新車試乗レポート
更新日:2025.02.27 / 掲載日:2025.02.27
12気筒サウンドが降り注ぐ!【フェラーリ 12チリンドリスパイダー】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●フェラーリ
フェラーリのオープントップモデルは人気だそうだ。スパイダーモデルを待ちきれずにクーペを買って、乗りながら待つ人もいるとか。確かにクーペは買った値段もしくはそれ以上で売れるだろうからそれもアリなんだろう。近頃のフェラーリ人気は想像を絶している。
発売と同時に予定生産台数は完売

今回ポルトガルでステアリングを握った12チリンドリスパイダーもきっと同じようなものだろう。販売計画やら実績を語らないフェラーリなので確かかどうかわからないが、発売と同時に予定生産台数は売り切れていそうだ。
それはともかく、近年こうした屋根開きモデルが人気なのはわからなくもない。かつてはクーペよりボディ剛性が低く車両重量もかさむことからスポーティな走りがスポイルされてしまうと言われたが、今はそうではないからだ。最近のオープントップはサーキットをギンギン攻めるような走りをしない限りその違いはわからないくらいに仕上がっている。ならば、屋根が開くというオマケが付いた方が得した気になるのは言わずもがなである。
モーターが介入しないフィーリングは鳥肌もの

では、12チリンドリスパイダーのキャラクターだが、その名の通り12気筒ユニットをフロントに積んだFRスポーツカーとなる。ラインナップの中の位置付けば、GTカー的要素の強いローマとサーキットを攻めるSF90ストラダーレのちょうど中間といったところ。その意味では今回のような一般道メインの走行にも十分耐えられるシロモノとなる。
とはいえ、830馬力のパワーユニットはとてつもなくパワフルだし、12気筒エンジンならではのサウンドは高回転で回してこそ磨きがかかる。つまり、街中をゆっくり走ってもこのクルマを楽しむことはできない。やはり、それなりの場所でそれなりにアクセルを踏んでこそキャラクターが輝くようになっている。なんたって自然吸気の長所満載。アクセルに対するリニアなレスポンスは理想の領域。過給器やブーストを目的としたモーターが介入しないフィーリングは鳥肌が立つような感覚である。
快適性はそのままにオープンドライブの感動を味わえる

ではスパイダーの特徴である屋根を開けた時の快適性だが、そこはまったく問題なし。サイドウィンドウとリアのガラスを上げるとキャビンはスッポリ包まれる。なので、頭の上に空が色がりながら、風で少しばかり髪が揺れるくらいに抑えられる。この辺のフィーリングは296GTSとほとんど同じ。後方から進入する風の巻き込みはそれほど心配ない。
さらに言えば、このレーシーなバケットシートには秘密が隠されている。それは首のあたりにある温風の吹き出し口。ここから三段階で気持ちのいい温かい風を出すことができる。メルセデスでいうところのネックウォーマーというやつだ。そういえば、昨年末試乗したマセラティグランカブリオにもついていた気がする。
なので、エアコンとシートシーター、それとこの首への温風で、冬のオープントップドライブを快適に過ごせるようになっている。この3つの機能は今後デフォルトになることだろう。そして屋根開きスーパーカーの三種の神器になると思われる。もちろん、この屋根は全自動で時速45キロ以下であれば走行中も稼働可能。突然の雨でもしっかり対応する。

乗り心地に関しては最近のフェラーリがそうであるようにとてもいい。超ロープロタイヤでもゴツゴツしたところはなく、電子制御されたダンパーが段差などの入力に対し優しい乗り味を提供する。タイヤはハイスペックスポーツタイヤのミシュラン パイロットスポーツS5。サイズはフロント275/35ZR21、リア315/35ZR21を装着していた。サスペンションのセッティングはダンパーの減衰圧もバネレイトもクーペと同じだそうだ。重量は約60キロ増えるが、そこまでの変更はいらないという結論となる。
過去作へのオマージュがスタイリングを引き立てる

ということで、半日ポルトガルの西海岸をメインにオープントップドライブを試した。走りもそうだが、撮影ポイントで見る12チリンドリスパイダーのスタイリングはカッコいい。デイトナをはじめミッドセンチュリーフェラーリへのオマージュが取り入れられているからだろうか。スポーティながらちょっとだけ色気があるのがいい感じである。