新車試乗レポート
更新日:2024.08.22 / 掲載日:2024.08.22
レクサス・LBX モリゾーRR先行インプレッション!
昨年の東京モビリティショーのレクサスブースで話題を集めたコンセプトモデル「LBX MORIZO RR」がついに正式発売された。GRヤリス譲りの高性能メカニズムがレクサスに載ることで、そのふるまいはどのように変わってくれたのだろうか? サーキット試乗で感じた魅力や強みに迫ってみたい。
●本文:川島茂夫●写真:奥隅圭之
レクサス LBX MORIZO RR

●新型LBX MORIZO RR 価格&バリエーション
パワートレーン 1.6ℓ直列3気筒ターボ 304PS/40.8kg・m
グレード【トランスミッション】 価格【4WD】
MORIZO RR【8速AT】 650万円
MORIZO RR【6速MT】 650万円
MORIZO RR“Bespoke Build”【8速AT】 720万円
MORIZO RR“Bespoke Build”【6速MT】 720万円
■主要諸元 (LBX MORIZO RR)
●全長×全幅×全高(㎜): 4190×1840×1535 ●ホイールベース(㎜): 2580 ●車両重量(kg): 1440 ●パワーユニット: 1.6ℓ直3DOHCターボ ●最高出力: 304PS/6500rpm ●最大トルク: 40.8kg・m/3250〜4600rpm ●トランスミッション: 8速AT ●タイヤ: 235/45R19 ●0-100km/h加速: 5.2秒

小さいけれど走りも装備も超一級! スペシャリティコンパクト始まる!
強力ターボ&メカニズムで最高性能を追求 コスパ視点でも破格の一台が登場
ハード面はGRヤリス譲り でも、味付けは完全に別物
車名に冠せられる「RR」は、スーパーGTシリーズなどに参戦しているトヨタ直系のレーシングチーム「ルーキーレーシング」に由来している。国内トップカテゴリーで素晴らしい活躍をみせるほか、水素エンジンで耐久レースに挑戦するなど、その活動は多岐に及んでおり、レースでの勝利だけを目指したチームというわけではない。
そんなルーキーレーシングのエッセンスが盛り込まれたLBXモリゾーRRのパワートレーンやシャシーの構成は、ラリーシーンでの勝利を目指して開発されたGRヤリスに近い。ハードウェアだけをとらえれば、当然「テッペンを狙え!」となるのだが、実際にサーキットコースで試乗してみると、見ている方向がGRヤリスと明らかに異なっていることに気付かされた。LBXモリゾーRRで最も印象に残ったのは、300PS超のパワースペックがもたらす速さではなく、コントロール性の良さがもたらす、クルマとの対話感が高いことだ。
パワートレーンは、GRヤリスと同型になる1・6ℓ3気筒のターボを採用。トランスミッションは6速MTと8速ATを選択できる。6速MTは国内向けレクサス車としては初の設定になる。まず注目は3気筒ターボと8速ATの相性の良さ。高回転まで回すことで生まれる爽快なパワーフィールも魅力的だが、コースに入る前のパドックをうろつくような低速走行でも極めて扱いやすい。コースを全開で攻めた時でも、少し速度を落としてリズムを楽しむように流した時も、幅広い速度域で自然に対応できてしまう。
磨き上げたサスチューンは新世代の象徴になりうる
さらにフットワークもモリゾーRRが目指した走りの要点のひとつ。4WDを活かしたトラクション重視の設定はGRヤリスとも共通しているが、モリゾーRRは中速域での制御がより巧み。カップリングの制御もモリゾーRR専用に差動制限(前後トルク配分)を、走行状況に応じてきめ細かく制御する。滑りやすい路面等ではAWDモードスイッチによりトルク配分を50対50に固定することも可能だ。
サスチューンも専用設計。バネさやダンパーセッティングだけでなく、フロントサスのロワアームに特殊樹脂による補強を施すことで、操舵レスポンスの向上を図るなど、ハードの設計にもしっかりと手が加えられている。回頭も旋回力(横G)も急激な変化を上手に抑制する味が加わることで、コーナー立ち上がりでのラインコントロールの見極めも容易。自分が望むコーナリングラインに乗せるための操作量の見当も付けやすい。修正舵を入れる時も同様で、ラインを絞り込みたければ、減速とちょっとした舵角増で綺麗に収まってくれる。コーナーで加速をかけた時も、方向に乱れは少なく速度が高まっていく感覚がある。こんな素直な特性は、クルマを操っている感覚を否応にも高めてくれる。言葉を用いない対話をすることで、操る心地よさと愉しさにも繋がっている。
今回はサーキット試乗のため乗り心地の細かなチェックはできなかったが、路面の段差を乗り越える時のストローク感十分の反応からして、ロングツーリングでも良質な走りを楽しませてくれそう。際立った操縦感覚は、運転を楽しみたいと願う多くのユーザーにしっくりとくるはず。現在のレクサスが目指している、新たなファントゥドライブを象徴する特別な一台になりそうだ。

エクステリア
標準系(ハイブリッド)と車体寸法を比較すると、差は全幅が+15mm、全高が−10mm。ほぼ同サイズであり、見た目の印象も大きくは変わらない。ただ、フロントバンパーサイドへの水平フィンの設置や、バンパー右内部に置かれたオイルクーラーからの排風など、空力の改善と高性能対応のための変更が施されている。高性能をこれ見よがしに主張するのではなく、LBXの基本デザインにさり気なく融合させている。これもLBXのキャラに配慮した結果といえる。



キャビン&インテリア
マニアックな高性能スポーツぶりを意識させないのはインテリアも同じだ。状況や好みに応じて三つのレイアウトから選択できる12.3インチTFT液晶メーターや、カラーHUD、大型ディスプレイオーディオなどを装備。一般用途での座り心地とサポート性の両立を図った専用フロントシートや、アルミパッドを用いたペダルなどモリゾーRR専用の意匠&装備も施されているが、LBXのキャビンの雰囲気は損なっていない。



ウルトラスウェードと本革を組み合わせた豪華な内装加飾に、表皮一体発泡構造のスポーツシートやアルミペダルなどを装着。モリゾーRR専用装備が目白押し。



パワートレーン
エンジン型式はGRヤリスと共通。1.6ℓの3気筒ターボは304PSの最高出力を発生する。パワースペックの追求だけでなく、追従性に優れたパワー特性を実現するため、運動部品の徹底的軽量化やボールベアリングターボの採用、ウェストゲートバルブ制御の最適化などの工夫が盛り込まれている。ミッションは6速MTと8速ATを用意。ATは登録サーキット限定ながら限界走行に最適な変速制御を行うプログラムも搭載されている。

ボディ&パーツ
同じプラットフォームを使っていても、トヨタのモデルとは異なる車体構造を採用するのがレクサスモデルの特徴。LBXも剛性向上や振動騒音軽減などの変更が加えられている。それに加えてモリゾーRRでは短ピッチ溶接打点を469か所追加し、構造用接着剤塗布距離を12.8mほど延長することで、車体骨格剛性と減衰性を向上させている。このあたりの強化も、モリゾーRRの走りの違いを生み出す大きな理由になっている。

