新車試乗レポート
更新日:2023.11.15 / 掲載日:2023.11.15
【ヒョンデ コナ】デザインで勝負するハイコスパな電気自動車

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
ヒョンデの新型BEVを試乗してきた。名前は「コナ(KONA)」。ハワイ島の街の名前からとったそうだ。特につながりはないようだが、イメージはいい。アイオニック5よりは覚えやすいだろう。
スタートプライスは399万3000円

特徴は個性的なエクステリアデザインとかインターフェイスとかあるが、価格帯を抑えているところに目がいく。スタートプライスは399万3000円。トップエンドでも489万5000円となる。BEVの補助金は100万円を超えるだろうから、25%オフみたいな感覚だ。
グレードはスタートプライスの「カジュアル」、中間の「ボヤージュ」、トップエンドの「ラウンジ」で構成される。違いはパワーの出力と装備で、「カジュアル」には48.6kWh、それ以外には64.8kWhの走行用バッテリーが積まれる。出力はそれぞれ135psと204s。最大トルクはともに255Nmだ。ただし、「ボヤージュ」と「ラウンジ」では一充電走行距離が異なる。「ボヤージュ」の625kmに対し「ラウンジ」は541km。違いの理由は装備による車両重量らしい。前者は1730gだが、後者は1790kgに増えている。
ディメンションは扱いやすい数字にとどまる。全長4355mmも全幅1825mmも許容範囲。ただ全高の1590mmは惜しい。1550mm以下であれば機械式パーキングをクリアできるのでマーケットは広がる。1590mmはルーフアンテナ込みの数字だから改良の余地はあるだろう。

エクステリアデザインは一文字のLEDを使った前後のライトがイマドキに思える。BEVを中心に未来感を出す意味でもトレンドになっている手法だ。見方によっては前衛的である。とはいえ、リアフェンダーの膨らみやその後部に付くテールライトユニットはどこかクラシカルだったりもする。1950年代のカーデザインを思い起こさせる仕上がりだ。それじゃ当時のモデルをオマージュしたのかといえばそうではない。ヒョンデ設立は1967年だからそいつは無理だ。そこに関してはデザインを担当したヒョンデデザインセンターのサイモン・ローズビー氏に伺いたいところ。90年代はロールス・ロイス&ベントレー、その後は長年VWグループにいたので、クラシカルなデザインには造詣が深いのかもしれない。

トレンドを押さえたインテリアデザインだが物理スイッチの多さが目を引く

インテリアは当然最新のインターフェイスが搭載される。12.3インチのデュアルディスプレイがそれを象徴する。ここもまさにBEVのトレンドといったところだ。が、よく見るとなぜかスイッチ類が多い。エアコン、シートヒーター、ドライブモードなどの操作用ボタンやダイヤルが備わる。そればかりか通常モニター内にある“HOME”や“MAP”、“MEDIA”などのスイッチが独立して存在する。その意味合いはナゾだ。



走りの実力も総合的には高いレベルにある
走りに関しては総合的に高いレベルにあるといえる。ボディは堅牢で、がっしりしていた。ステアリング操舵に対しボディがよれることはなく、連続したコーナーでもシャキッと身のこなしを見せる。走りのステージは箱根。乙女峠、仙石原、芦ノ湖スカイライン云々と走り回ったが、終始気持ちのいい走りだった。峠道では左のパドルで回生をコントロールしながら走ると、アクセルからブレーキへ足を動かさずにスピード調整ができるからおもしろい。各段階の回生度合いが身につくとかなり速く走れるだろう。



ただパワステのセッティングは少々クセがある。切り始めは素直だが、戻しの時に若干強制的な反力を感じた。運転に不慣れな方は気にならないかもしれないが、コーナリングがおもしろくなってきた時に感じ始める。もちろん、そこはセッティングでどうにでもなる部分なのであえてそうしたのだろう。ターゲットをどこに持ってくるかの問題だ。
それとKUMHOの235/45R19は少々しなやかに欠けるのが気になった。路面のいいところ悪いところ問わずピッチングが発生する。特に状態のいい路面を走っている時は気になった。19インチだからそうなのか、タイヤを替えればおさまるのかわからないが、これはもったいない。きっとリアシートはもう少し振動を強く感じることだろう。となると家族からのクレームが発生しないとも限らない。
まとめ
というのがコナのファーストロードインプレッション。価格帯を鑑みると価値は高い。それに安全性も次世代ADAS機能が搭載されているようだからライバルと遜色ないだろう。となると決めてはデザインかな。前述したようにリアフェンダーが個性的だ。それと購入方法にクセがある。オンライン販売は人によってハードルあるから、もうしばらく時間が必要な気がしなくもない。