新車試乗レポート
更新日:2025.05.02 / 掲載日:2025.05.02
【メルセデス・ベンツ GLC Core】中身がギュッと詰まってる【九島辰也】

文●九島辰也 写真●メルセデス・ベンツ
いろいろと方向転換を余儀なくされているヨーロッパメーカー。その中でもメルセデスの動向は全メーカーが気にするところだ。なんたって彼らは“自動車”を誕生させたブランドとしての自負と責任を感じている。事実2000年あたりからのパワーソース変革期にすべての可能性にチャレンジしてきた。当時の海外試乗会におけるプレゼンテーションの中身はいつもそんな話。BEV、PHEV、HEV、FCV、クリーンディーゼル云々。市販車の販売利益は全てこれらの研究開発費に回しているという内容だった。
あれから四半世紀が経っているが、いまだ次世代パワーソースの主役が決まっていないのが現状だ。BEVの鈍化からPHEVが着目されているが、それで定まったわけではない。まだまだ各メーカーの奮闘は続くであろう。
ベストセラーSUVに追加されたエントリーモデル

といった背景の中でもメルセデスはしっかり主軸になるモデルを生み出している。それがここでスポットライトを当てるGLC。現行型は2世代目だが、初代から彼らのラインナップの中でのベストセラーSUVとなっている。CクラスをSUV化したコンセプトはマーケットに受け入れられたということだ。
確かに、ステイタスがありながらのサイズ感など、メルセデスブランドを選ぶ理由がはっきりしている。多くの人が選択する要因を兼ね備えているようだ。昨年は日本で最も売れたメルセデス・ベンツブランドということだから間違いない。

そんな人気のGLCにさらに買いやすいグレードが追加された。エントリーモデルの“Core(コア)”である。
その中身はというと、戦略的な価格設定を行うためにGLC220d 4MATICをベースに装備を少しシンプルにした。より“素の状態”に近づけることでアフォーダブルを明確に打ち出したようだ。スタンダードボディで819万円、クーペボディで866万円となる。パワーソースがクリーンディーゼル+ISGのハイブリッドであること、4MATICと記されているようにフルタイム4WDであることを鑑みれば、確かにワルくない。Sクラス譲りの安全装備や最先端のインフォテインメントシステムまで搭載されるとなれば、「あれ、いいかも」という気がだんだんしてくる。マーケットニーズを反映したなかなかニクイ設定のモデルだ。



バランスの取れた走り味はなかなか魅力的だ

では、このCoreを走らせた印象だが、かなりいい。ボディはしっかりしていてメルセデスらしさ健在。「いかにもドイツ車!」という堅牢さが伺える。しかもそれでいて乗り心地がいいのが美点。サスペンションストロークが長く、減衰圧も柔らかめにセットされる。なので、足がよく動きキャビンをフラットにしてくれる。もちろん、それでいてコーナーリングの粘りも秀逸。リアタイヤがしっかり横Gを抑え込みながらトラクションをかけている。この辺はちょっとスポーティな味付けだ。
エンジン出力が197馬力ということからもわかるように、フツーに走っていても力強さは感じない。常用域を可もなく不可もなく走るといった印象だ。それでもこのボディの重さを感じさせないのはさすが。要するにディーゼルユニット単体で足りないところはターボとISGがちゃんと補っている。出だしをISGが、中間加速をターボが働くことで、全領域でいい意味でフツーに走ってくれるのだ。
ディーゼルの振動と騒音は最小限に抑え込まれる。特に振動はほぼ消された。ディーゼル音はアイドリングストップからのリスタート時に耳に届く。が、それが不快なほどではないのでご安心を。それよりも燃費の面でディーゼルの恩恵は期待できそう。WLTCモード18.1km/Lに不満はない。ギアボックスが9速ATであることからすると、高速走行が長ければ長いほどいい数値を見られそうだ。
素性のよさを楽しめるCoreからAMGまで豊富な選択肢

ところで、GLCにはこれ以外にも3つのパワーソースがあるのをご存知だろうか。GLC 350eに積まれる313馬力、メルセデスAMG GLC 43用421馬力とGLC 63S Eパフォーマンス用680馬力だ。ユニークなのはどれも2リッター直4ガソリンターボを軸としているところ。それに効率よくモーターを組み合わせている。GLC 63S Eパフォーマンス用の680馬力はシステム総合値なのでお間違いなく。
それはともかく、GLCの追加モデルCoreは好印象。価格設定を含め売れ筋になるのは明らかだ。「売れているモデルはいいモデル」。それを実証してくれる一台になることだろう。