新車試乗レポート
更新日:2024.05.30 / 掲載日:2024.05.30

新型WR-V ロングラン実力判定

ホンダのコンパクトSUVの穴を埋めるべく登場したWR-V。価格は抑えられつつも堂々としたエクステリアやこのクラスとしては高い居住性から、既に納車が6〜7か月待ちと大人気。そんなWR-Vのロングドライブインプレッションと魅力を解説していこう。

●文:川島茂夫/まるも亜希子 ●写真:澤田和久/月刊自家用車月刊自家用車編集部

新型WR-V《ロングドライブ実走解説》

今回ドライブしたのは….東京 青山〜房総半島ぐるっと300km!
東京は青山から房総半島へ。強風によりアクアラインが封鎖されるなどのアクシデントが重なり、約300kmのロングドライブとなった。試乗グレードはZ+。

主要諸元(Z+) ●全長×全幅×全高(㎜):4325×1790×1650 ●ホイールベース(㎜):2650 ●車両重量(kg):1230 ●パワーユニット:1496cc直4DOHC(118PS/14.5kg・m) ●トランスミッション:CVT ●WLTCモード総合燃費:16.2km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/リーディングトレーリング(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)車軸式(R) ●タイヤ:215/55R17

すごくいい! これがコンパクトSUVの新基準だ!

悪天候のロングドライブ
でも実力を発揮
 フィット系の前半部、3列席SUVのBR-V(日本未導入)の後半部を合体させたフラットフォームは車体構造面から駆動方式はFF限定。しかし、最低地上高はヴェゼルより10㎜大きくコンパクトSUVでは最大級の195㎜。WR-Vの主市場となる新興国の道路事情を勘案した設計なのだが、FF限定ながらタフな走りは同車の特徴のひとつとなっている。そして今回の試乗ではWR-Vが求めた「タフ」を実感できた。
 試乗当日の天候は春の嵐。強風と時折の激しい雨のためルートとして予定していたアクアラインも通行止め。一旦一般道に降りて湾岸線を東京湾沿いに進むルートに変更するも雨風が弱まる気配はない。ツーリングというより小冒険に出るような気分だ。
 こんな状況なので湾岸線も大渋滞。短距離ながら80km/hくらいで流れる区間もあるのだが、加速減速の繰り返しに停車も加わる。高速道路ではACC使用を原則としたが、WR-Vは渋滞追従機能がない。当初は30km/h未満の解除をチェックしながらの操作が煩わしくもあったが、途中からは使い方のコツも理解。発進から車間距離の見当を付けてリジュームでACCにバトンタッチすれば簡単滑らかな走りになる。
 発進停車の扱いやすさが渋滞での疲労軽減にも繋がっていた。動き出しから加速への繋がりが滑らかで加速度の按配もつけやすい。アイドリングストップ機構がないのは燃費面ではハンデだが、扱いやすさではメリットにもなる。
 そんな調子で宮野木JCT通過。出発地の青山から走行距離80kmで、平均車速37km/h、平均燃費16.2km/ℓとなった。
 京葉道路に入ってからは加減速頻度は高いものの60〜80km/hで流れる。80km/h巡航では加速や登り勾配でのエンジン回転上昇(ダウンシフト)が大きめになるが、穏やかでコントロールしやすい特性は維持される。もっとも、走行の大半がACC任せであり、状況変化でのエンジン回転やアクセル開度をチェックするくらい。気分は気楽なドライブそのままだ。
 房総半島も南下するにつれて強い横風をもろに受ける区間が増える。木更津付近は間断なく突風を受けるという状況。しかし、横風を受けて車体は揺れるが進路の乱れは少ない。車体の方向性への影響が少ないため進路も方向性も唐突な動きが抑えられている。LKAの補正もあるのだろうが、吹き流しが真横になる状況でも然程の緊張もなく過ごせた。
 木更津東ICから目的地の養老渓谷を目指す。宮野木-木更津東間の平均燃費は15.9km/ℓ。別項でも述べるが、高速では平均車速が高くなるほど常用エンジン回転域が高くなり、加速性能の余裕も燃費も低下する傾向が強い。
 冠水部もあれば枯れ葉や小枝が路面に散乱している部分も多々。しかも狭くタイトなワインディングもある。緊張もストレスも堪りやすい状況だが、WR-Vは予想以上に安心感がある。ハンドリングなら神経質な反応、乗り心地なら身構えさせるような突き上げ、それらがとても少ない。全体的には緩いサスという印象なのだが、ラインコントロール性は良好であり、車両感覚も掴みやすいので初見の狭い山道も大して緊張することもなく捌けてしまう。
 山岳路を経由して帰路につく。高速も順調で流れに乗せても一部区間の平均車速は100km/h前後。加速も燃費も厳しくなるが、運転ストレスは上がらない。
 時間的には多くが荒天走行となったが、振り返ってみれば不安とか疲労が予想外に少ない。頼もしくも優しい走りが印象的であり、コスパ優先だからこそ実践的メリットとなる部分を重視しているのがWR-Vの走りの特徴だ。

