新車試乗レポート
更新日:2025.07.01 / 掲載日:2025.07.01

Q6 e-tronはEVである前にクルマとしての魅力がある【九島辰也】

文●九島辰也 写真●アウディ

 ヨーロッパのカーメーカーの動向を見ていると、BEVの優位性に疑問符が付き始めた昨今、内燃機関の消滅といった話は断ち消えたような気がします。次なる主流はモーターとエンジンをどのように効率的に使いこなすかといったところでしょう。要するにプラグインハイブリッドやハイブリッドに再び脚光が当たり出しました。

 ですが、これでBEVが終わったわけではありません。技術は進化するものですから、BEVの優位性が高まるのは時間の問題です。バッテリー製造時に発生する二酸化炭素が激減したり、充電時間が無くなったり、寒冷地での使い勝手が良くなったりすれば、あっという間にBEV一色なんてことも考えられます。その意味で現在は発展の過程であり、市販化しながらそのフィードバックを受けてどんどん進化させているといったところです。

 それを証拠に、BEVは新型車が出るたび、ものすごく良くなっています。航続距離が伸び、充電時間が短くなるのはもちろん、我々クルマ好きの目線で見ても納得の走りをします。あのBEVにありがちな、アクセルが電源スイッチになるようなパワーの出方はほぼなくなりました。

アウディ Q6 e-tron クワトロ アドバンス

 先日ステアリングを握ったアウディQ6 e-tronもまたそんな仕上がりでした。ルックス、乗り心地、ハンドリングなど総合的にかなり高いレベルで仕上がっていますし、パワーの出方もガソリンエンジンのような細かいアクセル操作ができます。しばらく走らせているとBEVであることを忘れてしまうような動きでした。

 グレードは3種類あります。二輪駆動のQ6 e-tronとお馴染み四駆のQ6 e-tronクワトロ、ハイパフォーマンス版のSQ6 e-tronです。今回ステアリングを握ったのは前2つのモデル。駆動輪の数の違いを体感することができました。ちなみに、Q6 e-tronのバッテリー総電力量は83kWhで、Q6 e-tronクワトロは100kWhとなります。最高出力と最大トルクはそれぞれ185kW/450Nmと285kW/580Nmです。

 ではその基本骨格ですが、PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)は、アウディとポルシェの共同開発になります。ポルシェでは先般ジャパンプレミアされたマカン・エレクトリックが採用しています。バッテリーとモーターを効率よく配置するのが目的で設計されました。というかリチウムイオンバッテリー自体が新設計で、12のモジュールと180のプリズムセルから成ります。それを考えると、このBEV専用プレミアムクラスのプラットフォームについてはかなり前に話を聞いたことがあるので、バッテリーの進化待ちだったのかもしれません。昨今クルマの開発は3~4年と短くなっていますが、近未来を想定しているのは確かです。時空を超えたパズルみたいなものかもしれませんね。

 では簡単に走った印象をお伝えしますと、二輪駆動と四輪駆動では明らかに違いがありました。どちらもBEVの特徴を活かした加速は一流なのですが、四輪駆動の方がハンドリングは正確で楽しく、操っている感が強く得られます。それにコーナリングスピードも増しますから、安定した挙動でワインディングを駆け抜けられます。ただ、二輪駆動も実は駆動輪がフロントではなくリアなので、気持ち良さは得られます。加速時の後足が蹴る感覚はグッドフィーリング。少しBEVの重さは感じられますが、走り方次第では楽しめそうです。

アウディ Q6 e-tron クワトロ アドバンス

 ユニークなのは回生ブレーキのキャパシティの大きさで、どちらのモデルも日常的な走りではほぼブレーキシステムを使わないそうです。ブレーキが必要な場面の約95%を回生ブレーキが行うというから驚きます。パドルにより回生ブレーキの強弱は変えられますが、データ的にはそうなるとか。意図してブレーキペダルをグッと踏み込まない限りキャリパーは作動しません。なるほど回生ブレーキはそのまま動力になりますからこの技術は素晴らしい。いずれバッテリーの充電がいらなくなる要素のひとつはこの技術かもしれませんね。

 この他にも技術的なトピックスはたくさんありますが、個人的にこのクルマの良さはアウディらしい都会的なカッコよさだと思います。新型はフロントピラーを後方へずらしボンネットを長く見せるようなデザインが施されました。いわゆる“ロングノーズ”ってやつです。またこの後スポーツバックも追加されるようですからそちらも気になります。これを機会に、昔のように「カッコいい大人はアウディに乗っている」、なんて機運が高まるといいですよね。新型A6もスッとしていますし、期待したいところです。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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