新車試乗レポート
更新日:2024.01.23 / 掲載日:2024.01.23

新型クラウン「スポーツ」の実力公開〜公道試乗リポート〜

続々登場! 第2&第3の新CROWNの実力を徹底チェック!

トヨタのプレミアム戦略を担う新世代クラウンの「スポーツ」と「セダン」がついに公道デビュー。クロスオーバーの評価が高いこともあって、後発の2モデルの走りも大いに期待できそう。期待高まる「スポーツ」の実力は如何に?

●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之

TOYOTA 新型クラウン スポーツ 公道試乗リポート

TOYOTA 新型クラウン スポーツ ●ハイブリッド SPORT Z ●価格:590万円

フォーマルよりもカジュアル
「クラウン」の可能性を追求

 車名は「クラウン」、シリーズ名が「スポーツ」とくれば、その走りもスポーティなものと期待してしまうが、試乗したHEVモデルの印象はやや異なる。

 クロスオーバーに対して、ホイールベースは80mmほど短縮されており軽量小型化が図られているのだが、車両重量はクロスオーバーよりも重いくらい。さらにHEVが搭載しているパワートレーンは2.5ℓのスプリット式。上位設定として駆動モーターが強化されているPHEVも選べるが、少なくともHEVは動力性能面でことさら”スポーツ”を謳うほどではない。

 ただ、その走りには、従来のクラウンでは考えられない軽やかさも感じられた。全幅は1.9mに迫るグローバルサイズながら操舵感の良いハンドリングも手伝って、見た目の印象よりも軽快にふるまってくれる。2BOX5ドアハッチバックのボディもあって、フォーマルさよりもカジュアルな印象が強め。プライベートを楽しむために生まれた「新しいクラウン」というコンセプトには、とても良く似合っている。

 クラウンに不可欠な”寛ぎ“に関しても抜かりはない。クロスオーバーよりホイールベースが短くなったとはいえ、大柄な男性の4名乗車にも十分な後席スペースを備えており、後席を格納すれば、相当大きな荷物も積むことができる。独立したトランクを採用したクロスオーバーよりも使い勝手も良さそうだ。大きな車体サイズは効率的とは言えないが、色々な使い方を求めるユーザーに対して、良いところを突いてきていると思う。

パワーフィールは穏やか
万人が扱いやすいタイプ
 走りはスポーツという名にしては昂揚感が控えめなのだが、それは乗員のストレス軽減を狙った結果ともいえ、ドライバーに独り善がりなクルマに陥っていないことに好感を覚える。

 全開加速させても加速感は穏やか。エンジン音の高まりや初期加速の俊敏さを第一にしておらず、自然にパワーフィールが盛り上がってくれる特性だ。こう書くと反応が鈍いと思われがちだが、ドライバーの意思にもなかなか忠実で、加減速や巡航時の速度コントロールが容易。ドライバーが先読みしやすい特性を持たせることで、運転ストレスを上手に低下させてくれる。

 フットワークの特性もソフト寄り。路面の凹凸を上手に鈍す、あるいは均すような挙動の繋がりの良さがあり、これが乗り心地やハンドリングに繋がっている。クラウンの車格を考えれば、乗り心地にもう少しゆったりと沈み込ませるような重質な味わいも欲しくなるが、乗る人の心地よさを主とした軽やかな味付けは、気軽なドライブフィールが楽しめる大きな要因になっている。

 なおスポーツには、クロスオーバーと同様に低速で逆位相、高速では同位相で制御されるDRS(後輪操舵機構)が標準装着されている。最新モデルらしいハイテクな機構を採用したことで、高速コーナリングでの安定と、タイトターンの素直さを状況に合わせて最適制御してくれる。制御の感触も極めて自然で違和感は皆無。この恩恵は大きく、ラインコントロール性にも優れるハンドリング特性に、大きく貢献している。

 従来のクラウンのイメージからすると少し違和感を感じるのも事実だが、カジュアルを主軸にしつつ、ビジネスからレジャーまで頼れる新しいプレミアムカーとしてはかなり魅力的。多用途な役割をこなせるパーソナルカーの王道を狙ったモデルといえる。

●主要諸元(ハイブリッド SPORT Z) ●全長×全幅×全高(mm):4720×1880×1565 ●ホイールベース(mm):2770 ●車両重量(kg):1810 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(186PS/22.5kg・m)+ツインモーター(フロント:88kW/202Nm、リヤ:40kW/121Nm) ●トランスミッション:電気式CVT ●WLTCモード総合燃費:21.3km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)マルチリンク式(R) ●タイヤ:225/45R21

HEVのパワーユニットは、2.5ℓ直4エンジンにリヤ側にもモーター(E-Four)を組み合わせるシリーズパラレル式ハイブリッドを採用。システム最高出力は172kW(234PS)を発揮する。
ハンドリングもスタビリティも上級モデルにふさわしいレベル。高速直進性も申し分なく、ロングドライブ適性に優れることも美点のひとつ。
グロスブラックに塗装された21インチアルミホイールを標準装着。装着タイヤは235/45R21とかなりの大径サイズだが、乗り心地への悪影響は皆無。巧みなセッテングだ。

1ランク上のスペックを手に入れたPHEVもデビュー

 発表時に遅れて登場することが予告されていたPHEVも、ついに注文受付を開始。HEVでも十分な動力性能だが、その上を求めるならばシステム最高出力225kWを発揮するPHEV(HEVは172kW)も有力な選択肢になるだろう。今回は試乗が間に合わなかったが、HEVよりも上質かつパワフルな走りに期待したい。

●主要諸元(プラグインハイブリッド SPORT RS) ●全長×全幅×全高(mm):4720×1880×1570 ●ホイールベース(mm):2770 ●車両重量(kg):2030 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(177PS/22.3kg・m)+ツインモーター(フロント:134kW/210Nm、リヤ:40kW/121Nm) ●トランスミッション:電気式CVT ●WLTCモード総合燃費:20.3km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)マルチリンク式(R) ●タイヤ:235/45R21

PHEVは駆動バッテリー容量が増加したことで駆動モーター出力が向上。システム最高出力225kW(306PS)を発揮する。
アルミホイールは21インチとサイズは変わらないが、ホイール色がマットブラックに変更され、ブレーキキャリパーもフロントは専用設計の20インチ対向6ポットが奢られる。
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内外出版/月刊自家用車

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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