新車試乗レポート
更新日:2024.09.18 / 掲載日:2024.08.30
電気自動車として着実に進化している【メルセデス・ベンツ EQA】【九島辰也】

文●九島辰也 写真・取材協力●メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツEQAが進化した。新たなモデルとして登場したのが2021年だからタイミング的にはマイナーチェンジといったところだろう。EVマーケットがじわじわと膨らむ中、競争力アップが図られた。
バッテリー容量を拡大し航続可能距離を591kmに拡大

競争力を高めるための課題の一番は航続距離となる。いまだインフラが整わない日本において一充電あたりの走行距離は皆が注目するポイントだ。ある意味そこが勝負の分かれ目だったりする。ここがライバルより極端に少なければ、ショッピングリストから外されてしまうだろう。
それを踏まえ新型はバッテリー容量から見直した。搭載されたのは70.5kWhの高電圧電池。これによりWLTCモードの一充電走行距離は591kmに達した。数字だけ見れば、東京、大阪間を余裕で移動できる性能だ。また6.0kWまでの交流普通充電と100kWまでの直流急速充電に対応している。要するに家庭でも高速道路SAにある充電ステーションでも充電可能だ。
これを従来型に置き換えると、バッテリー容量は66.5kWh、航続距離は410kmとなる。違いは明らかと言っていいだろう。バッテリーの大きさや積み方などに手が入り、効率化が行われたようだ。また、新型はクルマから外部への給電。いわゆる“Car to Home”機能が採用された。要するに普段は太陽光パネルなどを使って家庭からクルマに電気を送り、停電時にはクルマを予備電源として使える。この双方向充電ができると、自治体にもよるが税率や補助金も変わってくるので要チェックだろう。

ではグレードだが、従来同様モノグレードの設定になる。名前はEQA 250+で右ハンドルのみ。価格は771万円だ。これまでのEQA 250は640万円だったから少し多めのアップに見える。まぁ、そこは補助金を細かく調べてから結論を出すのがいい。
エクステリアの印象は大きく変わらない。新型の特徴はフロントグリルで、そこがスターパターンに統一された。これまでよりもEQシリーズ感が強まる。ボディのお化粧に関しては、スタンダードとAMGライン仕様があるのはこれまでと同じ。それぞれバンパーの形状とホイールデザインが異なる。ついでに言うと、新型には新色のシルバー、ブルー、レッドが導入された。
自慢の部分自動運転技術もさらに使いやすくなった

インテリアではステアリングが進化した。ディストロニック使用時のハンズオフ検知機能をステアリングにかかるトルク検知型からいわゆる静電気式に換わった。静電気式は静電容量式センサーをパットに備えたもので、トルクがなくともステアリングホイールを握り返せばOK。トルク検知式だと、ずっとステアリングを握っていても「ハンドルを持ってください!」というワーニングが働いてしまうことがあるが、それがなくなったのだ。
では乗った印象へ話を移そう。ドライバーシートに座って思うのはダッシュボードがイマドキのメルセデスだということ。大型モニターが幅を利かせ、先進性をアピールする。シンプルで有機的スイッチが少ないのがミソ。そしてベースになったGLAシリーズもそうだが、エアコンの吹き出し口が存在を主張する。これはインパクトが大きいので、一度乗ったら忘れない。



動き出しは実にスマートで、上品な感じ。アクセルに対し過剰なトルクが発生しないのがいい。とても自然でBEVであることを感じさせないのがグッドだ。で、そのイメージのまま街中、そして高速道路へと進む。味付けはまんまガソリンエンジン車といったところだろう。EQSやEQEあたりからその傾向にあると言える。BEV感を見事に消した。
とはいえ、加速の欲しい場面でアクセルを強く踏み込めばBEV特有のトルクフルなパワーが伝達される。ユーザーがそこを使い分ければいい相棒になりそうな気がする。
回生ブレーキの強度は任意で決められるが、全自動的なD Autoが相変わらずいい。こいつはACCのように前のクルマが近づくと自動的にブレーキがかかる仕組みで、一定距離を保とうとしてくれる。手動で走っていてそうなると一瞬脳がバグるが、慣れると常に使いたくなるシステムだ。安全性を担保するだけにメルセデスらしさを強く感じる。



ガソリン車に近い自然な感覚で乗れる電気自動車

と言ったのが新型EQAとのファーストコンタクト。乗り味がとてもガソリンエンジン車的なのが最大のポイントだろう。そんなテイストのBEVを探している人は満足する一台となるうるだろう。