新車試乗レポート
更新日:2024.12.18 / 掲載日:2024.12.17
【メルセデス・ベンツ Vクラス】室内の豪華さはミニバンとは思えない【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
1998年に日本に導入されて以降人気のミニバン、Vクラスが進化した。
今回は2015年にフルモデルチェンジしたモデルに手が入った感じで、内外装のデザインや一部ハードウェアが新しくなっている。Gクラス同様Vクラスはそもそも息の長いモデルだけに、3年ごとにマイナーチェンジすることはないが、そろそろアップデートが必要になったようだ。
2つの顔で異なる世界観を演出

ではまずデザインだが、フロントマスクが一新された。大型のラジエーターグリルにマルチビームLEDヘッドライトが標準化されている。グリルは“AMGライン”と“エクスクルーシブ”があり、それぞれの世界観を醸し出す。無数に散りばめられたスターパターンに2本にルーバーが入るのも5本のクロームルーバーも最新のメルセデス然としている。“エクスクルーシブ”はボンネットにアイコンとなるマスコットがつくのが特徴だ。

ラグジュアリーにアップデートされた室内

内装に目をやると、モダンでオシャレになったインパネはミニバンとは思えない。デジタル化されたそれはセダン系と見間違うほど。インターフェイスはMBUXなど最新の技術が投入される。個性的なのは、ダッシュボード位置が低く視界が広いこと。そこは背の高いクルマならではの長所がしっかり活用されている。
インテリアは高級感をアップグレード。上級グレードでは全席ナッパレザーを使ったり、2列目をリクライニングさせたり、リラクゼーション機能を持たせたりする。これまでは商業車感の強かった車内だが、今回のモデルチェンジでかなりアップグレードされた。

シートは5名にも7名にもアレンジ可能。2列目は装備を含めVIPシートとして使えるからホテルや空港でも採用されることだろう。また、2列目以降を取っ払って広大なスペースを確保できるのもこのクルマの特徴。ミニバンの醍醐味がそこにある。シートレイアウトは前から2/2/3。サードシートは全てにヘッドレストと3点式シートベルトが備わる。


ボディは標準サイズとロング、エクストラロングの3種類という設定。積載量が異なるので、用途によって選択すればいい。もちろんガレージの大きさに沿ってサイズを選ばなくてはならないが、標準ボディは全長4895mmなのでそれほど気になるものではない。5m以下とそれ以上ではメンタル的にも違いそうだ。
進化の目玉は乗り心地の改良

エンジンは全グレード2リッター直4クリーンディーゼルターボの一択。それに9Gトロニックのトランスミッションが組み合わされる。実際にロングボディを走らせたが、力強さに不満はなかった。
スタートからアクセルに対してスーッと出ていく。そこに重ったるさはない。もちろん絶対的なスピードを求めればパワー不足かもしれないが、ミニバンの走りにそこを求めるのはちょっと違うと思う。それよりも今回の目玉は乗り心地の向上と言っていいだろう。昨今のメルセデスのラインナップ同様このクルマにもついにAIRMATIC(エアマチック)サスペンションが装着された。エントリーモデルのV220d以外に搭載される。
AIRMATICサスペンションは連続可変ダンパーとエアサスで乗り心地を安定させるものだ。センサーが路面状況を読み取り瞬時に減衰圧を変えるので、そのまま乗り心地に反映される。Gクラスに搭載されたと知り驚いたが、Vクラスにも採用されることとなった。このクルマを2列目以降に人を乗せる目的で購入するのであれば期待していいだろう。貨物的な乗り味は払拭されるはずだ。
ただ、今回の試乗は道路環境がよくなかったため正直その効果は薄かったと思う。舗装路といっても山の中の道ばかりだったので、アスファルトは思いのほか荒れていた。まぁ、それでもあの乗り心地がキープされていたのはすごい。きっと都内の市街地や高速道路ではよりフラットな乗り心地を提供してくれるに違いない。

ビジネス用途にも使える上級ミニバンに進化した

といったのが新型Vクラスの概要で、プライスは940万円からとなる。エクストラロングの最上級仕様は1370万円。もはやそこまでいくとVIP送迎を目的とした業務用だろう。アンビエントライトがこれまで3色だったのが64色になったのはもしかしたらそんな使用方法を考慮したのかもしれない。
いずれにせよ、Vクラスがより高級車になったのは確かである。