新車試乗レポート
更新日:2026.03.02 / 掲載日:2026.03.02
【マセラティ グレカーレ エッセンツァ】シンプルだからこそ味わえる奥深さ【石井昌道】

文●石井昌道 写真●澤田和久、内藤敬仁
2020年にスーパースポーツ「MC20(現MCPURA)」の登場で新時代へ突入したマセラティ。その流れを受けて2022年に誕生したのが、マセラティ2番目のSUVであるグレカーレだ。程よいサイズで比較的身近なモデルとして日本でもスマッシュヒットとなった。
1000万円を切る価格のエントリーモデル

なかでも2025年9月に受注を開始した「グレカーレ・エッセンツァ」は990万円という価格を実現した新たなエントリーモデル。従来のエントリーモデルの「グレカーレ」は1065万円だが、フルプレミアムレザー、シートヒーター、アンビエントライトなどといった装備はそのまま。ボディカラーは4色に絞り、グレカーレの中では最小の19インチ・タイヤに限定するなど選択肢を整理することで価格を抑えている。

そのため簡素な仕様といった印象はなし。ソリッドペイントのビアンコならば990万円だが、その他のグリージョ ラバ、ビアンコ アストロ、ネロテンペスタは21万円のオプション価格なので1000万円を少しオーバーすることになる。
まるで大排気量NAエンジンのようなフィーリング

エンジンは2.0L直列4気筒ターボでマイルドハイブリッドとの組み合わせ。48V電源のBSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)を備えて駆動のアシストをする一方で、減速エネルギーなどで専用バッテリーを充電。その電力はマセラティ独自のeブースター(電動コンプレッサー)を作動させる。ターボのコンプレッサーにモーターを組み込んでいるので、排気エネルギーが不足しがちな回転域でも一定のブースト圧が確保され、ターボのレスポンスを引き上げているのだ。

その効果は絶大で試乗すると、まるで大排気量NAエンジンのように太いトルクが即座に立ち上がり、吹き上がりも鋭い。アクセルを踏み込めばあっという間に最高出力発生回転数の5750rpmに達して矢継ぎ早にシフトアップしていく。
サウンドも迫力があって2.0L直列4気筒ターボとしてはかなりスポーティな部類だ。最上級グレード「グレカーレ・トロフェオ」にはスーパースポーツ「MCPURA」と同様の“ネットゥーノ”と呼ばれる先進的なV6エンジンが搭載されるので2.0L直列4気筒ターボは軽くみられがちだが、フィーリング、パフォーマンスともに期待以上だ。
19インチとのマッチングは想像以上

ドライブモードは「COMFORT」、「GT」、「SPORT」と用意され、アクセル操作に対するレスポンスがはっきりと違う。「SPORT」ではアクセルを軽く踏むだけでグイッと加速体制に入っていくのが気持ちいいが、市街地ではややせわしなく感じることもある。「COMFORT」はかなり穏やかになるものの、ターボラグを抑制したeブースターと大トルクの余裕があるから物足りなさはなく、ジェントルに走らせるのに向いている。中間の「GT」はもっともリニアでドライバビリティがいい。

アルファ・ロメオで先に採用されたジョルジョ・プラットフォームによってシャシー性能も高いことは以前の試乗でも確認していたが、エッセンツァでは新たな発見があった。19インチタイヤとコンベンショナルなサスペンションの組み合わせはバランスがいい。20インチタイヤで電子制御ダンパー付とコンベンショナルを比較したときには明らかに前者のほうがフィーリングが良かったが、タイヤが19インチになると印象が一変する。

バネ下が軽いことで乗り心地が良くなるだけではなく、ハンドリングも軽快で躍動感のある走りをする。前軸荷重970kg、後軸荷重920kg。50:50に近い前後重量配分が効いている。コーナーでは自然な感覚でノーズが入り、前後のタイヤからグリップを引き出していく。ステアリングフィールもナチュラルでコーナーを攻めるのが楽しい。

マセラティらしいエレガントさが感じられる

V6エンジンにエアサスペンションを備えるトロフェオの重厚なフィーリングもいいが、エッセンツァのシンプルだからこそ雑味のない味わいもまた奥深い。価格を抑えたエントリーモデルでありながら、エレガントにしてスポーティなマセラティらしさは、まったく薄れていないのだ。