新車試乗レポート
更新日:2025.10.23 / 掲載日:2025.10.23
【アウディQ5】美しさの先にあるもの【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
このところ激しくラインナップを再構築しているアウディ。先般はA5シリーズとQ6 e-tronの試乗を行なったが、今回はA6 e-tronとQ5シリーズのメディア向け試乗会が開催された。どれもアウディの中核を担うだけにその出来は気になる。BEVやハイブリッドとパワーソースは異なるが、A5シリーズもQ6 e-tronも走り出すと「さすがアウディ!」と言った仕上がりだっただけに、今回の2つのモデルも期待は大きい。
世界で売れているSUVの人気モデル

では新型Q5に話を進めよう。ご存知のようにこのモデルの人気は高い。スタートは2008年(日本仕様は2009年)で、スタンダードのSUVボディだけで世界中で160万台を販売した。競合がまだ少なかったこともあり、目立った存在だったのを記憶している。そして2016年にセカンドジェネレーションへ進化。ボディタイプにSUVクーペの“スポーツバック”を導入したのはこの世代だ。ここでは累計110万台を記録した。
新しいプラットフォームとパワートレインを搭載

3世代目となった今回はPPCプラットフォームを採用する。プレミアムプラットフォームとしてSUVに初投入されたシロモノだ。新世代パワーソースを搭載可能とするとともに、回生のよる減速を備えた統合型ブレーキ制御システムやブレーキトルクベクタリング、最大60mmの調整ができるエアサスペンションなどに対応する。
グレードは全部で10種類あり、大きく分けるとボディタイプとキャラクターで区別できる。スタンダード型SUVとスポーツバックがそうだし、日常使いをメインステージにするQ5とよりスポーティなSQ5という分け方だ。



そんな中で今回ステアリングを握ったのはQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスドになる。2リッター直4ディーゼルターボにモーターを取り付けたマイルドハイブリッドだ。最高出力は204ps/最大トルクは400Nmを発生させる。特徴は可変タービンジオメタリー付きという点だろう。低回転領域を含んだ全領域で効率の良い燃焼を可能としている。組み合わされるギアボックスは7速Sトロニックトランスミッション。タイヤサイズは標準で前後235/60R18だが、試乗車はSラインパッケージをオプション装着することで、前後235/55R19インチを履いていた。タイヤはミシュランのeプライマシー。スポーツ性能を持ち合わせたバランスの良いタイヤである。

では走った印象だが、試乗会のベースとなった御殿場周辺の一般道を走っている分には特に何も感じなかった。悪い点もなければ良いと思えることもなく、スーッと走り出した感じ。エンジンに盛り上がりはなく、低回転のまま信号から信号へ走り続ける。乗り心地は19インチのせいか少々硬め。細かいピッチングが気になるシーンがあったので、これなら18インチのままでいいのではと思っていた。
ところが、アウディの走りはこんなもんじゃないだろうという想いで、箱根の山へ上り始めるとじわじわとそのテイストが変わり出す。緩めのパワステはピタッと安定し、コーナーをキレイにトレースする。足まわりの安定感はさすがで、コーナリングの荷重移動はボディと足まわりが一体となって行うのがわかる。なんとも美しい姿勢移動なんだ!という感想。この気持ちよさはワインディングにおけるアウディの真骨頂である。
パワーの出方も不満はなく、アクセル回度にリニアについてきてくれる。過給の精度が高いのか、ターボラグはほとんどない。そもそもトルクの太いディーゼルエンジンの特性とタービンの動かし方、それと48Vで動かすマイルドハイブリッドのアシストが実にバランスよく感じられるのだ。正直、さっきまでの市街地を走る無機質な走行フィールはなんだったんだと思われる。

ルックスの美しさは賞賛に値する

といった新型Q5の走りには満足だが、このクルマの魅力はやはりアウディとしてのスタイリングとデザイン。エクステリアのシュッとしたフォルムと未来的すぎないインターフェイスは業界をリードしている。言うなれば二枚目風であることは間違いない。普段から身に付けるものに気を遣うような人が選びそうな佇まいは、さすがアウディと言いたい。

