新車試乗レポート
更新日:2025.12.29 / 掲載日:2025.12.29
新型ヴェゼルRS・“走り”の真相


クラス屈指の優等生ぶりで知られるホンダ自慢のコンパクトSUVに新バージョンが登場。「RS」の売りである“走り”の実力に迫る。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之/長谷川 徹
※本記事の内容は月刊自家用車2026年1月号制作時点(2025年11月中旬)のものです。
快適性を犠牲にすることなくしっかりした走りを獲得

《SUV × e:HEV × Road Sailing》
HONDA 新型ヴェゼルRS“走り”の真相
操る愉しさと実用性を磨いた上質なSUV
ホンダのRSは操る心地良さを主眼に、スポーツ性と日常適性を高水準で両立させたモデルだ。ヴェゼルRSも伝統の「スポーツ&ツーリング思想」で開発されたが、シリーズ中で唯一4WDを選べるのが特徴。シビックやフィットのRSとは異なり、冬季走行を考慮して躊躇する雪国ユーザーにとって4WDは大きな魅力となる。
もうひとつ注目したいのが全高設定だ。専用ローダウンサスで15㎜、アンテナ変更でさらに30㎜低くし、全高は1545㎜に。これにより立体駐車場への収まりが良くなり、都市部での使い勝手が向上。最低地上高は15㎜減だがFFで180㎜、4WDで165㎜を確保、悪路対応力も必要十分だ。都市型SUVとしてのキャラクターを最も明確に体現した仕様と言える。
試乗車はFF仕様で、4WDとの差は22万円。モード燃費は約19%優れ、実用燃費も期待できる。ハイブリッドの効率性を重視しつつ、RSらしい走りの演出を巧みに組み合わせている点が印象的だ。
走り出してすぐにスポーツモデル特有の引き締まった感触が伝わる。特に足回りの完成度が高く、操る楽しさを感じさせる。パワートレーンは他グレードと共通で、SPORT/NORMAL/ECONの3モードを備える。SPORTではトルクの立ち上がりとエンジン回転数が高めに制御され、アクセルへの応答が俊敏になる。ECONは穏やかで扱いやすく、反応が滑らか。NORMALはその中間で、発進から巡航まで自然なつながりを見せる。パワーフィール重視のユーザーには少し物足りないが、総じて完成度が高い。
足回りは引き締まり、走り出した瞬間にRSらしさが伝わる。とはいえタイプRのようなサーキット志向ではなく、日常とレジャーを両立できる設定だ。ステアフィールは標準より重めで、直進安定性を重視したチューニング。小舵角での保持も自然で、高速域でも安心感がある。標準系は軽快さを重んじた設定だが、RSでは操舵の手応えがより明確で、ドライバーとの対話性が深まっている。
乗り心地は硬めだが、上下動をきちんと抑え込むため不快感はない。むしろ3〜4名乗車時には車体の安定感が増し、標準系よりも落ち着いた印象。荒れた路面ではサスストロークの余裕がやや少なく感じられるが、ボディ剛性の高さもあって全体の質感は上々だ。
ハンドリングはライントレース性が高く、速度やコーナー半径が変わっても特性が大きく乱れない点が好印象。操舵初期の反応は俊敏で切れ味が増しているが、神経質さはなく扱いやすい。ホンダ車が近年重視する「御しやすさ」の理念がここにも貫かれている。
ヴェゼルRSのスポーツ性は、限界性能よりも上質な〝演出〟に重きを置いたものだ。操る喜びを日常域で感じられる設計思想は、まさにRSの真骨頂といえる。ドライバー単独でも、家族とのドライブでも、程よい刺激と安心感が共存する稀有な仕上がりだ。
RSはヴェゼルの最上位に位置し、e:HEV Zプレイパッケージとの差は5万円弱。ナビ連動ディスプレイ、前席シートヒーター、パワーテールゲートなど主要装備は共通で、RS専用チューニングを考えれば価格は良心的。むしろ「走りの質感」に価値を見出すユーザーにとっては非常に納得のいく設定だ。スポーツ&ツーリング志向のRSと、レジャーワゴン志向のZプレイパッケージは走りと雰囲気で明確にキャラクターを分けている。RSの登場によってヴェゼルはより幅広い嗜好に応えるSUVへと進化したのだ。

HONDA ヴェゼル e:HEV RS

都会派スポーツSUVの進化形
10月2日に一部改良が発表されたばかりのヴェゼルに追加された「e:HEV RS」は、グランドコンセプトを「URBAN SPORT VEZEL」とし、専用ローダウンサスペンションやチューニングで操舵性と安定性が向上。赤を基調とした内装やブラック加飾の外装でスポーティーさを強調し、現行RS唯一の4WD設定により幅広い走行シーンに対応。





