新車試乗レポート
更新日:2024.10.11 / 掲載日:2024.10.10
気になる乗り心地は? マツダ最上級モデルを実車試乗!【マツダ CX-80】【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
発売開始の10月10日を迎え、すべての情報が開示されたマツダの新型車「CX-80」。約200キロにわたって実車試乗した印象も含めて、そんなCX-80の最新情報をお伝えしましょう。
グレード構成と価格のバランスを考察すると

まずは価格。全体を見るとボトムの「XD」が394万3500円で、最高価格となる「PHEV PREMIUM MODERN」や「PHEV PREMIUM SPORTS」が712万2500円。確かにマツダ市販車最高価格となる天井側はずいぶん高くなったなと思わずにはいられません。しかし、注目すべきは足元。ベーシックグレードとはいえ「アンダー400万円」を守ってきたのは朗報じゃないですかね。装備の充実したディーゼルエンジン搭載の「XD L Package」あたりでも477万9500円と“ローンを上手に使って頑張ればなんとか手が届く”と言える範囲。意外と現実的です。
上級グレードは「懐に余裕がある人」が買えばいいわけで、やっぱりボトムから中間グレードにかけてはしっかり「アンダー500」に収めてきたことをまずは歓迎したいところです。
ちなみにCX-80の価格は、基本メカニズムを共用する2列モデルの「CX-60」と比べると40~50万円のアップ、実質的な従来モデルと言える「CX-80」に比べるとざっくり40万円程のアップという印象。しかし、先進安全装備をはじめとする標準装備品の充実なども考えると“実質的な価格アップ”は20万円程度という見方もできなくないかもしれません。

3種類のパワートレインとCX-60との違い

おさらいしておくと、パワートレインは3タイプ。「XD」系のグレードに積む排気量3.3Lの6気筒ディーゼルエンジン「SKYACTIV D 3.3」、「XD-HYBRID」はそこへモーターを加えてマイルドハイブリッドとした「e-SKYACTIV D 3.3」、そして唯一ガソリンエンジンを積むのが2.5Lの4気筒ガソリンエンジンに強力なモーターと外部充電可能な大型バッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッド「e-SKYACTIV PHEV」の「PHEV」系です。
それらパワートレインは基本的にCX-60と同じですが、ひとつだけ異なるのはハイブリッドではない素のガソリンエンジン(「25S」系)がないこと。用意されなかった理由はマツダによると「CX-80はCX-60に比べると車体の大型化に伴って重量が増え2.5Lガソリンエンジンは動力性能的に少し弱いから」とのことです。
さて、実際に試乗して感じたのは、とにもかくにも運転の楽しさ。
ディーゼルエンジンはモーターの有無に関わらず低回転から太いトルクが湧き、しかも回転が上がっていくときの滑らかさが心地よい。たとえば高速道路への合流のような、アクセル全開まではしないけれどある程度深く踏み込むようなときにグイグイ加速する感覚が気持ちいいですね。さすが6気筒だなと思います。低中回転域のトルクはモーターなしのディーゼルよりも、マイルドハイブリッドディーゼルのほうが力強さを感じます(これは単純にモーターの有無だけでなくエンジン制御の違いの影響も大きい)。
いっぽうPHEV(プラグインハイブリッド)は、モーター走行感覚が強めかと思いきやエンジンを止めて走るEVモード時を除けばあまりにも電動車っぽくない感じ。感覚としては、排気量4.0LくらいのV8エンジン車のような力強さとフィーリングです。モーターによる先進性あふれる加速感を求めるとちょっと違いますが、ハイブリッドでもガソリン車のような走行感覚を求める人とはきわめてマッチングがいいでしょう。
モーターなしのディーゼルでも高速道路では20km/Lに届く勢い

