新車試乗レポート
更新日:2025.07.15 / 掲載日:2025.07.15
さすがムーヴ! 価格と中身の良バランスに拍手!【竹岡 圭】【ダイハツ】

文●竹岡 圭 写真●ユニット・コンパス
1995年に初代が登場。今回7世代目となるにあたり、ムーヴは大きな決断をしました。なんとっ!後部ドアがスライドドアになったんです!
新型ムーヴのコンセプトと開発のこだわり

その理由としては、2003年にタントが登場してからというもの、いまの軽自動車はスーパーハイトワゴンがすっかり主流になってしまい、いまやスライドドアニーズが約6割に達しているということがひとつ。もうひとつは、ムーヴは10年以上継続して乗っている方が多く、子育て層から子離れ層になり、次に乗り換えるならば乗り降り等を考えてもスライドドアがいいと思っている方が多いという、市場調査の結果を得たからということでした。
そしてもうひとつ、大きな決断があるんです。それはカスタムをやめたこと。軽自動車によく見られる〇〇カスタムですが、実は初代ムーヴの時に「裏ムーヴ」のイメージでムーヴカスタムが登場したのが最初なんです。
その頃はミラとムーヴくらいしかメイン車種もなかったので、ニーズの住み分けのためにカスタムを作ったそうなのですが、いまは車種も増えたし…ということで今回廃止となりました。
ターゲットは「メリハリ堅実層」と名付けられた子離れ世代。この世代はバブル時代を体験している層なので、上質感と合理的な選択とこだわり、価格を含めたバランスの良さ等を考え「今の私にジャストフィットする毎日頼れる堅実スライドドアワゴン」として、設定したそうです。
今回デザイン的にはスイートな感じではなく、端正で凛々しいことにこだわり、迷ったときは「カッコイイかどうか」を基準にしたそう。開発陣の間では「男前ムーヴ」と呼ばれていたんだとか。

いちばん難しかったのは、ズバリムーヴに見えるかどうかで、スライドドアを採用するには、ある程度開口部が広くないと意味がない。そうなるとBピラーを前に出さなければならなくなる。となると、Aピラーを寝かせると前席空間が狭くなってしまう。ではとAピラーを立てると、ムーヴキャンバスとの差別化ができなくなる…ということで、このバランスが難しかったそう。
ムーヴと言えばワンモーションフォルムもひとつの特徴だったので、そのイメージは継承したいところでもあり、Aピラーを寝かしつつ空間を確保するギリギリを狙って、まとまったということでした。
さすがムーヴ! 走りの気持ちよさと日常の快適性を両立

走り味の方も、ムーヴらしさを出す開発が進められ、例えばムーヴキャンバスは街中速度域をメインに、乗り心地に振られているのに際し、タントは全高が100mm高いので重心高も考慮し、高速安定性を狙いに定めたスタビリティ重視に振られているのですが、ムーヴが狙ったのはその中間。日常生活は街乗りだけど、やっぱり遠出もしたいということで、日帰りで往復200kmくらいの距離の中、バイパスを30分くらい走っても疲れない等、具体的にイメージをして、高速での乗り心地の良さと操縦安定性を中心に仕上げられています。

スライドドアにすることで気になる車両重量の増加は、DNGAプラットフォームを使うことでなるべく相殺するようにし、本来ならもっと増えるところ40kg増くらいに収まっているとのこと。そのせいか、NAエンジンでもパワー不足感はあまり感じませんでした。もちろん上り坂では、やはりターボの方が余裕があるな…とか、高速での追い越し加速等では、エンジン音も気になるし、やっぱりターボかな…とか思ったりするのは事実ですが、今回3名乗車+機材で上り坂も高速も、音さえ気にしなければNAでも置いて行かれる感はなく、逆にNAの元気の良さに驚いたくらいだったんです。



いちばん感動したのは、ハンドルを切った時にスッと動くこと。誤解を恐れずに言うと、これまでのムーヴはハンドルを切った後、ワンテンポ遅れてついてくるような感覚があったのですが、これがイメージ通りにスッと動くようになったんです。クルマの向きがスッと変わってくれるので、リニア感が増していました。
これはやはりDNGAプラットフォームによるところが多いのですが、ムーヴキャンバスと比べても味付けの違いなのでしょう、スッと思った通りに動く感覚はしっくりくる感じがあり、細かい進化の違いも見せてくれたような気がします。

また、今回は14インチタイヤメインで開発、つまりNAエンジンメインのグレードで開発が行われたということで、14インチとターボの15インチでハンドリングの差はほぼなく、それもNAを選んでも気持ちよく走れる原因となっているのかもしれません。
軽スライドドア車としてのコスパは抜群!
気になる価格は、いちばんお求めやすいものは、軽スライドドア車だといちばん安価ということなので、価格のバランスの良さはなかなかお見事。ムーヴが提案した大きな決断、アナタにはどう映ったでしょうか。