新車試乗レポート
更新日:2018.11.05 / 掲載日:2016.03.17
BMW X1 試乗レポート(2016年03月)

走りのいいコンパクトなクロスオーバーSUVとして人気を博した「X1」がフルモデルチェンジ。新たにFFベースとなったことで、室内は大きくなり、快適性もさらに高まっている。
飛躍的にアップした快適さとユーティリティ
BMWは、自らが「SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と呼ぶクロスオーバー分野で、ライバルの一歩先を行く戦略を実行してきた。高級コンパクトSUVの先駆けとなった「X1」に対しては、ライバルのアウディが「Q3」、メルセデスが「GLA」を対抗馬として送り込んだが、X1はいち早く第2世代へと移行した。
まず気づくのは、パッケージの変化だろう。先代は日本の立体式駐車場に対応する低めの全高を特徴としたが、新型はxDrive(4駆)、sDrive(2駆)の区別なく、標準で1610mm、Mスポーツ・サス採用の「Mスポーツ」で1600mmの設定としている。
全体にボリューム感が増した印象だが、それが活きているのは室内スペース。天井が高くなったのに合わせて、アイポイントを高めに設定し、後席足元空間も拡大させた。加えてラゲッジも大きくなったのだから、実用性のレベル向上は目を見張るもの。今度のX1なら、家族ユースも難なくこなしてくれる。高いユーティリティは、ひと足先にデビューした2シリーズ・アクティブツアラー譲りと言えるだろう。なら、走り味はどう変わったのか?
クロスオーバーSUVとは思えないほど敏捷な動きと、FRベースならではのナチュラルなハンドリングを特徴とした先代と比べれば、ハッキリ言ってスポーティ色は色褪せた。ライバルと同じFFベースとなったことを、残念に思うファンも多いのではないかと察する。

でも、パッケージや実用面での大きな進化を見れば、簡単にプラットフォームの大改革を否定することはできない。コンパクトクロスオーバーの市場がとくに有望なのは新興国だが、そこでは洗練された乗り味よりも、実用性の高さのほうが喜ばれる傾向がある。FFベースへの転身は、総合的な判断によるものだ。
新型X1のハンドリングのしつけは、スポーティムードを十分に楽しめるもの。優れた高速スタビリティや、快適な乗り心地もバランスしているのだから、実力に不足はない。
ただし、人工的に中立を締めるクセがあるステアフィールや、うねりのいなしが上手でないサスセッティングはうれしくない点。FFベースのBMWには、いまも習作的なところがある。とはいえ、ツアラー兄弟と比べればこなれた面もあり、伸びしろは大きそう。今後に期待したい。
エンジンについては、求めるものが必要十分な走りなら、136馬力/22・4kg mの3気筒1.5Lターボで事足りる。だが、BMWらしい爽快な加速フィールや、上質なエンジンのフィーリングを求めるなら、4気筒をチョイスするのが正解だ。
賢い4駆メカとの組み合わせのため、231馬力/35・7kg mのハイチューン版2Lターボを積む「25i」でも性能を持て余すことはないが、多くのひとは「そこまでの力感や速さはいらない」と判断するはず。ということで、現時点でのベストマッチの心臓は192馬力/28・6kg mの標準型2Lターボとなる。
圧縮比を高く設定し、過給圧を抑えた標準型は、低回転域から有効なトルクを発生し、リニアなトルク特性とした扱いやすいエンジン。8速ATとのマッチングもすこぶるよく、だれにでもお薦めできる。そう、231馬力仕様より192馬力仕様のほうが優れている面もあるのだ。
そして、将来的に期待するのはクリーンディーゼルの追加。SUVとディーゼルの相性はバッチリなだけに、新型X1でも魅力ある組み合わせとなるのは間違いない。
文●森野恭行 写真●澤田和久、川崎泰輝
問い合わせ BMWカスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-269-437
Detail Check

FFベースを感じさせない自然なプロポーション。全長を30mm短縮し、全高をひとまわり拡大したのが見どころ。最低地上高は175~185mmを確保。
コックピット
コックピット
質感はさらに向上。スポーティさと高級感をうまく融合させたデザインはいかにもBMWのクロスオーバーらしい。自動ブレーキやボタン式パーキングブレーキなど、現代的アイテムも揃う。
インテリア
インテリア
余裕を増した頭上高と広くなった後席足元空間が印象的。後席に便利なスライド機構を装備するなど、ミニバン的な使い勝手も追求。
エンジン
エンジン
「18i」には3気筒1.5L、「20i」と「25i」には4気筒2Lのガソリン直噴ターボを積む。ATは3気筒が6速、4気筒が8速となる。
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
定員乗車時のラゲッジ容量は505L。先代より85Lも拡大。スライド機構やシートバック可倒を利用すれば、利便性がグッと高まる。
タイヤ&ホイール
タイヤ&ホイール
標準のタイヤサイズは17インチおよび18インチだが、オプションで19インチまでを用意する。スタイリッシュさにこだわるひと向けだ。
主要諸元:BMW X1 xDrive25i xLine(8速AT)
全長×全幅×全高 | 4455×1820×1610mm |
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ホイールベース | 2670mm |
トレッド前/後 | 1565/1565mm |
車両重量 | 1660kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1998cc |
最高出力 | 231ps/5000rpm |
最大トルク | 35.7kg m/1250-4500rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 225/50R18 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2015年10月)
X1 sDrive18i(6速AT) | 385万円 |
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X1 sDrive18i xLine(6速AT) | 413万円 |
X1 sDrive18i M Sport(6速AT) | 431万円 |
X1 xDrive20i(8速AT) | 473万円 |
X1 xDrive20i xLine(8速AT) | 492万円 |
X1 xDrive20i M Sport(8速AT) | 511万円 |
X1 xDrive25i xLine(8速AT) | 569万円 |
X1 xDrive25i M Sport(8速AT) | 591万円 |
Body Color
■ブラック・サファイア ■チェスナット・ブロンズ □アルピン・ホワイト ■グレイシャー・シルバー ■エストリル・ブルー ■プラチナ・シルバー ※ほか4色。 |
BMWにとっての新境地は居住性と走りを高次元で両立
先代X1は1シリーズと母体を共用するモデルだったが、新型は2シリーズ・アクティブツアラー&グランツアラーと兄弟関係にあたる。つまり横置きFFレイアウトをベースとする。でも、クロスオーバーSUVらしく4駆モデルの「xDrive」も設定。適時、的確に後輪にも駆動力を分配する方式だ。