新車試乗レポート
更新日:2025.03.13 / 掲載日:2025.03.13
ゴルフGTIはまさにホットハッチの現代的解釈だ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
コロナ禍の2021年に8代目VWゴルフが日本上陸した。長い間コンパクトカーのベンチマークとされてきたモデルだけに多くの人が注目したのは言わずもがな。なんたってクルマ好きを満足させるのがゴルフの使命である。
マイナーチェンジを受けて265馬力にパワーアップ

そのゴルフが今年マイナーチェンジをした。8代目登場の時に話題となった1リッター直列3気筒ターボエンジンが姿を消し、48VマイルドハイブリッドのeTSIと呼ばれる1.5リッター直4ガソリンターボとTDIの2リッター直4ディーゼルターボがラインアップされることとなった。前者には116馬力と150馬力の2つの出力がある。
で、その上に君臨するのがここでスポットを当てる伝統のゴルフGTI。2リッター直4ターボはなんと従来型よりも20馬力高い265馬力を発揮する。やはりスタンダードモデルとは一線を画した仕上がりだ。“GTI”と言う名前だけでワクワクさせる。
歴代モデルのGTIの印象は大きくない排気量をマニュアルシフトを駆使して早く走らせるというものだった。標準車よりもスポーティにセッティングされたサスペンションがキビキビした運動性能を発揮するのが醍醐味となる。
それを現代に置き換えると「2リッター直4ターボ+7速DSG」となるのだが、それは許容範囲だと思う。競合他社のモデルがそれなりの高出力を発揮するのだからこのくらいのパワーは必要だし、7速DSGはパドルシフトで素早い変速を可能とする。現実にはマニュアルシフトの操作よりも早いのだから文句はつけられないだろう。

ではマイチェンしたGTIの走りだが、その前にGTIの見どころをひとつ挙げておくと、やはりこのチェック柄のシートに他ならない。初代ゴルフをモチーフにしたこれは可愛らしくもあり、どこかノスタルジックでもある。70年代の香りがプンプンするデザインだ。これだけでもこのクルマを買う意義はあるだろう。これほどチェック柄シートが似合うモデルは他にない。




スポーティではあるがやりすぎの手前で止める大人な仕上がり

では走らせた印象はというと、そこは相変わらずの楽しさ満載。ステアリングセンターがしっかり感じられる軽快なフィーリングのステアリングとその操舵に追従するボディ、それとリアの足の粘り方はさすがGTIだ。この感覚がクルマ好きにはたまらない。それに、ステアリング操作反応はクイックだが、少しばかり余韻を残すのがいい。足まわりが瞬時に向きを変えるのではなく、横方向に一度踏ん張ってから方向転換する感じとなる。
乗り心地はしなやかすぎないのがグッド。このまま引き締めればヒョコヒョコ跳ねそうなところの手前で終わらせている。この辺のサジ加減は長年の集大成といったところだ。かつてのハッチバックの味付けを現代的に解釈したようなセッティングである。少し大人だけど、大人すぎないといった印象である。
ドライブモードは、エコ、コンフォート、スポーツ、カスタムが用意される。ただ日常的な走りはすべてコンフォートで事足りるし、GTIの楽しさも感じ取れる。時としてスポーツもありだが、走行中のギアの落とし方や回転数の引っ張り方が少しわざとらしいので、長く使っていると疲れそうだ。このエンジンは上までしっかり回るが、高回転域ではフィーリングがないので、そこはあまり意識しなくていい。
タイヤはPOTENZA S005を履いていた。サイズは前後とも235/35R19と言うちょっと変わったサイズ。DCCパッケージを選ぶとそうなるらしい。選ばない場合は225/40R18。19インチのタイヤでこの乗り心地であれば十分だが、18インチも乗り比べてみたいと思った。扁平率も35と40では異なるしね。まぁ、ホイールで比べれば明らかに19インチの方が断然かっこいいのだが……。
こうあってほしいGTIになっている

と言うのがゴルフGTIのショートインプレ。最近のクルマは試乗して欲しくなるパターンは少ないが、このクルマは乗って欲しくなる。これはVWの持つテクニックとマーケティングリサーチの賜物だろう。「ゴルフGTIはこうあって欲しい」と言う要望にしっかり応えている気がする。