ちなみに燃費は、ディーゼル(モーターなし)で高速道路を淡々と走ると20km/Lに届くくらいで、モーター付きだとさらに伸びる印象。この車体サイズや排気量3.3Lという大きなエンジンからすると信じられないほど優れた燃費ですが、実は「余裕を持たせることで実燃費を高める」というエンジンのコンセプトが効いているのです。
いっぽうカタログ記載のWLTCモード計測燃費が12.9km/LのPHEVは、確かに「ハイブリッド」という響きからすれば物足りないと感じるかもしれません。しかし「V8ガソリンエンジンのような力強さとフィーリングで、高速道路を中心におとなしく走れば15km/Lに届きそうなほど」の燃費と考えれば、十分に納得ではないでしょうか。走りの楽しさと燃費性能の両立はハイレベルだな、と思います。
走りの楽しさは期待どおり。気になる乗り心地は?

さて、話を運転する楽しさに戻すと、ハンドリング性能はズバリ「曲がるのが楽しいSUV」。そもそも血縁関係の深い「CX-60」が大きめボディのSUVとは思えないほどキレッキレのハンドリングでドライバーを楽しませてくれるわけですが、CX-80もその延長線上。峠道のカーブや、高速道路の本線への合流&本線から分岐した後のループ状の道の旋回などはまるでスポーツカーのようにグイグイ曲がっていくハンドリングで、ドライバーを楽しませてくれます。サスペンションのセッティングは若干異なりますが、楽しく曲がれる操縦性はしっかりと受け継いでいるのです。「ロードスターのような走りの楽しさを備えたSUV」といっていいでしょう。
いっぽうで、多くの人が気にしているであろう、乗り心地はどうか?



結論から言えば「これなら納得できる」という範囲内。乗り心地の良さを誇るようなSUVに比べると違いがあるのは事実ですが、CX-60に比べるとしっかり洗練されていることを試乗で実感できました。
CX-60からの変更点をお伝えすると、リヤスタビライザーを外したうえで、リヤサスペンションのバネを柔らかく。そして前後ともショックアブソーバーの減衰を高めています。さらにリヤはバンプストッパーを短くしてサスペンションストローク量の拡大に対応するとともに、クロスメンバーのブッシュの取り付け方向を変えて入力時の動きの方向を変更。それは説明すると、CX-60で指摘された入力の衝撃の大きさの原因をバネの硬さ、高速域で路面の凹凸を超えた後の車体の上下動の収まりの悪さを硬いバネに対してショックアブソーバーの減衰不足と判断したうえで、改善策を「バネレートのダウンで入力の衝撃を抑えつつ、ダンパーの減衰力アップで振動を素早く抑える」という方向へもってきたというわけです。
くり返しますが、乗り心地はCX-60に対してかなり改善がみられました。ただし、乗り心地自慢のSUVにはまだ届いていないのも事実です。
ただ、それもキャラクターだと考えれば筆者は十分に納得できると感じました。操縦性を犠牲にして乗り心地の良さを追求するのではなく、楽しいハンドリングを備えつつ、乗り心地とのバランスを高い次元で両立した運転の楽しいSUV。そう考えれば、「運転は楽しくないけど乗り心地がいいSUV」ではなく、「運転が楽しいSUV」というのがCX-80のキャラクター。そんな前提さえ間違えなければ、購入後に「車選びを間違えた」という悲しい結果にならずに済むのではないかと筆者は思うのです。


インテリアの作り込みに光るもの感じる

いずれにせよ、運転の楽しさも乗り心地も、ネットに飛び交ういろんな意見に惑わされることなく自分で乗って確認してみることが大切。それはCX-80に限ったことではありませんが、こうして賛否が分かれるモデルだからこそ販売店に出向き、実際に試乗車に乗って確かめるべきです。
それにしても、中間グレードである「XD EXCLUSIVE MODE」(507万1000円~)以上のインテリアの作り込みは、国内外のプレミアムブランドに匹敵するどころか、それ以上といえる上質感。そんなインテリアもCX-80の大きな魅力だったりします。