新車試乗レポート
更新日:2026.02.10 / 掲載日:2026.02.10
【eビターラ】これまでのスズキ車を超えた品質感がある【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
スズキのBEV戦略が始まった。彼らは2030年までに5機種のBEVを日本で発売するとアナウンスしている。まずは今回ステアリングを握ったeビターラで、今年中にもう一台JMS(ジャパンモビリティショー)でお披露目された軽自動車規格のBEVが発売される予定だ。スタートは他メーカーより遅れたが、スズキらしく着々と準備を進めている。
スズキが満を持して登場させた電気自動車

ということなので、eビターラは彼ら初のBEV専用プラットフォームが用いられた。HEARTECT-eと呼ばれるのがそれで、ロングホイールベースで大型のバッテリーを搭載することを可能とする。また、それに伴い生産ラインも手直しした。電池パックの重さに耐えられるよう設備改良をしたそうだ。

HEARTECT-eの構造的な特徴はバッテリーを効率的に積むのもそうだが、ハイテン材を多用していることが挙げられる。車両重量をなるべく軽くするため素材から見直したのだ。また、今回はリアサスペンションをトーションビームではなくマルチリンクにしているのも見逃せない。上物が軽く下が重たいBEVではピッチングが発生しやすいため、リアサスを構造から変更しそれを防ぐようにした。その意味ではお金がかかっているプラットフォームと言える。ひとつ上のクラスの足だ。
走らせた印象は良いところもあれば残念な部分も

そんなeビターラを走らせたのは今回が2回目で、前回はクローズドエリアでの走行であった。発売前のプロトタイプだったからだ。そんな環境だから平均速度は高くなったが、そこでいい感じの走りを見せた。ステアリングは正確で挙動は安定し、BEVにありがちなネガティブ要素はほとんど顔を出さなかった。アクセルに対するレスポンスもそうで、開度調整は細かく効いていた。意図的にアクセルをガツンと踏み込まない限り急激なトルクは発生しない。
今回の一般道での走りも基本的にはそうで、実によくできている。「これが初めてのBEV?」とは思えない仕上がりだ。試乗したのは4WD、2WDの順番だったが、特に良かったのは前者。車両重量の増加分をパワーで補っているため加速に不自然さはない。特に中間加速は重量とパワーのバランスがよく内燃機関のような印象を与えた。リニアでスムーズな加速だ。2WDもその傾向はあるのだが、クローズド走行の時と違って低速からの加速では少し重ったるさがある。この辺はしょうがないといえばそうなのだろう。
乗り心地に関してはどちらもあまり変わらないが、少々硬めに感じる。積極的にアクセルを踏んだ4WDはそうでもなかったが、2WDをゆったり走らせようとするとその傾向が表に出てきた。路面の凹凸がダイレクトに突き上げる感覚だ。クローズドで試乗した時はもう少し乗り心地が良かった分そこは残念に思えた。

その背景にあるのはタイヤサイズ。両駆動方式とも前後225/55R18のエコタイヤを履いていた。これには仕様を統一してコストを下げるという意味合いがあるが、このクラスで18インチは大きすぎる。ハイパワーの4WDはまだ良しとしてももっと手軽な2WDは17インチ、もしくは16インチで十分だ。ホイールが小径になってもタイヤの外径をそのままにすれば乗り心地は良くなるし、ゴムが減った時のリプレイスは安くなり、スタッドレスタイヤに履き替えるにも純正ホイールがそのまま使えるメリットがある。つまり、いいことだらけなのだ。メーカーやトレンドのフォロワーはいまだに大径ホイールに憧れているかもしれないが、すでにそんな流行りは終わっている。特にSUVやクロスオーバーではそうだ。
それとクローズドで乗った時を比較するとダンパーの減衰圧が高まった気がする。18インチを突き通すのであればセッティングは逆だった気がしなくもない。
補助金を考えれば費用対効果は高い

この他のeビターラの特徴は内装の仕上がりの良さだろう。“ポップなスズキ”から“大人のスズキ”にイメチェンしたようだ。シート、トリムは見た目に高級感はあるし、質感も高く思える。そしてその根拠になるのがプライス。4WDの定価は492万8000円なのだからそれなりのクオリティは必要だ。が、この価格も補助金による値引き?がある。地域によって異なるが、東京都だと3桁の補助金が適応されるらしい。であれば、かなり身近になるのは確かだ。そこを鑑みるとちゃんとスズキらしいプライスレンジに収まるからすごい。スズキは相変わらず魅力的なモデルを輩出するメーカーである。


