新車試乗レポート
更新日:2025.10.08 / 掲載日:2025.10.08
【実車レビュー】日産 新型リーフ|航続距離700km超!3代目の完成度が凄い!

文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、日産
試乗してびっくりしました! 3代目リーフ、想像以上に魅力的です。今回は、発表と同時に情報解禁となったテストコースでの試乗体験をお伝えします。実車を見て、触れて、乗って感じた新型の魅力をお伝えします。
先代よりも性能が上がったのに価格は値下げ!

日産リーフは、2010年の初代から現在まで世界で70万台以上を販売電気自動車(EV)の先駆者的存在です。その3代目となる新型モデルが、いよいよ発売開始となりました。新型が目指したのは、「EVという特別な存在ではなく、クルマとして選んでもらえる魅力のあるもの」。航続距離だけでなく、快適性やデザイン、運転支援などすべてを刷新しています。
新型はまるでSUVのような存在感のあるスタイルですが、じつはボディサイズは先代よりもコンパクトになっています。その狙いは日本での使い勝手を高めること。室内の寸法は先代同等、それでいて全長を12cm短くしたことで、小回り性能を示す最小回転半径は5.4mから5.3mになりました。
モデルチェンジするたびにほとんどのクルマが大きくなりますが、新型リーフは小さくなった。新商品をアピールするのに、大きく立派になったというのが当たり前のところ、日産は逆を行きました。でもたしかに、近所の道や駐車場は大きくならないのですから、クルマばかりが大きくなるのは不便。
さらに価格も「B7 X」が518万8700円と先代の「e+ X」525万3600円より安くなっています。装備が充実した「B7 G」では599万9400円と、こちらも「e+ G」(583万4400円)との差額はわずか。2026年2月には55kWhバッテリーを搭載する「B5」も登場予定で、こちらはさらにお求めやすい価格になっているそう。
性能が大幅に進化して装備も増えているのに価格が据え置きというのは画期的だと思います。日本専用のコンパクトボディといい価格といい、日産がんばってます!

先進的で質感の高いインテリア

まったく新しくなったインテリアは、デザインも素敵ですが居心地のよさもなかなかのもの。エアコンユニットをエンジンルームに移したことで、足元のスペースがしっかり確保されているので、乗り込んだ瞬間に「広い!」と感じるほどです。後席の床がフラットになったのも快適さに貢献しています。
写真は上級グレードの「G」ですが、ホワイトとブルーパープルを組み合わせた内装色もおしゃれ。クルマとしての格が大きく上がった印象です。

そして室内で忘れていけないのが、頭上の調光パノラミックガラスルーフの存在。メーカーオプションのこちらを装着すると、頭上空間にゆとりがうまれるため、かなり開放感が得られます。ボタン操作で遮光エリアを調整できるのですが、差し込む光が「LEAF」の文字をシートに映し出す演出もあり、EVならではの未来感を演出してくれます。また、こうしたシェードのないガラスルーフは夏場に車内が暑くなる問題があるのですが、新型リーフでは赤外線を反射するコーティングを採用することによって、室内温度の上昇を抑え、夏場のエアコン使用時の電力消費を削減するとのこと。細部まで配慮された設計に、思わず感心してしまいました。このガラスルーフは「G」だけでなく「X」でも装着可能なので、ぜひ装着の検討をオススメします。



