新車試乗レポート
更新日:2025.03.02 / 掲載日:2025.03.01

セレブが熱視線を送るミッドシップマシン【マクラーレン 750Sスパイダー】丨九島辰也

文●九島辰也 写真●マクラーレン

 先日ポルトガルでフェラーリ12チリンドリスパイダーのテストドライブをしてきました。スーパーカーのオープントップは今まさにトレンドで、世界中のセレブリティがそれを競って手に入れようとしています。マクラーレンで言えばこの750Sスパイダーがそれに当たるでしょう。このクルマもまたセレブから熱い眼差しを受けています。

 名前からもわかるように750Sスパイダーは720S系の後継モデルとなります。2023年4月にクーペとスパイダーが同時にワールドプレミアされました。

マクラーレン 750Sスパイダー

 進化の度合いは各所に見えます。720Sのコンポーネントの約30%を刷新したというから当然です。ボディの軽量化、パワーソースの馬力アップ等が行われました。具体的には、4リッターV8 DOHCツインターボの最高出力は720S+30馬力の750馬力となっています。それに最高速度332km/h、0-100km/h加速2.8秒は尋常じゃありません。数字からでも底知れぬポテンシャルを感じます。最大トルクは+30Nmの800Nmです。

 見た目の印象はこれまでとあまり変わりません。というか、ミッドシップレイアウトの完成形とも思えるスタイリングはマクラーレンの専売特許でもあります。低いローズと長いホイールベース、それと少し上がったテールエンドが、レーシーかつチャームポイントとなります。耐久レースのレーシングカーをそのまま公道に持ち込んだような雰囲気ですね。

 では実際に乗り込んだ感想ですが、まず驚いたのはティヘドラルドア。シートに座って手を伸ばすとスッと跳ね上げたドアが軽いタッチで下りてきます。「こんなに滑らかだったかな?」って感じ。きっとダンパーの減衰圧を変えたのでしょう。かなり軽快な手応えでした。

マクラーレン 750Sスパイダー

 コックピットはまさにレーシングカーに近いつくり。いつもの縦型デジタルディスプレイはセンターに備わるものの、全体的にはシンプルな意匠となります。物理スイッチは最低限のものしか用意されません。ここはロータスに通じるものを感じました。英国のレーシングコンストラクターという共通点がそうさせるのでしょうか。

 シンプルさが強調されるのはステアリング上に何もスイッチがないからかも知れません。昨今の傾向からするとそこにたくさんのコントローラーがあり、フルデジタル化されたメータークラスターに必要な情報を映し出すようにしてあります。フェラーリはスターターがステアリング上ですし。ですが、マクラーレンのハンドルにスイッチはひとつもない。操作する物に余分な装備は不必要という彼らの哲学を感じます。

 ステアリングの近くにあるのは、ハンドリングとパワートレインのモード切り替えです。10時10分に握った時、その向こう側にそれぞれのスイッチがあります。コンフォート、スポーツ、トラックをセレクトすると同時に、ESC OFFやマニュアル操作への切り替えが可能です。

 では簡単に走った印象を伝えますと、とても扱いやすいことを再認識しました。最初は久しぶりのマクラーレンなので少々慎重に操作していましたが、その反応や動きの味付けは根本的に変わっておらず、思いのほかユーザーフレンドリーなのを思い出しました。ステアリングをはじめ操作系のタッチはソリッドですが、レスポンスはリニアでドライバーが把握しやすい動きをします。丁寧に扱えば丁寧に動くといった感じです。

マクラーレン 750Sスパイダー

 挙動はまんまミッドシップモデルでドライバーを中心に鼻先の向きを変えるのが楽しくなります。無駄な動きがなく、スッと思った場所へ移動できる感覚です。この辺はマクラーレンの醍醐味とも言える部分。レースマシンなんかはきっとこんな挙動なんだろうなと想像してしまいます。

 ではオープントップの話ですが、リトラクタブルハードトップの稼働はセンターコンソールのスイッチで行います。2つのスイッチの一方がそれで、もう一方がディフューザーとなるリアガラス用です。で、トップを開けて高速道路を走ってみました。天気のいい日とあって気分は上々。多少風の巻き込みはあるものの、許容範囲と言えます。それより何よりエキゾーストノートがダイレクトに聞こえるのがスパイダーの醍醐味です。モードを切り替え、パドルを使ってトンネル内を低いギアで走ってみると、リニアな吹け上がりとブリッピング音、バックファイア音に感動します。マクラーレンたる所以のひとつがここにある!といったところです。

 といったのが750Sスパイダーとのファーストコンタクト。MP4 12Cから続くミッドシップマシンの爽快感は健在でした。新世代アルトゥーラが登場しても、マーケットからのフィードバックを含め、このテイストはまだまだ続くような気がします。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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