新車試乗レポート
更新日:2024.03.24 / 掲載日:2024.03.23

深くて魅力的なピックアップトラックの世界【九島辰也】

文●九島辰也 写真●三菱、日産、トヨタ、ジープ

 三菱トライトンの登場を機にピックアップトラックについていろいろ考えてみました。日本では“特殊”なカテゴリーなだけにクルマ好きの中でも見方は千差万別だと思います。興味のない人はまったく気になりませんしね。それに乗り心地を「どうのこうの」言うクルマでもありません。
 とはいえ、ピックアップトラック好きは見ているだけでワクワクします。ワタクシもその中の一人で、先日のトライトンのメディア向け試乗会ではずっとニコニコしていまいた。オフロードコースもそうですし、オンロードもそうです。リアにベッドがあるだけで、何か特別感を得ます。

三菱 トライトン

 そんなワクワク感の背景にはアメリカへの憧れがあります。多感な時期に見たアメリカの風景にピックアップトラックはマストアイテムとして映し出されていました。個人的には趣味がサーフィンなので、サーフィン映画の中でたくさん観ました。リアのベッドにボードを載せて海沿いの道を走る姿はまさに「自由の国アメリカ」の象徴です。
 なので、日本でもそれを実践。ダットサンピックアップ720型のキングキャブ+ロングベッドで日程を決めず波がある海を求めて何日もサーフトリップしたりしていました。今考えると贅沢な話です。時間がたくさんあった学生時代だからできたことですよね。お腹が空くと酒屋さんでカップラーメンを買ってお湯を入れてもらい、リアのベッドで食べていました。自前の“オープンカフェ”なんて言いながら。

ダットサン ピックアップ 720 キングキャブ(1983年モデル)

 それはともかく、アメリカではフルサイズピックアップがメジャーですが、コンパクトピックアップも高い人気を得ていて、その歴史は1972年まで遡ります。それまではフルサイズしかありませんでしたが、2つのモデルが生まれました。シボレーLUV(ラブ)とフォード・クーリエです。共に日本のメーカーのOEMで、前者はイスズ、後者はマツダが供給していました。その後1978年に三菱がフォルテを北米に送り込み、それをダッジブランドで販売。ラム50とネーミングされます。トヨタ・ハイラックス(3代目)が北米で販売を開始したのもその頃でしたっけ……。RN36は大人気となりました。

トヨタ ハイラックス(3代目)

 80年代に入ると、シボレーもフォードも自社製のコンパクトピックアップトラックを製造します。それがシボレーS10とフォード・レンジャー。79年の第二次オイルショックが関係していると思われますが、アメリカのメーカーも80年代になるとコンパクトカーに真剣に取り組み始めます。
 唯我独尊なのはジープでしょう。1962年にワゴニアのベースとなったフルサイズピックアップのグラディエーターを、1986年にはXJチェロキーから派生させたコマンチ(MJ)を発売します。当時はクライスラーグループではなく、60年代は独立系、80年代は北米第四のメーカー、AMC(アメリカンモータースカンパニー)の一員でした。なので、あまり売れなかったのはいうまでもありません。人気がなかったので当時も今もレアな存在です。

ジープ グラディエーター(1962年モデル)

 なぜ、こんなマニアックなピックアップトラックの話をするかというと、当時これらのモデルをすべて取材し、毎月のように自動車雑誌で解説していたからです。アメリカに行って乗ることもあれば、現地で文献を買って調べたり。分厚い電話帳みたいな英語の文献です。でもページをめくるのが楽しいくらいワクワクしていました。
 ということで、日本にいるとわかりませんが、ピックアップの歴史は長く、モデル遍歴は今も脈々と続いています。北米はもちろん、中東やアフリカ、東南アジアで大人気です。日本でももっと注目されると嬉しいんですけどね。映画「アメリカン・グラフィティ」に登場するフォードF100 パンプキンもあればリンカーン・ブラックウッドなんて高級車までありますから。じつにユニークです。どうです、リアにベッドを持ったクルマのカーライフも悪くないと思いませんか? 皆さんもピックアップトラックの世界を覗き見てはいかがかな。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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