航続距離は驚きの702km!充電性能も大幅進化

今回試乗したのは、78kWhのバッテリーを搭載した「B7」。先代でいうところのロングレンジモデル「e+」にあたるグレードです。それにしても、WLTCモードで最大702kmという航続距離はかなりのインパクトがあります。なにしろ先代の「e+」が60kWhのバッテリー容量で航続距離が450km(e+ G、WLTCモード)だったのですから、バッテリー容量が18kWh増えたとはいえ、1.5倍以上もの距離を走れるようになっています。すごい進化です。
日産のフラッグシップEVであるアリアと共有したプラットフォームの採用や制御技術の進化、そして空力性能を磨き上げることで達成したとのこと。デザインと空力、どちらも妥協したくないため、ミリ単位で試作を繰り返したそうです。また、普段は見えない車体の底面も約95%をカバーする徹底ぶり。
しかしエンジニアによれば、こだわりは最大航続距離よりも、実生活での航続距離をキープすることにあったそうです。
これまでのリーフは、コンディションの良い時はそれなりに走れましたが、冬場など条件が悪くなるととたんに航続距離が減る弱点がありました。とくに初代は顕著で、その時の印象で「EVは使いにくい」と思い込んでしまったユーザーも多いでしょう。
しかし新型では、アリアからさらに熱マネジメントシステムを進化させ、空調・バッテリー・パワートレインの冷熱システムを連結し統合的に制御。これまで捨てていた熱を上手に活用することで、外気温や走行車速、エアコン使用の有無によって大きく航続距離が低下しないようになりました。開発チームには初代からリーフを乗り継いでいるひとも多く、まさにユーザー目線で使いやすい電気自動車に仕上げたと胸を張ります。
充電性能も大きく進化しています。150kWの急速充電器に対応し、15分で10%から80%まで充電可能。さらにGoogleマップとの連携により、最適な充電ポイントを自動で案内してくれるようになりました。ナビに充電地点を登録すると、バッテリー温度管理も自動制御され、到着時には最適な充電状態が確保されるようになっています。
走りの質感は2段階アップ!静かで上質な乗り心地

走り出してすぐに感じたのは、室内の静かさと乗り心地の良さです。モーター・インバーター・減速機を一体化した「3-in-1ユニット」によって、まさにすべるように滑らかで静かな走りを実現しています。ローターの磁石位相を調整することで、モーター音を極限まで抑えているそうです。実際、車体からのノイズは最小限で、ドアミラー付近の風切り音が気になるくらい。
車体剛性は従来比で86%向上。リアサスペンションにはマルチリンク式を採用し、突き上げを抑えながら操作に対して素直なハンドリングを実現しています。じつはサスペンションシステムは日本市場向けに専用チューニングが施されており、日本の路上にあったセッティングを採用しています。たとえば、首都高速のジョイントやコンビニなどの段差といったシチュエーションを重視したとのこと。
19インチホイールを履いた「B7 G」でも、乗り心地は快適。ホイールが大きくなると乗り心地に影響が出ることもありますが、新型リーフではその味付けが絶妙で、街乗りでもストレスを感じることはありません。むしろロングドライブでも運転を楽しめるようなちょっとスポーティな味付け。一方で18インチホイールを履く「B7 X」はさらにマイルドな乗り心地。街中での使用がメインならこちらが快適かもしれません。
給電機能を標準装備。合計3000Wが使用可能

全グレードに普通充電口からの給電機能を標準装備。オプションで室内コンセントも追加可能で、アウトドアレジャーや災害時の電源供給にも対応しています。運転席側の普通充電口にコネクターを装着することで1500Wまでの電力を車外で活用できます。一方で車内のコンセント(オプション)はセンターコンソール裏とラゲッジルームにコンセントが。PCやスマホ、ゲーム機などの充電にも便利に使えそうです。外部コネクターと併用することができ、最大3000Wまで対応します。
電気自動車を普通のクルマに

開発陣の話を聞いて印象的だったのは、「EVが特別なものではなく、普通の車として扱えるようにしたい」という強い思いです。初代から積み重ねてきた膨大な走行データとユーザーの声をもとに、冬場のバッテリー効率や充電性能など、細かな課題にも真摯に向き合ってきたといいます。
新型リーフは、航続距離はもちろん、先進的なメディア機能や快適性、走りの楽しさ、プロパイロット2.0に代表される先進安全装備、そして電気を積極的に活用できる外部給電機能まで幅広く進化しています。それをほぼ据え置きといえる価格で実現したのは驚くべき努力ではないでしょうか。何より嬉しいのが日本市場のためにデザインやセッティングを専用設計していること。逆風が吹いている日産ですが、新型リーフが多くのユーザーに届くことを期待しています。