、現状に比べて15mmほど低いと着座感覚が自然になる。
乗降性は良好だ。ドアの開口角度も大きく、大柄な同乗者でも乗り降りしやすい。荷室は床面積に余裕がある。リヤゲートの角度を立てたから、背の高い荷物も積みやすい。荷室容量は590Lを確保した。

ゆとりを感じるパワートレイン
パワーユニットは、全車が直列4気筒2Lエンジンを使ったハイブリッドのe:HEVを搭載する。このシステムでは、通常はエンジンが発電を行って駆動はモーターが担当する。効率が優れている時は、エンジンが直接駆動することもある。

従来型の直接駆動は高速巡航時のみだったが、新型では低速域の緩い加速や登り坂でも直接駆動して、燃料消費量を節約する。WLTCモード燃費は、e:HEV・RS・2WDは19.8km/Lで、4WDは18.2km/Lだ。上級のe:HEV・RS・ブラックセレクションは、4WDのみの設定で18.0km/Lになる。
モーターの最大トルクは、先代型に比べて約6%高い。モーターはアクセル操作に対して機敏に反応するから運転しやすい。加速感は滑らかでノイズも小さく、ガソリンエンジンに当てはめると3L前後の余裕を感じる。

制御の特徴は、モーター駆動なのに、有段ATのように走行状態に応じてエンジン回転を上下させることだ。プレリュードと違って減速度のみ調整可能だが、モーター駆動なのに、エンジン駆動風に演出している。これはユーザーによって好みの分かれるところだろう。
乗り心地の良さと安心感を両立させたフットワーク
乗り心地は快適だ。時速40km以下で舗装の荒れた場所を走ると細かな振動を伝えるが、突き上げ感は抑えて穏やかな乗り味に仕上げた。タイヤは19インチ(235/55R19)で、銘柄はミシュラン・ラティチュード・スポーツ3。指定空気圧は前後輪ともに230kPaと妥当で、タイヤの性格も乗り心地を向上させていた。
乗り心地が快適な代わりに、峠道のカーブを曲がる時などは、ボディが大きめに傾く。この時も唐突な挙動変化は抑えられ、ボディがゆっくりと傾くため、安定感が伴ってドライバーや乗員も不安を感じにくい。

特に後輪の接地性が高いため、運転が難しい状態に陥りにくい。高速道路で横風にあおられても、進路を乱されにくく、ドライバーの疲労も抑えられる。
峠道をスポーティに走ると、少し曲がりにくく感じる場面もあるが、SUVだから進行方向を機敏に変える必要はない。ステアリングホイールを回し始めた時から、車両が正確に反応するため、運転感覚が上質に感じる。
4WDは従来型と同様、前輪駆動をベースにしながら、電子制御式の多板クラッチで後輪にも駆動力を振り分けるタイプだ。従来型は共振を避けるため、時速90km前後に達すると、クラッチを切り離して前輪駆動の2WDになっていた。新型ではこの点も改善され、高速域まで4輪を駆動できる。

装備についてはグーグルが搭載され、インパネ中央の9インチディスプレイに、グーグルマップを含めて多彩な情報を表示できる。グーグルアシスタントによる音声操作も可能だ。
おすすめの使い方と推奨ユーザー
前後席ともに快適で荷室にも余裕があるため、4名で乗車して、長距離ドライブに出かける用途などに適する。
全幅は1865mmと少しワイドだが、全長は4700mmに収まって最小回転半径も5.5mだから、日常的な買い物などにも使える。一家に1台のファミリーカーとしても推奨できる。
価格の割安度と買い得グレード

すべてのグレードで、安全装備、運転支援機能、快適装備などが充実している。買い得グレードは、「e:HEV RS 4WD」(価格は539万2200円)だ。4WDの価格は2WDに比べて26万9500円高いが、2WDに装着されないステアリングヒーター、後席シートヒーター、フロントドア撥水ガラスも備わる。これらの装備が約7万円に換算されるため、4WDの正味価格は約20万円に収まって割安だ。
「e:HEV RS ブラックセレクション」(577万9400円)は、車線変更時の衝突抑制機能などを含んだホンダセンシング360、ヘッドアップディスプレイ、電動パノラミックサンルーフ、前席ベンチレーションなどを加えて、e:HEV・RS・4WDよりも38万7200円高い。買い得ではないが、プラスされる装備に魅力を感じるなら選ぶ価値がある。





ライバル車と比較しても商品力はある
ライバル車のRAV4ハイブリッドZ・E-Four(4WD)は、後輪を前輪とは異なるモーターで駆動する4WDを搭載して価格は490万円だ。本革シートなどは装着されず、CR-V・e:HEV・RS・4WDに比べて49万円ほど安い。
同じトヨタのハリアーもライバル車だ。本革シートなどを備えたハリアーハイブリッド・Zレザーパッケージ・E-Four(531万800円)は、CR-V・e:HEV・RS・4WDと比べて、装備、価格ともに近い。CR-Vはスポーティな運転感覚と走行安定性に魅力があり、ハリアーは上質な内外装が特徴になる。
納期ガイド:少し長いが受注が停止する心配はなし
販売店では「CRーVの納期は、e:HEV・RSが約7か月、ブラックセレクションは約8か月」としている。タイで生産される輸入車だから、納期は少し長いが、 受注が停止する心配はないと思われる。
リセールバリューにも期待できる
販売店では「CR-Vは車種の廃止と復活を繰り返した。廃止されると、お客様は期待を裏切られた気分になり、ホンダから離れてしまった。今ではCR-Vの認知度も以前に比べて薄れてきた」という。
これはリセールバリューでも不利な要素だが、前述の通りSUVとしてのデザインや機能は優れている。従ってリセールバリューも悪くはない。残価設定ローンの残価は、3年後で新車時の54%だ。一般的には42〜48%だから、CR-Vは良好だ。
残価率は5年後でも39%だから、メーカーも中古車市場で相応の高値で販売できると考えている。売却する時の価値が下がり、不満を感じる心配はないだろう。