新車試乗レポート
更新日:2026.05.21 / 掲載日:2026.04.13

【スーパーワン】「こだわりの強さ」こそホンダらしさ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 ホンダのBEVファミリーに新たなモデルが加わった。スーパーワンである。名前だけではイメージできないが、このクルマはN-ONE e:のハイパフォーマンス版にあたる。というか、細部を変更しているが、そのチューニングモデルといった感じだ。

これぞ「ホンダらしい電気自動車」だ!

ホンダ スーパーワン

 スーパーワンの誕生には「ホンダらしいファン(FUN)なEVを開発したい」という想いがある。S660を具現化した若きエンジニアと同じような志だ。走らせて楽しいクルマをつくりたいという彼らの心意気を感じる。

 ただ商売的には難しいだろう。軽自動車やアッパークラスとは違いBEVのコンパクト系はそもそもラインナップが少なく、売れていいない。ライバルがいない分ヒットすれば大化けするが、かなりのチャレンジになるであろう。商売的に台数は見込めない。

 とはいえ、プレリュードと共にシンボリックなモデルになるのは確実。“ホンダらしさ”というキーワードでブランドイメージの構築を担うはずだ。昨今、若い層にモータースポーツのイメージが薄れてしまったホンダの救世主になればいいと思う。F1復帰とこういった市販車がホンダを原点回帰させてくれる。

5つのパワーアップ

ホンダ スーパーワン

 ではその中身だが、大きく分けて5つの項目が挙げられる。スタイリング、パワーアップ、シフトサウンド、シャシー、インターフェイスだ。中でもまず目につくのはスタイリング。前後のタイヤ周りに大型ブリスターフェンダーが装着される。その印象は80年代風でまさに大型エアロパーツが流行り出した頃を思い出させる。FRPで成形したアフターパーツがなんでもないセダンまでもをGTマシンのように見せた時代の産物だ。事実、開発陣は80年台のシティターボⅡ、通称ブルドッグをオマージュしている。

 モーターのパワーはN-ONE e:の47kWから70kWにアップした。とはいえ、パワーユニットはN-ONE e:のそれをキャリーオーバーしている。つまり、そもそも軽自動車規格だったものを解き放った感じ。正確にはコンピューターで制御したパワーをリセットしている。そしてそれを「スポーツ」と「ブースト」モードで発揮するという仕組みだ。なので、普段は大人しく走ることもできる。

 それじゃあまりコストがかかっていないのかといえばそうでもない。ワイドトレッドになったシャシーにスペーサーで対応するのではなく、しっかりロアアームを作り替えている。ホイールのインチアップが図られることから足回りはこだわった。

1年半かけて作り込んだ「音」が凄い!

ホンダ スーパーワン

 でも一番時間を費やしたのは「音」だろう。このクルマは言わずもがなのBEV。なのだが、走り出すとガソリンエンジン車のようなエンジンサウンドを楽しむことができる。

 アクティブサウンドコントロールと呼ばれるそれは、スポーツとブーストモードで起動する。クルマの加減速、それと変速時のエンジンサウンドを見事に再現しているのだ。音はスピーカーから流れる。エンジンの高回転サウンドはフロントセンターのスピーカー、低速からの低回転サウンドは4つのドアに埋め込まれたスピーカーを活用する。

 そんなサウンドを実際に走らせて体感した。場所は袖ヶ浦フォレストレースウェイである。

ホンダ スーパーワン

 はじめにサウンドについて語ると、こいつはかなり良くできている。シフトチェンジをトレースするように回転数の上下を感じさせる音が聞ける。パドルシフトを使えばさらに楽しい。左パドル長押し(2秒)でMTモードに変わり、シフトチェンジごとのサウンド変化が再現される。個人的に好きなのはATモードでのブレーキングでの音。シフトダウンとブリッピングがスポーツマインドをくすぐる。ただそれをプレリュードと比べるとちょっと物足りない。あちらのシンクロモード(S+)は最強だ。あの短くて小気味の良いブリッピングはまんまレーシングカー。ドライバーは自分の腕が上手くなった錯覚に陥る。

 ちなみに、この音は何かをサンプリングしたのではなく、ゼロからつくったようだ。イメージしたのは4気筒のNA。それをおよそ一年半かけて納得の領域まで持ってきた。

ホンダ スーパーワン

 ハンドリングは終始気持ち良い。ワイドトレッドになった分安定感が出て、コーナーでのスピードは上がる。性格上弱アンダーステアではあるが、速度を合わせるとクルッと回る。とても自然なフィーリングだ。ステアリングの精度が高く狙ったエイペックスにピタッと寄せられるのもグッド。軽量ボディがコーナー毎にヒラリヒラリと向きを変えてくれる。

街中で乗り回して反応が見たい!

スーパーワン 無限パーツ装着車

 というのがスーパーワンのサーキット試乗。直線では速度規制が入ったが、コーナーでのフットワークは堪能できた。次は一般道での試乗で、信号でのスタートダッシュなどを試してみたい。それにこのブリストされたボディの街中の反応も知りたいところである。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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