ドライブフィールと燃費の傾向

実用走行性能面ではオールラウンダー。ライントレース性と安定性がよく、車両感覚を掴みやすいこともあって初見の狭い山岳路も楽にこなす。高速道路の巡航もスペック以上のゆとりが感じられた。もっとも、80km/h以上での加速性能の鈍化、巡航燃費の悪化の傾向を考慮するなら平均車速が100km/h以上になる状況には不適当。ただ、それ以外の状況での動力性能や燃費変動は少なく、和みのファミリードライブを楽しむにも最適だ。

新型WR-V《気になるライバルと比較!》

 キャビンの広さや後席の居心地はコンパクトSUVでもトップクラスだが、走行性能や燃費をリードするHEVを相手にすると分が悪い。また、ACCが全車速型でないなどローコスト設計のハンデがあるのも否定できない。ただ、実用性に影響するほどの性能的な優劣はない。市街地から高速、山岳路でもふつうの走らせ方ならば苦手とする状況はない。
 フットワークについては操縦感覚や車軸周りの揺動に緩さを感じられる。走りの質感をうるさく言えばそれもローコスト感なのだが、馴染みよく安心感をもたらすまとまりであり、コスパで量れば対ヴェゼルやヤリスクロスでもユーザーに親身な優等生として高く評価できるモデルである。

新型WR-V《まるも亜希子が見どころを解説》

廉価を感じさせない
居住性と快適性

 余計なモノは削ぎ落とし、割り切ってシンプルにした結果、パワートレーンは1・5ℓガソリンエンジンのみとなったが、ドライブ・バイ・ワイヤとCV Tの協調制御による加速時や減速時のステップシフト制御の採用で、自分の思い通りに操れるコントロールしやすさと、その操作にリンクした音やGといったものが感じられる、爽快感のある走りが魅力的。静粛性に関しては、ロードノイズやエンジンノイズが入ってきて決して静かとは言えないが、高速道路やカーブでの安定感は、もっと大きなSUVに乗っているようだ。
 室内はシンプルな構成だが、横並びのドリンクホルダーやアームレスト付きセンターコンソールボックス、センターポケット、全ドアにボトルホルダーと小物ポケットがあるなど、収納スペースは十分。サイドブレーキの両脇に薄型のポケットがあり、スマホが立てて置けることを発見した。足元も頭上も広い後席は、カップホルダー付きのセンターアームレストがあるのがいいところ。足元にこのクラスでは珍しいエアコン吹き出し口もあり、後席にダイレクトにエアコンの風が届くのも嬉しい。
 そして荷室は5人乗車時で458ℓという大容量。最大幅は1350㎜もある。後席は6:4分割で倒せる。スライド機能やダイブダウン機構はないものの、最大2181㎜の奥行きが確保できて長尺物も余裕で積める、実用性の高さはコンパクトクラス随一だ。

まるもの推しポイント!

とにかく後席の広さとセンターアームレストやエアコン吹き出し口による快適性はピカイチ。これはフィットをベースとしながらもホイールベースを2650㎜までに伸ばし、ヴェゼルと比べても40㎜長いというパッケージによるもの。シート座面のクッション厚にもこだわり、乗り心地の良さも追求している。また、荷室は後席を倒さなくても家族4人分のキャンプ道具1泊分が積める容量を目指したとのことで、シートアレンジをしなくても大容量を実現しているのは、結果として子育て世代などの毎日の使いやすさにもつながるのではないだろうか。

コンパクトSUVを感じさせない堂々とした無骨なボディライン。日本の道路事情に適したボディサイズとヴェゼルよりも10㎜高くなった最低地上高のおかげで、どんな道でも楽にこなしてくれるだろう。
パワートレーンは1.5ℓのガソリンエンジンのみの設定。日常使いでは非力さを感じさせない十分な走行性能と、純ガソリンエンジンながら燃費性能も悪くない。
シンプルな運転席まわりは、機能性と質感を追求。不要なものをそぎ落とし、水平基調設計のスッキリとした見晴らしのおかげで、死角も少なくドライバーのストレス軽減に寄与する。
8インチのディスプレイオーディオは、スマホと連携すれば地図アプリでナビとして利用可能。
近年では珍しい手引き式のパーキングブレーキを採用。直感的に使用でき、煩わしさがない。

新型WR-V《ベストグレードはコレ》

WR-V Zグレード

外観でルーフレールやサイドモールがメッキ加飾となるZ+は、見た目にもこだわりたい人におすすめだが、装備だけを見ればZと同等なので、17インチアルミホイールによる安定感のある走りや使い勝手を手にしつつ、コスパも重視するならZがおすすめ。Xは16インチのスチールホイールで内外装がかなりベーシックになる。

新型WR-V《純正アクセサリーカスタム》

TOUGH STYLE

WR-Vの力強さと個性を強める純正アクセサリーも用意された。そのなかでもホンダアクセスは「タフ」な魅力をさらに追求した「TOUGH STYLE」を提案している。
純正アクセサリーを装着し、WR-Vの魅力である「タフ」さや力強さをアップ。
リヤの印象をガラリと変えるエキパイフィニッシャーもラインナップしている。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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