新車試乗レポート
更新日:2025.11.17 / 掲載日:2025.11.17
339万円からのシトロエン C3は大いにアリ!【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
シトロエンC3がモデルチェンジした。2017年に日本でリリースされた先代が好調だっただけに新型への期待が膨らむ。このところシトロエンやプジョー、DSオートモーティブはデザインが良くなっているから尚更だ。メルセデスやBMWといったドイツ勢がデザインで迷走する中、フランス車が個性を発揮しているように思える。
48VマイルドHV搭載で燃費と性能を両立

では4世代目となった新型の細部を見てみよう。
ポイントはパワーソースにある。日本仕様は一つで、1.2リッター直3直噴ターボエンジン+モーターの48Vマイルドハイブリッドが搭載された。すでにシトロエンC4に積まれた他、フィアット600、アルファロメオ・ジュニア、そしてプジョー3008にも採用されているユニットだ。モーターの出力15kWを含めたシステム合計出力は81kW(110ps)となる。アニキ分のC4ハイブリッド(システム合計出力145ps)よりデチューンされているのは、C3の軽量ボディに対しての最適化だ。組み合わされるギアボックスは、6速デュアルクラッチ式。フレンチホットハッチの走りを味わえるスポーティなテイストに仕上げられている。
では、エクステリアデザインはどうかだが、スタイリングは丸味を帯びた従来型よりスクエアなフォルムを纏う。95mmプラスになった全高も手伝って“骨太なSUV‘といった印象だ。この辺の味付けは時代が関係するのであろう。アウトドア色の強いSUVに今注目が集まっている。ここ数年のVW的な感じと言えそうだ。

フロントマスクも雰囲気を変える。ダブルシェブロンのロゴとグリル、シグネチャーライトを備えたLEDライトが、見る者に新たな印象を植え付ける。クラシックとモダンの融合といったところだろう。ボディとは異なるカラーに塗り分けられたツートンルーフを含め新しさの中に懐かしさを感じさせる。比較的小さなテールライトもその辺を意識した結果と言えそうだ。

インテリアはかなりシンプルな造形をしている。物理スイッチは最小限に抑えられ、ほとんどの操作をモニターの階層内で行う。個性的なのはステアリングホイールで、2本スポークの造形はシトロエンの長い伝統を思い浮かべる。彼らの足跡を今風に解釈したようなカタチだ。ステアリングホイールの上部が平らに近いのはトレンド。その先の表示を見るスペースを確保するものだ。他ブランドもヘッドアップディスプレイを見やすくするため、この手法を取り入れている。




走りのフィーリングはしっかりカッチリ系

そんなシトロエンC3を走らせると、正直イメージとは異なる乗り味を感じた。想像していたのはシトロエンの得意とする浮遊するような乗り心地。サスペンションのストロークで段差をこなし、キャビンを常時フラットに保つようなフィーリングである。が、このクルマはそうではない。意外なほど足回りはかためられ、スポーティな走りを提供する。ステアリング操作にクイックに反応する様は、どちらかというとドイツ車的だ。
なので、路面の悪いところではピッチングが発生し、ドライバーを上下に揺さぶる。もちろん許容できる範囲なので、それがネガティブに働いているとは言い切れない。この辺は好みだ。ちなみに、試乗車のタイヤサイズは前後205/50R17。ホイールデザインはかっこいいが、乗り心地の良さを求めるなら16にインチダウンする手はありだろう。
ボディカラーは全4色で、「ブルーモンテカルロ」と言う新色をラインナップに加えた。モンテカルロの名が付いているのだから、ブルーは地中海の色をイメージしたのだろう。トップを白にするとこれまでのシトロエンとはまた違った雰囲気を醸し出す。頭に浮かんだ類似モデルは トヨタRAV4あたり。今回のカラーバリエーションもまたトレンドを受けての提案かもしれない。
技ありの価格設定

最後にこのクルマの最大の魅力を伝えると、それは価格だ。C3 プラス ハイブリッドで339万円、装備を充実させたC3 マックス ハイブリッドで364万円となる。クルマの値付けが高くなったと叫ばれる昨今、この価格設定はありがたい。日本でのシトロエンブランドのイメージからしてもアフォーダブルに思える。その分、キーを差し込んでエンジンをかけるなど、最近の新型車にしてはクラシックなところはあるが、それを含めこのクルマを楽しむという考えはありだと思う。