新車試乗レポート
更新日:2025.03.11 / 掲載日:2025.03.11
コルベットコンバーチブルはもっと評価されていい【九島辰也】

文●九島辰也 写真●澤田和久、ユニット・コンパス
コルベットにはクーペとコンバーチブルの2つのボディタイプが存在する。レースでの活躍を鑑みるとクーペで十分という考えもあるが、全てのモデルにコンバーチブルがラインナップされる。しかもそれは昨日今日そうなったのではなく、1953年にデビューした、後にC1と呼ばれるようになった第1世代から続いている。
歴代コルベットに設定されてきたコンバーチブル

理由は発想の元になったのが英国製スポーツカーだったからだ。MGやトライアンフといったブランドのモデルを参考にした。第二次世界大戦後、ヨーロッパで戦ったGI(米兵)がそれをアメリカに持ち帰ったり、存在を知り輸入したりして乗っていた姿を見たメーカーが、アメリカ初となる2シータースポーツカーをつくったと言われている。よってオープントップがデフォルトとなった。
では8世代目コルベットだが、日本で売られるコルベットには2つのグレードのクーペとコンバーチブルがある。エンジンはすべて同じ6.2リッターV8で最高出力は502馬力を発揮する。ミッドシップレイアウトになってもリンケージを持つOHVを採用。リトラクタブルヘッドライトやFRパッケージをやめてもこの方式は継続された。
音を楽しめるのがコンバーチブル最大の魅力

このエンジンの音を身近に感じられるのがコンバーチブルだ。ドライバーズシートはまさに特等席で、ドライブモードをツーリングからスポーツに変えると、迫力のサウンドが耳に飛び込んでくる。クルマ好きがワクワクする瞬間だ。
パドルシフトを操作し、加速音やブリッピング音を楽しむ。特にトンネル内では最高。エキゾーストノートがトンネル内に反響し、刺激的な音を響き渡らせる。低音から高音までかなりいい。一瞬でまるでサーキットにいるような空気にしてくれる。
その屋根の開き方は時代によって変化する。先代のC7コンバーチブルではソフトトップだった趣たっぷりの屋根は過去のものとなり、C8では閉じればクーペと変わらない電動式リトラクタブルハードトップへとスイッチした。GTカー的な使われ方がメインだったのと本格的スポーツカーに進化したのとの違いだろう。イタリア製スーパーカーを見ても、その傾向は強いようだ。



また、この仕組みの特徴はトランク容量をクーペと同様にしていること。折りたたんだトップを効率的に畳むことでそれを実現した。コンバーチブルだから荷物は積めないという固定概念は払拭される。
それにクーペとコンバーチブルで車両重量がわずか30キロしか変わっていないのもポイント。通常であればその違いは100キロ、もしくは大人一人分として換算される60キロぐらいを目安にするが、コルベットはそれよりもはるかに軽い。この辺はメーカーがもっとアピールしていい部分だろう。スポーツカーにとって重量の加算は重要項目となる。
走りのポテンシャルはクーペと変わらない

風の巻き込みはほとんど感じられない。サイドウィンドウやリアウィンドウを上げると後方からの巻き込みは見事にシャットアウトされる。なので、助手席に髪の長い女性を乗せてもホラー映画のように髪が逆立つことはないだろう。エアコンとシートヒーターで冬ドライブもバッチリこなせそうだ。もちろんそれでも寒く感じれば屋根を閉めればOK。時速約48キロ以下であれば走行中も稼働可能である。
といったように完成度が高く設計されているため、しばらく屋根を開けて走っていると風が気にならなくなり走りに集中できてしまう。なので中速域で走りを楽しめるワインディングではクルマの挙動にあらためて感動する。
ステアリングは正確で、アクセルと連動した細かな調整ができるのが嬉しい。意図したラインにスッと鼻先を向ける感覚はさすがだ。そしてミッドシップらしくボディのセンターを軸に回転するのもグッド。イメージするほどオーバーステア方向に動くことなく安心してアクセルを踏める。もちろん踏み過ぎは御法度だが、リアイン側のトラクションの効き方はかなり頼もしい。
といったように常にレーシーな走りを見せるコルベットは、コンバーチブルでもまんま同じ。大排気量の強力なエンジンパワーと軽快なフットワークでドライバーを楽しませる。